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第65話 恋の始まり、あるいは二人のための花火
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嵐のような拍手と温かい祝福。
その中で、俺はただ、少しだけ照れくさそうに、そしてどうしようもなく誇らしげに頭を下げ続ける雪城さんのことを見つめていた。
彼女の、あの俺だけに向けられた感謝の言葉。
『あなたがいなければ、この文化祭は決して成功しませんでした』
その言葉が、俺の胸の中でいつまでも温かく、そして甘く反響していた。
俺は、彼女の力になれたのだろうか。
未来から来た、完璧で孤独な彼女の、ほんの少しでも支えになることができたのだろうか。
そう思うと、この三日間の苦労なんて全て吹き飛んでしまうようだった。
後片付けが終わり、クラスの解散が告げられる。
「よっしゃー! 打ち上げ、行くぞー!」
陽平が元気よく叫ぶ。
クラスメイトたちも、「おおー!」とそれに続く。
だが、俺の心は別の場所にあった。
俺は人混みの中からそっと抜け出すと、まだ教室で最後の確認作業をしていた彼女の元へと向かった。
「……雪城さん」
俺が声をかけると、彼女は驚いたようにこちらを振り返った。
「優斗さん。打ち上げは行かないのですか?」
「ああ。お前は?」
「私は委員長として、最後の戸締りを確認する責任がありますから」
彼女はそう言って、少しだけ寂しそうに笑った。
その笑顔を見て、俺は決めた。
「じゃあ、俺も手伝うよ。副委員長としてな」
俺がにやりと笑って言うと、彼女は一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐにその瞳を嬉しそうに細めた。
「……ありがとうございます」
その小さな声が、誰もいなくなった教室に優しく響いた。
二人で教室の窓を閉め、電気を消し、最後の戸締りをする。
その何でもない共同作業。
それが今の俺たちにとっては、どんな打ち上げよりもずっと価値のある特別な時間だった。
校舎を出て、夜道を二人で並んで歩く。
文化祭の喧騒が、嘘のように遠ざかっていく。
静かな夜道。
俺たちの影が二つ、寄り添うように長く伸びていた。
「……なあ」
俺が口を開いた。
「天宮さんのこと、断った時、言ったろ。あれはお前のために断ったんじゃないって」
俺の唐突な言葉に、彼女はこくりと頷いた。
「はい。覚えています」
「あれ、本当だからな」
俺は立ち止まり、彼女の前に向き直った。
夜空には、数えきれないほどの星が瞬いている。
「俺が、俺の意思でそうしたいって思ったからだ」
俺は続ける。
もう、迷いはなかった。
俺が今、本当に伝えたい言葉。
それは、もう決まっていた。
「俺は、お前が好きだ。雪城冬花」
「未来の嫁だからとか、運命だからとか、そんなの全部関係ない」
「俺は、今のお前が好きだ」
「不器用で、嫉妬深くて、ちょっとズレてて、でも誰よりも一生懸命で、誰よりも優しい、お前のことがどうしようもなく好きなんだ」
「だから、俺と付き合ってくれないか」
それは、俺の人生で初めての告白だった。
不器用で、格好悪くて、震えていたかもしれない。
でも、そこには俺の全ての真実が込められていた。
俺の言葉を聞いた彼女は、その大きな碧色の瞳を信じられないというように見開いていた。
そして、その瞳からぽろり、ぽろりと大粒の涙がこぼれ落ちていく。
だが、それは悲しみの涙ではない。
ただひたすらに、純粋な喜びの涙だった。
彼女は何も言えない。
ただ、何度も、何度も、こくり、こくりと激しく頷くだけ。
そのあまりにもいじらしくて、あまりにも愛おしい姿に、俺はもう自分を抑えることができなかった。
俺は彼女のその小さな体を力強く引き寄せた。
そして、その涙に濡れた震える唇に、そっと自分の唇を重ねた。
それは、初めてのキスだった。
甘くて、少しだけしょっぱくて、そして永遠のように感じられた一瞬。
唇が離れた時。
俺たちはどちらからともなく、顔を見合わせてはにかんだ。
その時、遠くの空でパンッ、という乾いた音が響いた。
見上げると、後夜祭の打ち上げ花火が夜空を美しく彩っていた。
それはまるで、俺たちの新しい門出を祝福してくれているかのようだった。
「……私も」
俺の腕の中で、彼女が小さな、小さな声で言った。
「私も、優斗さんのことが大好きです」
「未来の夫だから、じゃなくて。今の、あなたが」
そのようやく聞けた彼女からの本当の告白。
俺は、もう一度彼女を強く、強く抱きしめた。
俺たちの長い、長い文化祭はこうして終わった。
そして、俺たちの本当の恋が、この祝福の花火の下で静かに、そして確かに始まったのだ。
その中で、俺はただ、少しだけ照れくさそうに、そしてどうしようもなく誇らしげに頭を下げ続ける雪城さんのことを見つめていた。
彼女の、あの俺だけに向けられた感謝の言葉。
『あなたがいなければ、この文化祭は決して成功しませんでした』
その言葉が、俺の胸の中でいつまでも温かく、そして甘く反響していた。
俺は、彼女の力になれたのだろうか。
未来から来た、完璧で孤独な彼女の、ほんの少しでも支えになることができたのだろうか。
そう思うと、この三日間の苦労なんて全て吹き飛んでしまうようだった。
後片付けが終わり、クラスの解散が告げられる。
「よっしゃー! 打ち上げ、行くぞー!」
陽平が元気よく叫ぶ。
クラスメイトたちも、「おおー!」とそれに続く。
だが、俺の心は別の場所にあった。
俺は人混みの中からそっと抜け出すと、まだ教室で最後の確認作業をしていた彼女の元へと向かった。
「……雪城さん」
俺が声をかけると、彼女は驚いたようにこちらを振り返った。
「優斗さん。打ち上げは行かないのですか?」
「ああ。お前は?」
「私は委員長として、最後の戸締りを確認する責任がありますから」
彼女はそう言って、少しだけ寂しそうに笑った。
その笑顔を見て、俺は決めた。
「じゃあ、俺も手伝うよ。副委員長としてな」
俺がにやりと笑って言うと、彼女は一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐにその瞳を嬉しそうに細めた。
「……ありがとうございます」
その小さな声が、誰もいなくなった教室に優しく響いた。
二人で教室の窓を閉め、電気を消し、最後の戸締りをする。
その何でもない共同作業。
それが今の俺たちにとっては、どんな打ち上げよりもずっと価値のある特別な時間だった。
校舎を出て、夜道を二人で並んで歩く。
文化祭の喧騒が、嘘のように遠ざかっていく。
静かな夜道。
俺たちの影が二つ、寄り添うように長く伸びていた。
「……なあ」
俺が口を開いた。
「天宮さんのこと、断った時、言ったろ。あれはお前のために断ったんじゃないって」
俺の唐突な言葉に、彼女はこくりと頷いた。
「はい。覚えています」
「あれ、本当だからな」
俺は立ち止まり、彼女の前に向き直った。
夜空には、数えきれないほどの星が瞬いている。
「俺が、俺の意思でそうしたいって思ったからだ」
俺は続ける。
もう、迷いはなかった。
俺が今、本当に伝えたい言葉。
それは、もう決まっていた。
「俺は、お前が好きだ。雪城冬花」
「未来の嫁だからとか、運命だからとか、そんなの全部関係ない」
「俺は、今のお前が好きだ」
「不器用で、嫉妬深くて、ちょっとズレてて、でも誰よりも一生懸命で、誰よりも優しい、お前のことがどうしようもなく好きなんだ」
「だから、俺と付き合ってくれないか」
それは、俺の人生で初めての告白だった。
不器用で、格好悪くて、震えていたかもしれない。
でも、そこには俺の全ての真実が込められていた。
俺の言葉を聞いた彼女は、その大きな碧色の瞳を信じられないというように見開いていた。
そして、その瞳からぽろり、ぽろりと大粒の涙がこぼれ落ちていく。
だが、それは悲しみの涙ではない。
ただひたすらに、純粋な喜びの涙だった。
彼女は何も言えない。
ただ、何度も、何度も、こくり、こくりと激しく頷くだけ。
そのあまりにもいじらしくて、あまりにも愛おしい姿に、俺はもう自分を抑えることができなかった。
俺は彼女のその小さな体を力強く引き寄せた。
そして、その涙に濡れた震える唇に、そっと自分の唇を重ねた。
それは、初めてのキスだった。
甘くて、少しだけしょっぱくて、そして永遠のように感じられた一瞬。
唇が離れた時。
俺たちはどちらからともなく、顔を見合わせてはにかんだ。
その時、遠くの空でパンッ、という乾いた音が響いた。
見上げると、後夜祭の打ち上げ花火が夜空を美しく彩っていた。
それはまるで、俺たちの新しい門出を祝福してくれているかのようだった。
「……私も」
俺の腕の中で、彼女が小さな、小さな声で言った。
「私も、優斗さんのことが大好きです」
「未来の夫だから、じゃなくて。今の、あなたが」
そのようやく聞けた彼女からの本当の告白。
俺は、もう一度彼女を強く、強く抱きしめた。
俺たちの長い、長い文化祭はこうして終わった。
そして、俺たちの本当の恋が、この祝福の花火の下で静かに、そして確かに始まったのだ。
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