隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ

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第67話 フォークダンスの輪、あるいは繋がれた手

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キャンプファイヤーの炎が少しずつその勢いを弱め始めた頃。
後夜祭のクライマックスを告げる陽気な音楽が校庭に流れ始めた。
フォークダンスだ。
文化祭の最後を飾る恒例行事。
「よっしゃー! みんな、輪になれー!」
陽平が誰よりも楽しそうに声を張り上げる。
クラスメイトたちが次々と手を取り合い、大きな、大きな一つの輪を作り上げていく。
その楽しそうな、しかし俺にとっては少しだけ気まずい光景。
俺は、どうすればいいのか分からず、その場で立ち尽くしていた。
隣にいる雪城さんも同じだった。彼女は少しだけ戸惑ったような顔で、その輪を遠巻きに眺めている。

「ほら、お二人さん! 何してんだよ、入った入った!」
陽平が俺たちを手招きする。
「いや、俺はいいよ。見てるだけで……」
俺が尻込みしていると、天宮さんがにこりと笑って俺たちの元へやってきた。
その笑顔には、もう何の翳りもなかった。
「行こうよ、相沢くん、雪城さん! 最後なんだから、みんなで楽しまなきゃ損だよ!」
彼女はそう言うと、俺と雪城さんの手をそれぞれぐいっと掴んだ。
そして、半ば強引に俺たちをダンスの輪の中へと引き入れていく。
「ほら、二人とも、ちゃんと手を繋いで!」
天宮さんは悪戯っぽく笑うと、俺の右手を雪城さんの左手と無理やり繋がせた。
その瞬間、俺の心臓がドクンと大きく跳ねた。
彼女の少しだけ冷たい華奢な手の感触。
そのあまりにも鮮烈な感触に、俺は顔が熱くなるのを感じた。
隣の彼女も同じだったらしい。
俯いた彼女の耳が、キャンプファイヤーの炎よりも赤く染まっているのが見えた。

陽気なフォークダンスの音楽。
俺たちはぎこちない動きでクラスメイトたちの輪に加わった。
右に二歩。左に二歩。
前へ進んで手を叩き、そして隣のパートナーと入れ替わる。
ただ、それだけの簡単なステップ。
なのに、俺の体はまるでロボットのようにガチガチに固まっていた。
意識してしまう。
繋がれた彼女の手の温もりを。
時折、視線が合うたびに、お互い慌てて目を逸らしてしまう。
その甘酸っぱい気まずさ。

ステップを踏み、俺の隣のパートナーが別の女子に変わる。
知らない女子生徒。
「よろしく」とはにかんでくるその子と手を繋ぐ。
何も感じない。
ただ早く次のステップが来て、彼女が俺の隣に戻ってきてほしいと思うだけ。
そして、またステップを踏み、パートナーが変わっていく。
陽平がニヤニヤしながら俺の隣に来る。
「どうだ、役得だろ?」と囁いてくる。
俺は、「うるさい」と小声で返す。
天宮さんが優しい笑顔で俺の隣に来る。
「楽しんでる?」と聞いてくる。
俺は、「まあな」と曖昧に頷く。

そして、音楽が何度も、何度も巡って。
ついに、その時がやってきた。
軽快なステップの先。
俺の目の前に彼女が現れた。
雪城冬花が。
俺のたった一人の特別なパートナーが。
俺たちはどちらからともなく、すっと手を差し出した。
そして、その手が再び固く結ばれる。
もう、ぎこちなさはなかった。
ただ自然に、当たり前のように俺たちは手を繋いだ。
まるで最初からそうなることが決まっていたかのように。

俺たちは言葉を交わさなかった。
ただ、繋いだ手のひらから伝わる温もりだけを感じていた。
右に二歩。左に二歩。
彼女の軽やかなステップ。
俺の少しだけぎこちないステップ。
そのちぐはぐな二つのステップが、不思議と完璧に調和していく。
音楽が、俺たち二人を優しく包み込んでいくようだった。
キャンプファイヤーの揺らめく炎。
クラスメイトたちの楽しそうな笑い声。
そして、繋がれた彼女の、手の確かな温もり。
その全てが、俺の心に忘れられない大切な思い出として深く、深く刻まれていった。

やがて、音楽が終わりを告げる。
俺たちの短いダンスも終わりを迎えた。
俺たちは名残惜しそうにそっと手を離す。
「……楽しかった、な」
俺がそう呟くと、彼女は顔を上げて俺の目を真っ直ぐに見た。
そして、今までにないくらい幸せそうな、とろけるような笑顔でこう言った。

「はい。私も、です」

その笑顔を見た瞬間、俺はもう確信していた。
俺たちの名前のないこの関係。
その答えがもうすぐ見つかることを。
後夜祭の炎が最後の輝きを放ち、静かに消えていく。
俺たちの長い、長い文化祭はこうして本当に終わりを告げた。
そして、その終わりは新しい始まりの確かな予感をはらんでいた。
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