「働きたくない…」と本気で祈ったら怠惰の神が降臨。【フルオート】で身の回りを快適にしていたら、インフラを整備した救国の英雄になっていた

夏見ナイ

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第四十二話 水平展開③ 産業振興

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俺の日常に、完璧な静寂が戻ってきた。新しく作った商業都市は俺の予想以上にうまく機能しているらしい。商人たちは皆そちらに移り、村は以前の、いや、以前以上の穏やかさを取り戻していた。

これで俺の怠惰な生活を脅かすものは何もない。俺は心ゆくまで惰眠を貪り、目覚めれば最高の食事を味わい、気が向けば一日中風呂に浸かる。まさに理想郷。完成された世界だ。

……だが、人間とはどこまでも欲深い生き物らしい。

その日、俺はいつものように地下貯蔵庫から自動で運ばれてきた昼食を味わっていた。メニューは、焼きたてのパンと新鮮な野菜のサラダ、そして上質なチーズ。

美味しい。文句のつけようがないほど美味しい。

だが、ふと思ってしまったのだ。

(……何か、物足りない)

パンにはジャムやバターを塗りたい。
サラダにはもっと風味豊かなドレッシングをかけたい。
そして、この極上のチーズには、やはり芳醇なワインが欲しくなる。

俺の食生活のレベルは、既に王侯貴族のそれを凌駕しているだろう。だが、一度贅沢を覚えると人間の欲望には際限がなくなる。より高みを、さらなる快適さを求めてしまうのだ。

ワインは時折、村人からの供物として届けられる。だが、その質はまちまちで量も安定しない。ジャムやバター、ドレッシングの類に至っては、この村では手に入らない代物だ。

商業都市に行けば売っているかもしれない。だが、そのためにわざわざ外出するなど、俺の怠惰の哲学が許さない。

どうすれば、俺はベッドから一歩も動くことなく、これらの食のアップグレードアイテムを手に入れられるのか。

答えは、いつものように一つしかなかった。

(……作ればいい)

そうだ。なければ、作ればいいのだ。この村で。

ジャムも、バターも、ワインも、ドレッシングも。全て、俺の農園で採れる作物を原料にして作ることができるはずだ。

だが、誰が作るのか。俺が? 論外だ。

では、誰に作らせる?

その時、俺の脳裏に村人たちの顔が浮かんだ。

彼らは俺の野菜のおかげで食糧難からは解放された。だが、彼らの生活が根本的に豊かになったわけではない。現金収入を得る手段は、相変わらず限られている。

(……そうだ。あいつらに作らせればいい)

俺が、最高の製品を生み出すための最高の『道具』を設計して提供する。村人たちは、それを使って俺が欲しいものを作る。そして、出来上がった製品の一部を俺に『税』として納める。残りは、彼らが商業都市で売って自分たちの収入にすればいい。

俺は、欲しいものが安定して手に入る。
村人たちは、新たな産業と現金収入を得て豊かになる。

完璧な計画だ。まさにウィンウィンな関係。

俺の、怠惰な食生活の充実という極めて個人的な動機から生まれたこの計画が、この村に産業革命をもたらすことになるとは、俺自身この時はまだ気づいていなかった。

俺は早速、新たな『道具』の設計に取り掛かった。

まず、ワイン。
必要なのは、【全自動ワイン醸造樽】だ。俺の畑で採れた最高品質のブドウを投入口に入れるだけで、あとは全てが自動で行われる。樽の内部で、圧搾、発酵、熟成の全工程を完璧な温度と湿度管理の下で実行。数日で、百年もののヴィンテージワインに匹敵する芳醇なワインを生成する。

次に、ジャム。
【全自動ジャム製造鍋】。イチゴやベリー系の果物を投入すれば、自動で洗浄・選別し、最適な糖度になるよう砂糖(これも魔力で生成)を加え、焦げ付かないようにゆっくりとかき混ぜながら、完璧な粘度のジャムに煮詰めていく。

バターやチーズも同様だ。村で飼われている家畜の乳を使えばいい。
【全自動バターチャーン】と【全自動チーズ熟成庫】。これらがあれば、素人の村人でも王家の食卓に並ぶような最高級の乳製品を、いとも簡単に量産できるだろう。

「……よし。設計完了だ」

俺はこれらの『未来の道具』の設計図を、美しいイラスト付きで数枚の羊皮紙に描き出した。もちろん、羽ペンを動かしたのは俺の思考だけだ。

そして、俺はその羊皮紙を、いつものように玄関の前にそっと置いておいた。

翌朝。

村長のバルガスは、いつものように賢者様への感謝の祈りを捧げるため、レイジの家の前にやってきた。そして、そこに置かれた数枚の羊皮紙に気づいた。

「……む? これは……」

彼は恐る恐るその羊皮紙を手に取った。

そして、そこに描かれた見たこともない機械の精密な設計図と、完成品の美しいイラストを見て息を呑んだ。

「……なんということだ」

バルガスは、震える手で羊皮紙を握りしめた。

賢者様は、全てお見通しだったのだ。

我々が、聖なる恵みをただ消費するだけで新たな価値を生み出せていないことを。このままでは、真の意味で村が自立することはできないということを。

「賢者様は、我々に『道』を示してくださっておられる……!」

バルガスは村の集会所へと駆け込んだ。そして、集まった村人たちの前でその羊皮紙を高々と掲げた。

「見よ! 賢者様が、我々のために新たな『神の道具』の設計図を授けてくださったぞ!」

村人たちは、その羊皮紙に描かれた未来の機械の姿にどよめいた。誰もが、それが村の未来を大きく変えるとてつもないものであることを、直感的に理解した。

「賢者様は、我々にこの村の『特産品』を作れと、そうおっしゃっておられるのだ!」
「この道具さえあれば、我々も胸を張って商業都市の商人たちと取引ができる!」

村人たちの目には、新たな希望の炎が燃え上がっていた。

その日のうちに、村で最も腕利きの鍛冶屋と木工職人が集められ、賢者様の設計図を元にした『神の道具』の製造が開始された。

もちろん、彼らの技術だけでは設計図通りの完璧な性能は再現できない。

だが、俺はそれも計算済みだった。設計図そのものに微弱な魔力を付与しておいたのだ。それを見る者、作る者に、無意識レベルで正しい製造工程をインプ...
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