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第42話 四天王、陥落。そして…
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「……き、さま……何者、だ……」
我が家の壁に、家庭菜園用ゴーレムアームで、大の字に磔にされた、竜将軍バハムート。
その兜の隙間から、血の混じった、呻き声が漏れた。
彼の、数千年にわたる戦いの歴史の中で、これほどの、屈辱と、完敗を、喫したことは、一度もなかっただろう。
自慢の、最強の矛は、少女の、小さな盾に、あっけなく、無力化され。
自慢の、頑強な肉体は、庭いじり用の、アームによって、関節を、ありえない方向に、へし折られている。
もはや、彼のプライドは、ズタズタだった。
俺は、そんな、満身創痍の、敗残兵を、バルコニーから、見下ろした。
「俺か? 俺は、ただの、引きこもりだ」
俺は、こともなげに、答えた。
「ただ、俺の、平穏な、引きこもり生活を、邪魔する奴は、誰であろうと、容赦しない。それだけだ」
「……ひき、こもり……? この、城が……? この、力が……?」
バハムートは、もはや、意識も、朦朧としているのか、意味の分からない、言葉を、繰り返している。
「さて、と。こいつ、どう、処分するか」
俺が、腕を組んで、呟くと。
背後から、リリアが、静かに、進み出た。
「ユータ様。この男の、首は、わたくしが、この手で、刎ねます。こいつは、我が故郷を、多くの、民を、苦しめた、元凶の一人。ここで、その、罪を、償わせるのが、筋、というもの」
その、リリアの瞳には、女王としての、厳しい、光が、宿っていた。
確かに、それが、一番、手っ取り早く、そして、後腐れのない、やり方だろう。
だが。
俺は、なぜか、それを、躊躇した。
殺すのは、簡単だ。
だが、殺してしまえば、それで、終わり。
こいつから、得られるものが、何も、なくなってしまう。
俺は、ふと、思いついた。
最高の、嫌がらせ、兼、有効活用を。
「……いや、待て、リリア」
俺は、彼女を、手で制した。
「そいつ、殺すのは、まだ、早い。もったいない」
「え?」
「こいつ、四天王最強なんだろ? 体も、頑丈そうだ。……なら、ちょうど、いい」
俺は、バハムートの、目の前に、しゃがみこむと、にやりと、悪魔のような、笑みを浮かべた。
「――お前、今日から、うちの、門番になれ」
「…………は?」
バハムートだけでなく、リリアも、フィーも、モカも、俺の、突拍子もない、提案に、完全に、固まった。
「門番、だと……? この、俺に……?」
「ああ。家の、門の前に、鎖で、繋いでおいてやる。次に、この家に、ちょっかいを、出しに来る、馬鹿がいたら、お前が、追い払え。お前の、その、いかつい、見た目なら、大抵の、チンピラは、逃げ出すだろ」
それは、最強の戦士に対する、これ以上ない、屈辱。
生かしたまま、その、プライドを、永遠に、踏みにじり続ける、という、悪魔の所業。
「……ふ、ざけるな……! それくらいなら、いっそ、殺せ……!」
バハムートが、最後の力を振り絞り、吼えた。
「嫌だね」
俺は、即答した。
「お前を、どうするかは、お前を、捕まえた、俺が、決めることだ。お前に、選択権はない。……なあ、フィー。こいつが、逃げ出したり、反抗したりしないように、何か、いい感じの、呪いの首輪、作れるか?」
俺が尋ねると、フィーは、待ってましたとばかりに、目を輝かせた。
「お任せください! わたくしの、最新の、呪詛学研究の、成果を、試す、絶好の、機会です! 絶対に、逆らえず、主の命令には、犬のように、従順になる、『服従の首輪』を、創り上げてご覧にいれましょう!」
その、マッドサイエンティストのような、セリフ。
それを、聞いた、バハムートの目に、初めて、本物の、恐怖の色が、浮かんだ。
死ぬよりも、恐ろしい、運命。
それが、自分を、待ち受けていることを、彼は、悟ったのだ。
「や……やめろ……! やめてくれ……!」
最強の、竜将軍が、まるで、子供のように、命乞いを始めた。
その、あまりにも、情けない、姿。
俺は、その光景を、心の底から、満足げに、眺めていた。
俺の、平穏を、乱した、罰だ。
存分に、味わうがいい。
◇
数日後。
我が家の、玄関前には、新たな、名物が、誕生していた。
漆黒の、巨大な鎧の巨人が、太い、魔力を封じる、鎖で、門柱に、繋がれている。
彼の首には、フィーが、丹精込めて作り上げた、禍々しい、ルーン文字が刻まれた、首輪が、はめられていた。
竜将軍・バハムート。
いや、もはや、我が家の、忠実なる、番犬、『ポチ』だ。
「ポチ、お手」
俺が、バルコニーから、声をかけると。
バハムートは、屈辱に、顔を歪ませながらも、呪いの首輪の、強制力には、逆らえず、巨大な、鉄の拳を、ゆっくりと、差し出した。
「よしよし、いい子だ」
俺は、満足げに、頷いた。
リリアは、その光景を、なんとも、言えない、複雑な顔で、見ている。
フィーは、自分の、作品の、完璧な、性能に、うっとりとしている。
モカは、「わんちゃん、大きいですね!」と、無邪気に、喜んでいた。
こうして、魔王軍、最後の、そして、最強の、四天王は、陥落した。
いや、我が家の、ペットになった。
この、あまりにも、衝撃的な、事実。
それが、魔王城に、伝わった時、魔王ゼノンが、どのような、反応を示すのか。
俺は、少しだけ、楽しみに、思いながら。
今日も、ソファの上で、平和な、一日を、過ごすのだった。
だが、俺は、まだ、知らなかった。
全ての、幹部を失った、王が。
次に、取る、行動は、ただ、一つしかない、ということを。
自ら、出陣する。
その、最後の、そして、最大の、面倒事が、もう、すぐ、そこまで、迫っていることを。
俺の、本当の、戦いは。
まだ、終わってはいなかったのだ。
**――第二章 完――**
我が家の壁に、家庭菜園用ゴーレムアームで、大の字に磔にされた、竜将軍バハムート。
その兜の隙間から、血の混じった、呻き声が漏れた。
彼の、数千年にわたる戦いの歴史の中で、これほどの、屈辱と、完敗を、喫したことは、一度もなかっただろう。
自慢の、最強の矛は、少女の、小さな盾に、あっけなく、無力化され。
自慢の、頑強な肉体は、庭いじり用の、アームによって、関節を、ありえない方向に、へし折られている。
もはや、彼のプライドは、ズタズタだった。
俺は、そんな、満身創痍の、敗残兵を、バルコニーから、見下ろした。
「俺か? 俺は、ただの、引きこもりだ」
俺は、こともなげに、答えた。
「ただ、俺の、平穏な、引きこもり生活を、邪魔する奴は、誰であろうと、容赦しない。それだけだ」
「……ひき、こもり……? この、城が……? この、力が……?」
バハムートは、もはや、意識も、朦朧としているのか、意味の分からない、言葉を、繰り返している。
「さて、と。こいつ、どう、処分するか」
俺が、腕を組んで、呟くと。
背後から、リリアが、静かに、進み出た。
「ユータ様。この男の、首は、わたくしが、この手で、刎ねます。こいつは、我が故郷を、多くの、民を、苦しめた、元凶の一人。ここで、その、罪を、償わせるのが、筋、というもの」
その、リリアの瞳には、女王としての、厳しい、光が、宿っていた。
確かに、それが、一番、手っ取り早く、そして、後腐れのない、やり方だろう。
だが。
俺は、なぜか、それを、躊躇した。
殺すのは、簡単だ。
だが、殺してしまえば、それで、終わり。
こいつから、得られるものが、何も、なくなってしまう。
俺は、ふと、思いついた。
最高の、嫌がらせ、兼、有効活用を。
「……いや、待て、リリア」
俺は、彼女を、手で制した。
「そいつ、殺すのは、まだ、早い。もったいない」
「え?」
「こいつ、四天王最強なんだろ? 体も、頑丈そうだ。……なら、ちょうど、いい」
俺は、バハムートの、目の前に、しゃがみこむと、にやりと、悪魔のような、笑みを浮かべた。
「――お前、今日から、うちの、門番になれ」
「…………は?」
バハムートだけでなく、リリアも、フィーも、モカも、俺の、突拍子もない、提案に、完全に、固まった。
「門番、だと……? この、俺に……?」
「ああ。家の、門の前に、鎖で、繋いでおいてやる。次に、この家に、ちょっかいを、出しに来る、馬鹿がいたら、お前が、追い払え。お前の、その、いかつい、見た目なら、大抵の、チンピラは、逃げ出すだろ」
それは、最強の戦士に対する、これ以上ない、屈辱。
生かしたまま、その、プライドを、永遠に、踏みにじり続ける、という、悪魔の所業。
「……ふ、ざけるな……! それくらいなら、いっそ、殺せ……!」
バハムートが、最後の力を振り絞り、吼えた。
「嫌だね」
俺は、即答した。
「お前を、どうするかは、お前を、捕まえた、俺が、決めることだ。お前に、選択権はない。……なあ、フィー。こいつが、逃げ出したり、反抗したりしないように、何か、いい感じの、呪いの首輪、作れるか?」
俺が尋ねると、フィーは、待ってましたとばかりに、目を輝かせた。
「お任せください! わたくしの、最新の、呪詛学研究の、成果を、試す、絶好の、機会です! 絶対に、逆らえず、主の命令には、犬のように、従順になる、『服従の首輪』を、創り上げてご覧にいれましょう!」
その、マッドサイエンティストのような、セリフ。
それを、聞いた、バハムートの目に、初めて、本物の、恐怖の色が、浮かんだ。
死ぬよりも、恐ろしい、運命。
それが、自分を、待ち受けていることを、彼は、悟ったのだ。
「や……やめろ……! やめてくれ……!」
最強の、竜将軍が、まるで、子供のように、命乞いを始めた。
その、あまりにも、情けない、姿。
俺は、その光景を、心の底から、満足げに、眺めていた。
俺の、平穏を、乱した、罰だ。
存分に、味わうがいい。
◇
数日後。
我が家の、玄関前には、新たな、名物が、誕生していた。
漆黒の、巨大な鎧の巨人が、太い、魔力を封じる、鎖で、門柱に、繋がれている。
彼の首には、フィーが、丹精込めて作り上げた、禍々しい、ルーン文字が刻まれた、首輪が、はめられていた。
竜将軍・バハムート。
いや、もはや、我が家の、忠実なる、番犬、『ポチ』だ。
「ポチ、お手」
俺が、バルコニーから、声をかけると。
バハムートは、屈辱に、顔を歪ませながらも、呪いの首輪の、強制力には、逆らえず、巨大な、鉄の拳を、ゆっくりと、差し出した。
「よしよし、いい子だ」
俺は、満足げに、頷いた。
リリアは、その光景を、なんとも、言えない、複雑な顔で、見ている。
フィーは、自分の、作品の、完璧な、性能に、うっとりとしている。
モカは、「わんちゃん、大きいですね!」と、無邪気に、喜んでいた。
こうして、魔王軍、最後の、そして、最強の、四天王は、陥落した。
いや、我が家の、ペットになった。
この、あまりにも、衝撃的な、事実。
それが、魔王城に、伝わった時、魔王ゼノンが、どのような、反応を示すのか。
俺は、少しだけ、楽しみに、思いながら。
今日も、ソファの上で、平和な、一日を、過ごすのだった。
だが、俺は、まだ、知らなかった。
全ての、幹部を失った、王が。
次に、取る、行動は、ただ、一つしかない、ということを。
自ら、出陣する。
その、最後の、そして、最大の、面倒事が、もう、すぐ、そこまで、迫っていることを。
俺の、本当の、戦いは。
まだ、終わってはいなかったのだ。
**――第二章 完――**
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