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第三十五話 垂直展開② 素材と労働力
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完璧な設計図はできた。だが、絵に描いた餅は食えない。この壮大な計画を実現するためには、実際に道を建設する『労働力』と、その材料となる『資材』が必要不可欠だ。
もちろん、俺が村人を雇って指示を出すなどという面倒なことをするはずもない。全ては自動化する。俺の仕事は、そのためのシステムを設計することだけだ。
俺はベッドに寝そべったまま、次の構想を練り始めた。
まずは、労働力。開墾作業で作った【自動開墾ゴーレム・アースウォーカー】は、あくまで荒れ地を更地にするための武骨な機体だった。しかし、街道建設はもっと繊細で専門的な作業の連続だ。
一つのゴーレムに全ての機能を持たせるのは非効率的だ。ここは、専門家集団による分業体制が望ましい。
俺は、四種類の特殊作業ゴーレムからなる建設チームを設計した。
第一陣、【掘削整地ゴーレム・グランドレベラー】。
その役割は、設計図通りに地面を正確に掘削し、路盤となる基礎を固めること。巨大なローラーと振動装置を搭載し、ミリ単位の精度で地面を平坦かつ強固にならしていく。
第二陣、【資材運搬ゴーレム・キャリアアント】。
その名の通り、蟻のように黙々と働く運搬専門のゴーレムだ。後述する『工場』で生産された石畳ブロックを、必要な数だけ必要な場所へと迅速に運ぶ。
第三陣、【石畳敷設ゴーレム・パズルマスター】。
これが建設チームの華だ。複数の精密なアームを持ち、運ばれてきた石畳ブロックを、まるでパズルのピースをはめるかのように、寸分の狂いもなく敷き詰めていく。その作業速度は、熟練の職人百人分に相当するだろう。
第四陣、【最終工程ゴーレム・フィニッシャー】。
敷き詰められた石畳の表面を滑らかに研磨し、夜光石の粉末を練り込んだ特殊な魔術コーティングを施す。道の耐久性と安全性を最終的に確保する、重要な役割だ。
これら四種のゴーレム軍団を、俺は【街道敷設ゴーレム・ロードビルダー】と総称することにした。
次に、資材の問題だ。
この計画には、膨大な量の、完全に規格化された石畳ブロックが必要になる。近くの山から石を切り出す? 品質はバラバラだし、運搬も面倒だ。却下だ。
ならば、答えは一つ。素材そのものから作り出す。
俺は、新たな概念のゴーレ-ゴーレムを設計した。それは、動かないゴーレム。建設現場には行かず、ただひたすらに最高品質の石畳ブロックを生産し続ける、全自動の『工場』だ。
名を、【素材生成ゴーレム・マテリアルクリエイター】。
その体は、巨大な立方体の形をしている。内部は、魔力を物質に変換するための、複雑な錬金術的魔法炉になっている。周囲の土や石、そして大気中の魔素(マナ)を原料として取り込み、内部で超高圧と高熱をかけて再構成。そして、設定された通りのサイズと形状、強度を持つ、完璧な石畳ブロックを、ベルトコンベア式に次々と排出していく。
これらを、俺の家の裏の、農地のさらに奥にある広大な空き地に設置する。そこを生産拠点とし、ロードビルダー軍団を前線へと送り出す。完璧な兵站と前線部隊。まさに建設のための軍隊だ。
「……よし。これで全て揃った」
俺が脳内で全ての設計を終え、目を開けた瞬間。
家の外で、リノとアリアが同時に息を呑んだ。
「……魔力の質が変わった」
アリアが、緊張した面持ちで呟いた。測量の時に感じた広域に拡散するような魔力ではない。今、家の中から漏れ出しているのは、何かを『創造』し、『量産』しようとする、規則正しく、そして圧倒的に力強い魔力の鼓動だった。
リノは、その魔力の意味をより正確に理解していた。彼女はわなわなと震え、顔面を蒼白にさせていた。
「……嘘でしょう」
彼女の声は、かすれていた。
「これは、無からの物質生成……。いえ、違う。低価値の物質と魔素を再構成して、高価値の物質を錬成する……。古代の賢者たちが追い求めた『賢者の石』の理論そのもの。それを、あの人はたった一人でシステムとして構築しようとしている……?」
それは、神の御業だった。錬金術師が、その生涯をかけても到達できない究極の領域。それを、あの怠惰な男はベッドの上で寝転がりながら、鼻歌でも歌うかのように成し遂げようとしている。
「マスター……。あなた、一体、何者なの……」
リノは、もはやレイジを研究対象として見ることをやめていた。その視線には、人知を超えた存在に対する純粋な畏怖だけが宿っていた。
アリアもまた、リノの言葉の断片から、今起きていることの途方もなさを感じ取っていた。
(設計図を示されただけではなかった。あの方は、それを実現するための『手段』すらも、この場で創り出そうとしておられるのか。まるで、天地創造の物語だ……)
彼女たちは、ただ呆然と、家の中で脈動する巨大な魔力を見つめることしかできなかった。
その頃。
全ての元凶である俺は、満足げに頷いていた。
「プロセス登録【全自動街道建設システム】。ロードビルダー及びマテリアルクリエイターの量産を開始。完成次第、第一工区の建設に着手せよ」
俺は静かに、しかし確固たる意志で、スキルを発動させた。
体の奥から、今までにないほどの巨大な魔力が奔流となって流れ出していく。
家の裏の空き地で、地面が静かに盛り上がり、巨大な立方体の工場が姿を現し始めた。その傍らでは、土くれが意思を持ったように集まり、次々と建設用ゴーレムの形を成していく。
静かな、しかし確実な、世界の変革が始まった。
俺は、魔力を消費した心地よい疲労感に包まれながら、再びベッドに体を横たえた。
「さて、と。あとは勝手に出来上がるのを待つだけだな」
俺の究極の食欲が、この世界の物理法則をまた一つ、あっさりと書き換えた瞬間だった。
もちろん、俺が村人を雇って指示を出すなどという面倒なことをするはずもない。全ては自動化する。俺の仕事は、そのためのシステムを設計することだけだ。
俺はベッドに寝そべったまま、次の構想を練り始めた。
まずは、労働力。開墾作業で作った【自動開墾ゴーレム・アースウォーカー】は、あくまで荒れ地を更地にするための武骨な機体だった。しかし、街道建設はもっと繊細で専門的な作業の連続だ。
一つのゴーレムに全ての機能を持たせるのは非効率的だ。ここは、専門家集団による分業体制が望ましい。
俺は、四種類の特殊作業ゴーレムからなる建設チームを設計した。
第一陣、【掘削整地ゴーレム・グランドレベラー】。
その役割は、設計図通りに地面を正確に掘削し、路盤となる基礎を固めること。巨大なローラーと振動装置を搭載し、ミリ単位の精度で地面を平坦かつ強固にならしていく。
第二陣、【資材運搬ゴーレム・キャリアアント】。
その名の通り、蟻のように黙々と働く運搬専門のゴーレムだ。後述する『工場』で生産された石畳ブロックを、必要な数だけ必要な場所へと迅速に運ぶ。
第三陣、【石畳敷設ゴーレム・パズルマスター】。
これが建設チームの華だ。複数の精密なアームを持ち、運ばれてきた石畳ブロックを、まるでパズルのピースをはめるかのように、寸分の狂いもなく敷き詰めていく。その作業速度は、熟練の職人百人分に相当するだろう。
第四陣、【最終工程ゴーレム・フィニッシャー】。
敷き詰められた石畳の表面を滑らかに研磨し、夜光石の粉末を練り込んだ特殊な魔術コーティングを施す。道の耐久性と安全性を最終的に確保する、重要な役割だ。
これら四種のゴーレム軍団を、俺は【街道敷設ゴーレム・ロードビルダー】と総称することにした。
次に、資材の問題だ。
この計画には、膨大な量の、完全に規格化された石畳ブロックが必要になる。近くの山から石を切り出す? 品質はバラバラだし、運搬も面倒だ。却下だ。
ならば、答えは一つ。素材そのものから作り出す。
俺は、新たな概念のゴーレ-ゴーレムを設計した。それは、動かないゴーレム。建設現場には行かず、ただひたすらに最高品質の石畳ブロックを生産し続ける、全自動の『工場』だ。
名を、【素材生成ゴーレム・マテリアルクリエイター】。
その体は、巨大な立方体の形をしている。内部は、魔力を物質に変換するための、複雑な錬金術的魔法炉になっている。周囲の土や石、そして大気中の魔素(マナ)を原料として取り込み、内部で超高圧と高熱をかけて再構成。そして、設定された通りのサイズと形状、強度を持つ、完璧な石畳ブロックを、ベルトコンベア式に次々と排出していく。
これらを、俺の家の裏の、農地のさらに奥にある広大な空き地に設置する。そこを生産拠点とし、ロードビルダー軍団を前線へと送り出す。完璧な兵站と前線部隊。まさに建設のための軍隊だ。
「……よし。これで全て揃った」
俺が脳内で全ての設計を終え、目を開けた瞬間。
家の外で、リノとアリアが同時に息を呑んだ。
「……魔力の質が変わった」
アリアが、緊張した面持ちで呟いた。測量の時に感じた広域に拡散するような魔力ではない。今、家の中から漏れ出しているのは、何かを『創造』し、『量産』しようとする、規則正しく、そして圧倒的に力強い魔力の鼓動だった。
リノは、その魔力の意味をより正確に理解していた。彼女はわなわなと震え、顔面を蒼白にさせていた。
「……嘘でしょう」
彼女の声は、かすれていた。
「これは、無からの物質生成……。いえ、違う。低価値の物質と魔素を再構成して、高価値の物質を錬成する……。古代の賢者たちが追い求めた『賢者の石』の理論そのもの。それを、あの人はたった一人でシステムとして構築しようとしている……?」
それは、神の御業だった。錬金術師が、その生涯をかけても到達できない究極の領域。それを、あの怠惰な男はベッドの上で寝転がりながら、鼻歌でも歌うかのように成し遂げようとしている。
「マスター……。あなた、一体、何者なの……」
リノは、もはやレイジを研究対象として見ることをやめていた。その視線には、人知を超えた存在に対する純粋な畏怖だけが宿っていた。
アリアもまた、リノの言葉の断片から、今起きていることの途方もなさを感じ取っていた。
(設計図を示されただけではなかった。あの方は、それを実現するための『手段』すらも、この場で創り出そうとしておられるのか。まるで、天地創造の物語だ……)
彼女たちは、ただ呆然と、家の中で脈動する巨大な魔力を見つめることしかできなかった。
その頃。
全ての元凶である俺は、満足げに頷いていた。
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俺は静かに、しかし確固たる意志で、スキルを発動させた。
体の奥から、今までにないほどの巨大な魔力が奔流となって流れ出していく。
家の裏の空き地で、地面が静かに盛り上がり、巨大な立方体の工場が姿を現し始めた。その傍らでは、土くれが意思を持ったように集まり、次々と建設用ゴーレムの形を成していく。
静かな、しかし確実な、世界の変革が始まった。
俺は、魔力を消費した心地よい疲労感に包まれながら、再びベッドに体を横たえた。
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