異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ

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第51話 新たなる玩具と軍師の企み

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ティル・ナ・ログ市での祝勝の宴の喧騒も、我が家のリビングまでは届かない。
俺は、ソファの上で、モカの完璧なマッサージを受けながら、ディスプレイに映る宴の様子を、どこか冷めた目で眺めていた。
リリアは、見事に、女王の役割を演じきっている。集まった貴族たちも、ひとまずは、彼女のカリスマと、その背後にいる『賢者』の奇跡に、心酔しているように見える。
だが、俺には分かっていた。
これは、しょせん、始まりに過ぎない。
寄せ集めの軍勢。烏合の衆。
彼らを、本当の意味で、一つの、強固な軍隊へと、変えるには、圧倒的な、勝利と、そして、それを、支えるだけの、絶対的な、『力』が必要だ。
「……今のままじゃ、足りないな」
俺は、呟いた。
その、独り言のような言葉に、隣にいたフィーが、鋭く、反応した。
「……と、言いますと? ティル・ナ・ログの防衛戦は、完璧な勝利だったと、思いますが」
「あれは、奇襲と、心理戦、そして、俺の、兵站チートが、上手く、ハマっただけだ」
俺は、首を横に振った。
「次に、グレン公爵が、送ってくるのは、ボルテスのような、猪武者じゃない。もっと、狡猾で、用意周到な、将軍だろう。そして、魔王軍も、本格的に、介入してくるはずだ。そうなった時、リリアたちの、今の装備と、戦力だけでは、いずれ、限界が来る」
俺の、冷静な、分析。
それは、勝利に、浮かれている、現場の、誰にも、見えていない、未来の、懸念だった。
「……では、どうすると?」
フィーの、問いに、俺は、にやりと、笑った。
「決まってるだろ。駒が、弱いなら、強化すればいい。次の、戦いが、始まる前に、俺たちの、手札を、もう、一枚、いや、二枚、増やしておくのさ」
俺は、ディスプレイのマップを、操作した。
表示されたのは、アルトリア王国のはるか北、極寒の、山脈地帯に、存在する、一つの、古代遺跡。
その名は、『巨人の鍛冶場(ギガント・フォージ)』。
「……これは!?」
その遺跡の名前を見た瞬間、フィーの目が、学者の、それへと、変わった。
「神話の時代、巨人族が、星の、核から、削り出した、オリハルコンを、鍛え、神々のための、武具を、創り出したと、される、伝説の、場所……! ですが、その場所は、数千年間、誰も、発見できていない、幻の、遺跡のはず……!」
「ああ。だが、俺の『目』には、見える」
俺の、神の視点は、この世界の、どんな、古代遺跡の、場所も、正確に、捉えていた。
「この、『巨人の鍛冶場』には、今も、古代の、巨人たちが遺した、超高温の、地核の炎が、燃え続けているらしい。その炎を使えば、フィー、お前の、錬金術と、俺の力で、今よりも、さらに、強力な、武具や、ゴーレムを、創り出せるんじゃないか?」
俺の、提案。
それは、フィーにとって、悪魔の、囁きに、等しかった。
失われた、古代の、超技術。
それを、この手で、解明し、再現できる、かもしれない。
「……や、やりましょう! やりましょう、ユータさん!」
フィーは、興奮に、身を震わせ、俺の、手に、すがりついてきた。
「その、鍛冶場さえ、手に入れれば、わたくしたちは、軍隊を、まるごと、武装させられるほどの、神器級の、装備を、量産できるやもしれません! そうなれば、魔王軍とて、恐るるに足りません!」
「よし、決まりだ」
俺は、満足げに、頷いた。
これが、俺の、次なる、一手。
戦争の、準備段階として、最強の、生産拠点を、手に入れる。
「――リリアに、伝えろ。宴は、そこそこにして、すぐに、この家に戻ってこい、と。次の、遠足の、行き先が、決まった」
俺は、楽しそうに、そう、告げた。
その、言葉は、リリアにとって、勝利の、美酒よりも、よほど、心、躍る、響きを、持っていたに、違いない。



数日後。
ティル・ナ・ログ市の、統治を、ケネス伯爵に、任せ、三人の、ヒロインたちは、再び、俺の家に、集結していた。
彼女たちの前には、俺が、この、数日間で、新たに、開発した、『オモチャ』が、並べられている。
「……ユータ様。これは、一体……?」
リリアが、目の前の、金属製の、巨大な、箱を、不思議そうに、見つめている。
「『全地形対応型・万能装甲車(オール・テレイン・ビークル)』、名付けて、『ケンタウロス壱号』だ」
俺は、得意げに、説明した。
それは、空間魔法で、内部の、空間を、拡張し、居住性と、積載量を、極限まで、高めた、魔法の、キャンピングカーのような、乗り物だった。
装甲は、もちろん、オリハルコン製。
動力は、半永久的に、稼働する、魔力エンジン。
そして、武装として、屋根には、先日、バハムートを、撃ち落とした、『我が家バスターキャノン』の、小型版まで、搭載されている。
「こいつに乗って、北の、山脈まで、行ってもらう。道中の、雑魚は、これで、蹴散らせるだろ」
「……もはや、戦車ですわね、これ」
リリアの、ツッコミは、的確だった。
「そして、モカ。お前のための、新しい、オモチャだ」
俺は、モカに、小さな、機械式の、トンボのような、ドローンを、手渡した。
「『隠密偵察機(ステルス・ドローン)』、ピコドラゴンだ。こいつを、飛ばせば、お前は、その場にいながら、半径、十キロ以内の、様子を、手に取るように、把握できる。映像は、もちろん、俺の、ディスプレイにも、転送される」
「わあ! すごい! カッコいいです!」
モカは、新しい、オモチャに、大はしゃぎだ。
「最後に、フィー」
俺は、彼女に、一つの、腕輪を、渡した。
「それは、『ゴーレム制御リング』だ。今回の、目的地、『巨人の鍛冶場』には、おそらく、古代の、防衛システムが、まだ、生きている。そいつらを、ハッキングして、味方につけるための、秘密兵器だ」
「……素晴らしい! これさえ、あれば、どんな、古代遺跡も、丸裸に、できます!」
フィーもまた、新たな、研究対象に、目を輝かせている。
新たな、目的地。
新たな、装備。
そして、新たな、冒険。
(まあ、俺は、家から、一歩も、出ないが)
「準備は、いいな? お前たち」
俺の、問いに、三人は、力強く、頷いた。
「――よし。では、第二回、チート武具、作成ツアーに、出発だ!」
俺の、号令と共に、『ケンタウロス壱号』の、エンジンが、静かに、唸りを上げた。
それは、リリア軍の、戦力を、指数関数的に、増大させる、旅の始まり。
そして、グレン公爵と、魔王軍が、まだ、知らない、俺たちの、新たな、切り札を、手に入れるための、重要な、ミッションの、始まりでも、あった。
俺は、ソファの上から、彼女たちの、新たな、旅路を、楽しむべく、コーラと、ポップコーンの、準備を、始めるのだった。
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