「働きたくない…」と本気で祈ったら怠惰の神が降臨。【フルオート】で身の回りを快適にしていたら、インフラを整備した救国の英雄になっていた

夏見ナイ

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第七話 金策その2・ポーション自動生成プラント

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翌朝、俺はベッドに寝そべったまま、家の裏にできた薬草の山を眺めていた。スキル【高品質薬草自動採取】は、俺が寝ている間も忠実に稼働し続けているようだ。見えないゴーレムか何かが、森中から月見草をかき集めてきているのだろう。山の高さは、昨日の倍近くになっていた。

「よしよし。いい調子だ」

これで当面の食料には困らない。俺は満足げに頷いた。

だが、すぐに新たな問題が頭をもたげた。

この薬草の山を、どうやって金に換える?

村の市場に持っていく必要がある。だが、この量をどうやって運ぶというのか。一番近い市場ですら、歩いて三十分はかかる。この山を運び切るには、何十往復もしなければならない。

考えただけで全身から力が抜けていく。そんな重労働、死んでもごめんだ。

そもそも、このまま薬草として売ったところで、大した儲けにはならないだろう。村にいる唯一の薬師は、足元を見て買い叩いてくるに違いない。俺のような村の嫌われ者ならなおさらだ。苦労して運んだ挙句、二束三文で買い取られては割に合わない。

「……面倒くさいな」

どうしたものか。ベッドの上でごろりと寝返りを打つ。何か、もっと効率的に、楽して大金を稼ぐ方法はないものか。

運ぶ量を減らし、かつ一回あたりの利益を最大化する。つまり、付加価値をつけるということだ。

薬草に付加価値をつける。答えは一つしかない。

「ポーション、か」

薬草を加工して回復薬を作る。そうすれば、薬草のまま売るよりも何倍、いや何十倍もの値段で売れるはずだ。ポーションなら小さな瓶に入れて運べる。あの薬草の山を全て加工すれば、莫大な富を築けるかもしれない。

いい考えだ。実にいい。

……いや、待て。よくない。

ポーションを作る? それはつまり、労働ではないか。

薬草を洗い、選別し、すり潰し、大鍋で煮詰め、濾して、瓶に詰める。前世でやったゲームの知識だが、大体そんな工程だろう。想像しただけで、眩暈がした。火の番をしながら、鍋をかき混ぜ続けるなんて地獄だ。

駄目だ。やはりこの案も却下か。

いや。

俺はなぜ、こんな簡単なことを見落としていたんだ。

「自動化すればいいじゃないか」

そうだ。俺には【全自動化】がある。薬草採取が自動化できたのだ。ポーション生成が自動化できないはずがない。俺がやるべきは、一度だけ完璧なポーション生成のプロセスを設計すること。それだけだ。

怠惰のための知的労働。再びその時が来た。

俺は目を閉じ、意識を集中させた。頭の中に、巨大な設計図を広げる。家の裏の空きスペースを、全自動のポーション生成プラントに変えるのだ。

まず、第一工程【自動洗浄】。
井戸から自動で水を汲み上げ、薬草の山に降り注がせる。水圧と摩擦で、根についた土や泥を完璧に洗い流す。使用した水は、汚泥と分離させてから地面に還す。環境にも配らないと、後で面倒なことになりかねない。

次に、第二工程【自動選別・裁断】。
洗浄された薬草を、見えないベルトコンベアのようなもので運ぶ。その過程で、傷んだ葉や茎を自動で識別し、取り除く。選別された一級品だけを、これもまた見えない刃で最適なサイズに切り刻む。薬効成分を最大限に引き出すための、ミリ単位の精度が求められる。

第三工程【自動調合・煮沸】。
ここが品質を決定づける最重要ポイントだ。裁断された薬草と、井戸から汲んだ清浄な水を、寸分の狂いもない比率で大鍋に投入する。そして、俺の魔力を熱量に変換し、鍋を直接加熱する。薪を使うと温度管理が面倒だからな。最初は高温で一気に成分を抽出し、次に中温でじっくりと熟成させ、最後に低温で安定させる。三段階の温度変化を完璧にプログラムする。

第四工程【自動冷却・濾過】。
煮沸が終わった液体を、ゆっくりと冷却させる。急激な温度変化は成分の劣化を招く。人肌程度の温度になったら、特殊なフィルターを通して不純物を除去する。フィルターは、きめ細かい布を何重にも重ねたものをイメージした。これで、ざらつきのない滑らかな飲み口になるはずだ。

そして、最終工程【自動瓶詰・貯蔵】。
完成したポーションを、家にあった空き瓶に自動で注いでいく。瓶が足りなくなったら、納屋に転がっている大きな酒樽に直接貯蔵する。液面に蓋をするように薄い魔力の膜を張り、品質の劣化を防ぐ。

よし。完璧だ。

俺は脳内で組み上げたこの一連のシステムに【ポーション自動生成プラント】と名付け、スキルに登録した。

「自動実行」

俺の命令と共に、家の裏手で魔法が顕現した。

まず、井戸の釣瓶が意思を持ったように動き出し、勢いよく水を汲み上げ始めた。汲まれた水は空中で巨大なシャワーとなり、薬草の山に降り注ぐ。泥水が地面に吸い込まれていく中、薬草はみるみるうちに輝くような翠色を取り戻していく。

綺麗になった薬草が、ふわりと宙に浮き上がった。それらは行列をなし、家の壁際に設置された大鍋へと吸い込まれていく。その途中で、傷んだ葉が器用に取り除かれ、残りは見えない力で細かく刻まれていった。

大鍋の下で、淡い魔力の光が揺らめく。火はない。だが、鍋の中の液体はすぐにぐつぐつと煮立ち始めた。部屋の中まで、濃厚な薬草の香りが漂ってくる。

俺はベッドの上から、その全てを眺めていた。まるで高度に自動化された工場だ。いや、魔法によって成り立つそれは、もはや芸術の域に達している。

「ふふふ…」

思わず笑みがこぼれる。これだ。これこそが俺の求めていたものだ。肉体を一切動かすことなく、ただ思考だけで価値を生み出していく。これぞ究極の不労所得システム。

プラントは夜通し稼働を続けた。コトコトという煮沸の音と、時折瓶がカチンと鳴る音が、子守唄のように心地よかった。

翌朝、俺が目を覚ますと、家の裏は様変わりしていた。

あれほど高く積まれていた薬草の山は、跡形もなく消え去っていた。その代わり、納屋から運び出されたのだろう、巨大な酒樽が三つ、どっしりと鎮座している。樽の縁ギリギリまで、美しい翠色の液体がなみなみと満たされていた。

俺は樽の一つに、試しに指を浸してみた。ひんやりとして、少しとろみのある液体。不純物は一切感じられない。鼻を近づけると、澄んだ薬草の香りがした。

素人目にも分かる。これは、とんでもなく高品質なポーションだ。

俺の怠惰な頭脳が生み出した、最初の製品。それが今、樽の中で静かに輝いている。

さて、とんでもない量の高品質ポーションができてしまったわけだが。

これをどうやって売るか。

市場に持っていくのは、やはり面倒だ。
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