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第七十七話 垂直展開② 城壁強化
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俺の怒りは、俺のシステムを新たな段階へと進化させた。
今まで俺の創り出したシステム――防衛結界、治水ダム、建設ゴーレム――は、それぞれが独立し、しかし連携して機能する、いわば地方分権型のネットワークだった。
だが、今は違う。
俺の安眠を脅かす明確な『敵』の出現により、俺はその全てを俺という絶対的な中央サーバーに直結させ、一元管理下に置いた。
アルテア王国の東部辺境一帯は今や、俺の思考一つでその形を、その機能を自在に変化させられる巨大な生きた要塞と化していた。
その最初のターゲットは、この村を守る黒曜石の壁、【物理防壁オートウォール】だった。
「……これだけではまだ不十分だな」
俺はベッドの上で、脳内に映し出される壁の設計図を睨んでいた。
高さ五十メートルの物理的な壁。確かにただの軍隊を防ぐには十分すぎる。だが帝国の切り札である戦略級攻撃魔法『神々の鉄槌』。あれは物理的な破壊力だけでなく、概念的な『破壊』の法則をねじ込む厄介な代物だ。ただ硬いだけの壁では、いずれ貫かれる可能性がある。
俺の完璧な安眠のためには、万に一つの不安要素も残してはならない。
俺は壁の強化プランを瞬時に構築した。
第一段階、【自己修復機能(オート・リペア)】の付与。
これはリノが最初に看破した俺の家の防衛術式の応用だ。壁の内部構造に、ナノマシンに近い微細な魔術回路を網目状に張り巡らせる。壁が損傷した場合、その破損箇所を瞬時に検知し、周囲の物質と大気中の魔素を再構成して自動で修復を行う。
これにより壁は、破壊される端から再生し続ける半永久的な不死の城壁と化す。
第二段階、【属性吸収・変換機能】の追加。
敵の攻撃は物理的なものだけではない。炎、氷、雷。様々な属性魔法が使われるだろう。
そこで壁の表面に、あらゆる属性エネルギーを無力化し吸収するための多層の魔法フィルターをコーティングする。
そして吸収したエネルギーは無駄にはしない。それを自己修復機能や後述する迎撃システムを稼働させるための予備電力として蓄積する。敵の攻撃がこちらの城壁をさらに強固にする。まさに究極のリサイクルシステムだ。
そして第三段階、【能動的迎撃魔法陣(アクティブ・カウンター)】の組み込み。
今までの迎撃システムは、受けた攻撃をそのまま跳ね返す受動的なものだった。
だが、それでは生ぬるい。
俺は壁の表面に、新たに数千もの不可視の攻撃用魔法陣を組み込んだ。
それらは普段は休眠状態にある。だが敵の接近を探知し、その種類、数、装備を瞬時に分析。そしてAIが、その状況における最も効率的で最も効果的な迎撃魔法を自動で選択し、発動する。
例えば密集した歩兵部隊には、広範囲を無力化する【重力場(グラビティ・フィールド)】を。
突撃してくる重装騎兵には、その勢いを殺し絡めとる【粘着弾(スティッキー・ショット)】を。
空を飛ぶ魔術師には、自動追尾型の【魔力追尾弾(ホーミング・マナ)】を。
もはやそれはただの壁ではない。
自ら思考し、自ら再生し、そして自ら敵を殲滅する巨大な生きた殺戮兵器。
俺は、その完成された設計に満足し、静かに、そして力強く実行を命じた。
「【絶対防衛要塞システム】、フェーズ2へ移行。オートウォールに全機能を実装せよ」
その瞬間。
村を取り囲む黒曜石の巨大な壁が、一瞬だけ淡い光を放った。
アリアは、その光景を壁の上から目撃していた。
彼女の足元、硬い石畳であるはずの壁の表面を、まるで生き物の血管のように無数の光の筋が走り抜け、そして消えていく。
「……壁が生きている」
彼女の口から畏怖に満ちた呟きが漏れた。
壁そのものが意思を持ち、呼吸を始めたかのような圧倒的な生命感。
ラボではリノが、その魔力の流れを解析し絶叫していた。
「自己修復! 属性変換! 能動的迎撃! 馬鹿な! こんな複雑な概念を、既存の建築物に後付けで、しかも遠隔操作で実装するなど! 物理法則をまるで粘土細工のように!」
彼女は自らの魔法理論が、目の前でいとも容易く覆されていく現実に打ちのめされていた。
俺はベッドの上で、システムのアップデートが完了したことを確認し頷いた。
(よし。これで俺の家の周りは絶対安全圏になった。あの紫色の光がここに届くことはもうないだろう)
俺の目的はあくまで安眠の確保だ。
自分のテリト'リーが安全になればそれでよかった。
だが、俺の創り出したこの『完璧すぎる壁』は、これから始まる戦いの様相を、そしてこの世界の軍事史そのものを根底から塗り替えてしまうことになる。
遥か彼方、帝国の陣地では魔術師長が、ついに『神々の鉄槌』の発動準備が整ったことを皇帝に報告していた。
「陛下! 目標、アルテア東部辺境の座標ロックオン完了! いつでも撃てます!」
「うむ」
皇帝ゲルハルトは玉座から、その忌々しい土地の方角を睨みつけた。
「放て。我が帝国の威光を愚かなる者どもに思い知らせてやれ」
その命令一下、天を突くほどの巨大な魔法陣から、全てを無に帰す禍々しい紫色の光の奔流が解き放たれた。
それは神の怒りか、悪魔の鉄槌か。
アルテア王国の東の空を切り裂き、静かなる聖地へと吸い込まれるように突き進んでいった。
その絶対的な破壊の光を。
俺は脳内の監視モニターで、欠伸をしながら眺めていた。
(……来たか。さてと。お手並み拝見といきますか)
今まで俺の創り出したシステム――防衛結界、治水ダム、建設ゴーレム――は、それぞれが独立し、しかし連携して機能する、いわば地方分権型のネットワークだった。
だが、今は違う。
俺の安眠を脅かす明確な『敵』の出現により、俺はその全てを俺という絶対的な中央サーバーに直結させ、一元管理下に置いた。
アルテア王国の東部辺境一帯は今や、俺の思考一つでその形を、その機能を自在に変化させられる巨大な生きた要塞と化していた。
その最初のターゲットは、この村を守る黒曜石の壁、【物理防壁オートウォール】だった。
「……これだけではまだ不十分だな」
俺はベッドの上で、脳内に映し出される壁の設計図を睨んでいた。
高さ五十メートルの物理的な壁。確かにただの軍隊を防ぐには十分すぎる。だが帝国の切り札である戦略級攻撃魔法『神々の鉄槌』。あれは物理的な破壊力だけでなく、概念的な『破壊』の法則をねじ込む厄介な代物だ。ただ硬いだけの壁では、いずれ貫かれる可能性がある。
俺の完璧な安眠のためには、万に一つの不安要素も残してはならない。
俺は壁の強化プランを瞬時に構築した。
第一段階、【自己修復機能(オート・リペア)】の付与。
これはリノが最初に看破した俺の家の防衛術式の応用だ。壁の内部構造に、ナノマシンに近い微細な魔術回路を網目状に張り巡らせる。壁が損傷した場合、その破損箇所を瞬時に検知し、周囲の物質と大気中の魔素を再構成して自動で修復を行う。
これにより壁は、破壊される端から再生し続ける半永久的な不死の城壁と化す。
第二段階、【属性吸収・変換機能】の追加。
敵の攻撃は物理的なものだけではない。炎、氷、雷。様々な属性魔法が使われるだろう。
そこで壁の表面に、あらゆる属性エネルギーを無力化し吸収するための多層の魔法フィルターをコーティングする。
そして吸収したエネルギーは無駄にはしない。それを自己修復機能や後述する迎撃システムを稼働させるための予備電力として蓄積する。敵の攻撃がこちらの城壁をさらに強固にする。まさに究極のリサイクルシステムだ。
そして第三段階、【能動的迎撃魔法陣(アクティブ・カウンター)】の組み込み。
今までの迎撃システムは、受けた攻撃をそのまま跳ね返す受動的なものだった。
だが、それでは生ぬるい。
俺は壁の表面に、新たに数千もの不可視の攻撃用魔法陣を組み込んだ。
それらは普段は休眠状態にある。だが敵の接近を探知し、その種類、数、装備を瞬時に分析。そしてAIが、その状況における最も効率的で最も効果的な迎撃魔法を自動で選択し、発動する。
例えば密集した歩兵部隊には、広範囲を無力化する【重力場(グラビティ・フィールド)】を。
突撃してくる重装騎兵には、その勢いを殺し絡めとる【粘着弾(スティッキー・ショット)】を。
空を飛ぶ魔術師には、自動追尾型の【魔力追尾弾(ホーミング・マナ)】を。
もはやそれはただの壁ではない。
自ら思考し、自ら再生し、そして自ら敵を殲滅する巨大な生きた殺戮兵器。
俺は、その完成された設計に満足し、静かに、そして力強く実行を命じた。
「【絶対防衛要塞システム】、フェーズ2へ移行。オートウォールに全機能を実装せよ」
その瞬間。
村を取り囲む黒曜石の巨大な壁が、一瞬だけ淡い光を放った。
アリアは、その光景を壁の上から目撃していた。
彼女の足元、硬い石畳であるはずの壁の表面を、まるで生き物の血管のように無数の光の筋が走り抜け、そして消えていく。
「……壁が生きている」
彼女の口から畏怖に満ちた呟きが漏れた。
壁そのものが意思を持ち、呼吸を始めたかのような圧倒的な生命感。
ラボではリノが、その魔力の流れを解析し絶叫していた。
「自己修復! 属性変換! 能動的迎撃! 馬鹿な! こんな複雑な概念を、既存の建築物に後付けで、しかも遠隔操作で実装するなど! 物理法則をまるで粘土細工のように!」
彼女は自らの魔法理論が、目の前でいとも容易く覆されていく現実に打ちのめされていた。
俺はベッドの上で、システムのアップデートが完了したことを確認し頷いた。
(よし。これで俺の家の周りは絶対安全圏になった。あの紫色の光がここに届くことはもうないだろう)
俺の目的はあくまで安眠の確保だ。
自分のテリト'リーが安全になればそれでよかった。
だが、俺の創り出したこの『完璧すぎる壁』は、これから始まる戦いの様相を、そしてこの世界の軍事史そのものを根底から塗り替えてしまうことになる。
遥か彼方、帝国の陣地では魔術師長が、ついに『神々の鉄槌』の発動準備が整ったことを皇帝に報告していた。
「陛下! 目標、アルテア東部辺境の座標ロックオン完了! いつでも撃てます!」
「うむ」
皇帝ゲルハルトは玉座から、その忌々しい土地の方角を睨みつけた。
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その命令一下、天を突くほどの巨大な魔法陣から、全てを無に帰す禍々しい紫色の光の奔流が解き放たれた。
それは神の怒りか、悪魔の鉄槌か。
アルテア王国の東の空を切り裂き、静かなる聖地へと吸い込まれるように突き進んでいった。
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