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第35話:陽だまりの歌、奇跡の夜明け
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絶望。
その一言が、朝霧陽葵の全てを支配していた。
橘の非情な宣告が、処刑台への階段を上るように促す。レコーディングブースへと向かう足取りは、鉛のように重い。ガラスの向こう側、コントロールルームにいる人々の顔が、歪んで見える。同情、憐憫、あるいは好奇の目。その全てが、無数の針となって陽葵の全身に突き刺さった。
ブースに入り、重い防音扉が閉まる。世界から、完全に隔離されたような感覚。目の前には、先ほどまで瑠奈が立っていたマイクスタンド。そこにはまだ、彼女の圧倒的な存在感の残滓が、陽炎のように揺らめいている気がした。
怖い。
帰りたい。
逃げ出してしまいたい。
陽葵は、ヘッドホンを装着した。震える手で、マイクの位置を調整する。ガラスの向こう側で、蓮が心配そうにこちらを見ている。その顔には、深い苦悩と、どうすることもできない無力感が浮かんでいた。
(ごめんなさい、先輩)
陽葵は、心の中で謝った。
あなたの期待に、応えられそうにない。
あなたの素晴らしい曲を、私は、台無しにしてしまうかもしれない。
そう思うと、涙が込み上げてきた。
エンジニアが、無機質な声で「始めます」と告げる。
ヘッドホンから、クリック音が鳴り響く。
そして、あのピアノのイントロが、流れ始めた。
ああ、この音だ。
先輩が、私のために作ってくれた、温かい音。
サークル室で、二人きりで、何度も何度も聴いた、大切なメロディ。
その音を聴いた瞬間、陽葵の心の中で、何かが、ほんの少しだけ変わった。
絶望の黒い霧の中に、小さな、本当に小さな光が、灯ったような気がした。
(……歌わなきゃ)
勝つとか、負けるとか、もうどうでもいい。
橘の条件も、瑠奈のことも、今は考えられない。
ただ、この曲を、歌いたい。
この、私と先輩の、二人だけの曲を。
最後に、心を込めて、歌いたい。
それが、今の陽葵にできる、唯一のことだった。
彼女は、そっと目を閉じた。
そして、震える唇から、祈るように、最初のフレーズを紡ぎ出した。
その歌声は、瑠奈のものとは、全く違っていた。
絶望の慟哭ではない。
暗闇の中から、か細い光を、必死に手繰り寄せようとする、祈りの歌。
技術的には、瑠奈の足元にも及ばない。声量も、安定感も、比べ物にならない。
だが、その拙い歌声には、瑠奈の歌にはなかったものが、確かに宿っていた。
それは、『温もり』だった。
聴く者の傷ついた心に、そっと寄り添うような、陽だまりのような温かさ。
『大丈夫だよ』『一人じゃないよ』。
そう、優しく語りかけてくるような、不思議な力があった。
コントロールルームの空気が、再び変わった。
先ほどまでの、瑠奈の歌声がもたらした圧倒的な緊張感とは違う、穏やかで、優しい空気が、ゆっくりと部屋を満たしていく。
スタッフたちの顔から、憐憫の色が消えていた。誰もが、そのひたむきな歌声に、ただ純粋に、心を奪われていた。
蓮は、ミキシングコンソールを握りしめたまま、息を詰めていた。
これだ。
これこそが、俺がこの曲に込めたかった、本当の想いだ。
絶望の先にある、希望の光。
瑠奈が表現したのが『絶望』そのものだとしたら、陽葵が今、歌っているのは、その絶望を乗り越えた先にある、『夜明け』だった。
瑠奈は、コントロールルームの隅で、腕を組んだまま、ブースの中の陽葵を凝視していた。その表情は、驚愕に固まっている。
彼女は、理解していた。
陽葵の歌が、技術では測れない、全く別の次元で、人の心を動かしていることを。
自分の歌が、聴く者を圧倒し、打ちのめす『嵐』だとしたら、彼女の歌は、嵐が過ぎ去った後に、全てを優しく照らし出す、『光』そのものなのだと。
曲は、サビへと向かっていく。
陽葵の歌声は、徐々に、しかし確実に、力強さを増していった。
それは、蓮との特訓の日々が、彼女に与えた自信。
そして何より、蓮が自分を信じてくれているという、揺るぎない想い。
『――君と見つけたい 新しい物語の始まりを――』
最後のフレーズ。
陽葵は、全ての想いを、その一言に乗せた。
ガラスの向こう側の、蓮に届けるように。
歌声が、消える。
ピアノのアウトロが、静かに、優しく、全てを包み込むように流れていく。
そして、完全な静寂が訪れた。
陽葵は、マイクの前で、静かに涙を流していた。
悔し涙ではない。
自分の全てを、出し切ることができた、安堵の涙だった。
コントロールルームでは、誰もが、言葉を失っていた。
だが、それは先ほどの、圧倒された沈黙とは違う。
深い、深い感動に、心を震わせている沈黙だった。
どちらが、上手いか。
そんな問いは、もはや無意味だった。
二つの歌は、同じ曲でありながら、全く別の魂を持つ、二つの芸術作品だった。
絶望の闇を歌う『女王の歌』と、希望の光を歌う『陽だまりの歌』。
優劣など、つけられるはずもなかった。
やがて、橘が、ゆっくりと目を閉じたまま、口を開いた。
その声は、わずかに震えているように聞こえた。
「……まいったな」
ぽつりと、呟かれた言葉。
それは、この場の全員の気持ちを、代弁していた。
プロデューサーとして、長年この業界で生きてきた彼ですら、予測できなかった奇跡。それを、彼は今、目の当たりにしたのだ。
橘は、ゆっくりと目を開けた。
そして、その視線は、蓮と、ブースの中の陽葵、そして瑠奈を、順番に捉えた。
その瞳には、今まで見せたことのない、複雑で、人間的な感情が渦巻いていた。
裁定の時が、来た。
この、奇跡のような決闘の果てに、彼は、一体どんな答えを出すのか。
スタジオにいた全員が、固唾を飲んで、彼の次の言葉を待っていた。
それは、三人の若者の運命を、そして、これからの音楽業界の未来をも左右する、あまりにも重い、一言だった。
その一言が、朝霧陽葵の全てを支配していた。
橘の非情な宣告が、処刑台への階段を上るように促す。レコーディングブースへと向かう足取りは、鉛のように重い。ガラスの向こう側、コントロールルームにいる人々の顔が、歪んで見える。同情、憐憫、あるいは好奇の目。その全てが、無数の針となって陽葵の全身に突き刺さった。
ブースに入り、重い防音扉が閉まる。世界から、完全に隔離されたような感覚。目の前には、先ほどまで瑠奈が立っていたマイクスタンド。そこにはまだ、彼女の圧倒的な存在感の残滓が、陽炎のように揺らめいている気がした。
怖い。
帰りたい。
逃げ出してしまいたい。
陽葵は、ヘッドホンを装着した。震える手で、マイクの位置を調整する。ガラスの向こう側で、蓮が心配そうにこちらを見ている。その顔には、深い苦悩と、どうすることもできない無力感が浮かんでいた。
(ごめんなさい、先輩)
陽葵は、心の中で謝った。
あなたの期待に、応えられそうにない。
あなたの素晴らしい曲を、私は、台無しにしてしまうかもしれない。
そう思うと、涙が込み上げてきた。
エンジニアが、無機質な声で「始めます」と告げる。
ヘッドホンから、クリック音が鳴り響く。
そして、あのピアノのイントロが、流れ始めた。
ああ、この音だ。
先輩が、私のために作ってくれた、温かい音。
サークル室で、二人きりで、何度も何度も聴いた、大切なメロディ。
その音を聴いた瞬間、陽葵の心の中で、何かが、ほんの少しだけ変わった。
絶望の黒い霧の中に、小さな、本当に小さな光が、灯ったような気がした。
(……歌わなきゃ)
勝つとか、負けるとか、もうどうでもいい。
橘の条件も、瑠奈のことも、今は考えられない。
ただ、この曲を、歌いたい。
この、私と先輩の、二人だけの曲を。
最後に、心を込めて、歌いたい。
それが、今の陽葵にできる、唯一のことだった。
彼女は、そっと目を閉じた。
そして、震える唇から、祈るように、最初のフレーズを紡ぎ出した。
その歌声は、瑠奈のものとは、全く違っていた。
絶望の慟哭ではない。
暗闇の中から、か細い光を、必死に手繰り寄せようとする、祈りの歌。
技術的には、瑠奈の足元にも及ばない。声量も、安定感も、比べ物にならない。
だが、その拙い歌声には、瑠奈の歌にはなかったものが、確かに宿っていた。
それは、『温もり』だった。
聴く者の傷ついた心に、そっと寄り添うような、陽だまりのような温かさ。
『大丈夫だよ』『一人じゃないよ』。
そう、優しく語りかけてくるような、不思議な力があった。
コントロールルームの空気が、再び変わった。
先ほどまでの、瑠奈の歌声がもたらした圧倒的な緊張感とは違う、穏やかで、優しい空気が、ゆっくりと部屋を満たしていく。
スタッフたちの顔から、憐憫の色が消えていた。誰もが、そのひたむきな歌声に、ただ純粋に、心を奪われていた。
蓮は、ミキシングコンソールを握りしめたまま、息を詰めていた。
これだ。
これこそが、俺がこの曲に込めたかった、本当の想いだ。
絶望の先にある、希望の光。
瑠奈が表現したのが『絶望』そのものだとしたら、陽葵が今、歌っているのは、その絶望を乗り越えた先にある、『夜明け』だった。
瑠奈は、コントロールルームの隅で、腕を組んだまま、ブースの中の陽葵を凝視していた。その表情は、驚愕に固まっている。
彼女は、理解していた。
陽葵の歌が、技術では測れない、全く別の次元で、人の心を動かしていることを。
自分の歌が、聴く者を圧倒し、打ちのめす『嵐』だとしたら、彼女の歌は、嵐が過ぎ去った後に、全てを優しく照らし出す、『光』そのものなのだと。
曲は、サビへと向かっていく。
陽葵の歌声は、徐々に、しかし確実に、力強さを増していった。
それは、蓮との特訓の日々が、彼女に与えた自信。
そして何より、蓮が自分を信じてくれているという、揺るぎない想い。
『――君と見つけたい 新しい物語の始まりを――』
最後のフレーズ。
陽葵は、全ての想いを、その一言に乗せた。
ガラスの向こう側の、蓮に届けるように。
歌声が、消える。
ピアノのアウトロが、静かに、優しく、全てを包み込むように流れていく。
そして、完全な静寂が訪れた。
陽葵は、マイクの前で、静かに涙を流していた。
悔し涙ではない。
自分の全てを、出し切ることができた、安堵の涙だった。
コントロールルームでは、誰もが、言葉を失っていた。
だが、それは先ほどの、圧倒された沈黙とは違う。
深い、深い感動に、心を震わせている沈黙だった。
どちらが、上手いか。
そんな問いは、もはや無意味だった。
二つの歌は、同じ曲でありながら、全く別の魂を持つ、二つの芸術作品だった。
絶望の闇を歌う『女王の歌』と、希望の光を歌う『陽だまりの歌』。
優劣など、つけられるはずもなかった。
やがて、橘が、ゆっくりと目を閉じたまま、口を開いた。
その声は、わずかに震えているように聞こえた。
「……まいったな」
ぽつりと、呟かれた言葉。
それは、この場の全員の気持ちを、代弁していた。
プロデューサーとして、長年この業界で生きてきた彼ですら、予測できなかった奇跡。それを、彼は今、目の当たりにしたのだ。
橘は、ゆっくりと目を開けた。
そして、その視線は、蓮と、ブースの中の陽葵、そして瑠奈を、順番に捉えた。
その瞳には、今まで見せたことのない、複雑で、人間的な感情が渦巻いていた。
裁定の時が、来た。
この、奇跡のような決闘の果てに、彼は、一体どんな答えを出すのか。
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