隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ

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第81話 クリスマスという名の決戦場、あるいは街のイルミネーション

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雪城冬花との間に再び生まれてしまった、小さな、しかし確かなすれ違い。
それは『運命の修正力』という見えない敵の巧妙な攻撃だった。
俺は何度も彼女に謝ろうとした。だが、彼女は巧みに俺との二人きりの時間を避け、その氷の仮面の下に心を閉ざしてしまった。
俺たちの絆はこんなにも脆いものだったのだろうか。
俺の心は焦りと不安で黒く塗り潰されそうになっていた。

そんな重苦しい空気が俺たちの間に流れ始めて一週間が過ぎた頃。
季節はすっかり冬の装いを見せ始めていた。
街には気の早いクリスマスソングが流れ始め、ショーウィンドウは赤と緑の華やかな飾り付けで彩られている。
世間が浮かれたムードに包まれていく中で、俺たちの心だけが冷たい冬の空のようにどんよりと曇っていた。

その日の放課後。
俺はもう限界だった。
このまま彼女との距離が開いていくのを黙って見ていることなんてできなかった。
俺は一人でさっさと帰ろうとする彼女の腕を、ほとんど衝動的に掴んだ。
「……!」
彼女の体がびくりと大きく震える。
彼女は驚いたようにこちらを振り返った。その瞳には戸惑いの色が浮かんでいる。
「……何ですか。離してください」
「嫌だ」
俺はきっぱりと言った。
「離さない。お前がちゃんと俺と話をしてくれるまで、絶対に離さない」
俺のその有無を言わせぬ強い口調。
彼女は一瞬怯んだように目を見開いたが、すぐにふいっとそっぽを向いてしまった。
「……話すことなど、何もありません」
「あるだろ!」
俺は少しだけ声を荒らげた。
「俺はお前と仲直りしたいんだよ。こんなギクシャクしたままなんて、俺は絶対に嫌だ」
俺の魂からの叫び。
それを聞いた彼女の肩が微かに震えた。
俺は続ける。
「悪かった。俺が全部悪かった。天宮さんと話した時、お前の気持ち全然考えてなかった。本当にごめん」
俺は繋いだ腕にさらに力を込めた。
「だから頼む。もう一度俺にチャンスをくれ。お前とちゃんと笑い合いたいんだ」
俺のその必死の懇願。
しばらくの間、彼女は何も言わずに俯いていた。
やがて、ぽつりと小さな、小さな声が漏れた。

「……ずるい、です」
「え?」
「あなたはいつもそうやって……。私が何も言えなくなるような言葉を言う」
その声は震えていて、潤んでいた。
彼女はゆっくりと顔を上げた。
その瞳にはうっすらと涙の膜が張っている。
怒りでも悲しみでもない。
ただ、どうしようもない愛おしさが溢れている、そんな瞳だった。
俺たちの間にあった冷たい氷が、ようやく溶け始めた瞬間だった。

「……帰りましょうか」
どちらからともなくそう言った。
俺たちは手を繋いだまま夕暮れの街を歩き始めた。
まだ少しだけぎこちない。
でも、確かな温もりがそこにはあった。
駅前の大通りに出ると、俺たちは思わず足を止めた。
通りの街路樹という街路樹が無数の小さな電球で飾られ、まるで光のトンネルのようにきらきらと輝いていた。
街のイルミネーションだ。
「……わあ」
彼女の口から感嘆のため息が漏れた。
その横顔は普段のクールな彼女からは想像もつかないほど無邪気で、子供のように輝いていた。
色とりどりの光が彼女の銀色の髪を幻想的に照らし出す。
そのあまりにも美しい光景に、俺は心を奪われた。
彼女はまるで初めて宝物を見つけた子供のように、目をキラキラさせながらその光の洪水に見入っている。
「……きれいですね」
「ああ……。きれいだな」
俺の言葉がイルミネーションのことを言っているのか、それとも彼女のことを言っているのか。
もう自分でも分からなかった。

「未来では」
彼女がぽつりと呟いた。
「クリスマスはもっと静かな祝祭でした。こんな風に街中が光で溢れるなんてことはなかったから」
その声にはどこか遠い昔を懐かしむような響きがあった。
「だから私、こういうの初めてなんです。こんなに綺麗で温かい光は」
彼女はそう言って俺の顔を見上げた。
その瞳はイルミネーションの光を反射して、星空のようにきらめいている。
そして彼女は今までで一番幸せそうな、とろけるような笑顔でこう言った。
「あなたと一緒に見られて、嬉しいです」

そのあまりにも純粋で、あまりにも真っ直ぐな言葉と笑顔。
俺の心の中の最後の氷も完全に溶けてなくなった。
『運命の修正力』?
そんなものくそくらえだ。
俺は絶対にこの笑顔を失わない。
この温かい光を絶対に消させたりしない。
俺は繋いでいた彼女の手にぎゅっと力を込めた。
そして力強く誓った。

クリスマスが近づく。
それは恋人たちにとって特別な一日。
そして俺たちにとっては。
運命と戦うための決戦の始まりを告げる合図だったのだ。
俺は、その輝かしい決戦場を前に静かに、そして熱く闘志を燃やしていた。
この世界で一番愛おしい彼女の笑顔を守るために。
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