隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ

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第98話 俺たちの未来、あるいは最高の恋の物語

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「でも、話って、これだけじゃないんだろ?」

俺は言った。
今日、俺が彼女をここに呼び出した本当の理由。
それを伝えるために。
俺は彼女の、その涙に濡れた美しい瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
そして、今までで一番真剣な声で告げた。

「俺、ずっと考えてたんだ。俺たちって一体何なんだろうなって」
俺の声は少しだけ震えていた。
でも、それは恐怖や不安から来る震えではなかった。
ただひたすらに、純粋な緊張と、そしてどうしようもない愛おしさから来る震えだった。
「お前は俺の未来の嫁で。俺は、お前の未来の旦那様で。それはもう分かってる。俺も信じてる」
俺は一度言葉を切った。
そして、今この瞬間に世界で一番伝えたかった言葉を紡ぎ出す。

「でも、俺はそんな未来とか運命とか、そういう難しい話がしたいんじゃないんだ」
俺は一歩彼女に近づいた。
その距離、手を伸ばせば触れられてしまいそうなほど。
そして俺のありったけの本当の気持ちを、ありのままの言葉に乗せた。

「未来の嫁とか関係なく、雪城冬花さんが好きです」
「俺と、付き合ってください」

それは俺の人生で二度目の、そして本当の意味で初めての告白だった。
不器用で、格好悪くて、何の飾りもないただの言葉。
でも、そこには俺の全ての真実が込められていた。
未来で結ばれる運命だから、じゃない。
ただ俺が、今目の前にいるこの不器用で嫉妬深くて、でも誰よりも優しくて愛おしい、雪城冬花という一人の女の子を、どうしようもなく愛しているから。
ただ、それだけのシンプルな理由。

俺のそのあまりにも真っ直ぐな告白。
それを聞いた彼女は、その大きな碧色の瞳を信じられないというように見開いていた。
そしてその瞳から、ぽろり、ぽろりとまた大粒の涙がこぼれ落ちていく。
彼女は何も言えない。
ただ嗚咽を漏らしながら、何度も何度もこくり、こくりと激しく頷くだけ。
その姿を見て、俺はもう自分を抑えることができなかった。
俺は彼女のその小さな体を力強く引き寄せた。
そして、その涙で濡れた震える唇に、そっと自分の唇を重ねた。

それは初めての、本当の意味でのキスだった。
文化祭の後のあの勢いに任せたものではない。
お互いの心が完全に一つになったことを、確かめ合うための優しくて温かくて、そして永遠のように感じられた一瞬。
チョコレートの甘い香りがした。
唇が離れた時。
俺たちは、どちらからともなく顔を見合わせてはにかんだ。

「……はい」

ようやく彼女が絞り出した声は、涙でぐしゃぐしゃだったけれど。
でも、今まで聞いたどんな言葉よりもはっきりと、そして美しく俺の心に響いた。
「私も……! 私も、優斗さんのことが大好きです……!」
彼女はそう言うと、わっと子供のように声を上げて俺の胸に飛び込んできた。
俺は、その小さな体をもう二度と離さないと誓うように、強く、強く抱きしめ返した。
俺たちの長い、長い物語が、今、確かに一つの最高の結末を迎えたのだ。

夕日が教室をオレンジ色に染め上げていく。
俺たちはしばらくの間、言葉もなくただ抱きしめ合っていた。
やがて彼女が顔を上げて、少しだけ悪戯っぽく笑った。
「……未来のデータ、更新しておかなければなりませんね」
「え?」
「私たちの交際開始記念日。未来の記録よりも、半年以上早まりましたから」
その彼女らしい言葉。
俺は声を上げて笑った。
「ああ。そうだな。俺たちが未来を変えたんだ」
俺たちが作ったんだ。
誰かに与えられた運命なんかじゃない。
俺たち自身の手で掴み取った、最高の未来を。

その瞬間だった。
俺と彼女のポケットの中で、それぞれのスマホが同時にピコンと軽やかな通知音を鳴らした。
俺たちは顔を見合わせ、不思議そうにスマホを取り出す。
そこに表示されていたのは、見慣れないアプリからの通知だった。
そのアプリの名前は、『Future Memo』。
俺たちはどちらからともなく、その通知をタップした。
画面に表示されたのは、短い、短いメッセージ。

『おめでとう。そして、ありがとう』

そのメッセージの下には、二人の送信者の名前が記されていた。
『未来の、相沢優斗』
『未来の、相沢冬花』

俺たちは息を呑んだ。
未来の俺たちからのメッセージ。
俺たちが運命を変えたことで、本来なら届くはずのなかった奇跡の伝言。
俺たちが呆然としていると、スマホが再び震え、新たなメッセージが表示された。

『これからが、本当の始まりだよ』

その温かい祝福の言葉。
俺たちは顔を見合わせて、そして今度こそ心の底から笑い合った。
そうだ。
これは終わりなんかじゃない。
始まりなんだ。
未来で結ばれる運命だった二人が、様々な困難を乗り越え最高の形で今、結ばれた。
そしてここから二人で、最高の未来を創っていく。
その輝かしい物語の、本当の始まり。

俺はもう一度彼女のその愛おしい唇に、自分の唇を重ねた。
夕日がそんな俺たち二人を、いつまでもいつまでも優しく照らし続けていた。
これは、未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴み取った、最高の恋の物語。

(完)
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