「働きたくない…」と本気で祈ったら怠惰の神が降臨。【フルオート】で身の回りを快適にしていたら、インフラを整備した救国の英雄になっていた

夏見ナイ

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第七十九話 垂直展開③ ゴーレム軍団

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夜の闇よりなお暗い漆黒の軍団が、大地から溢れ出した。

その数、一万。
月明かりを浴びて、その滑らかな黒曜石のような体がぬらりとした光を放つ。赤い単眼だけが無機質な光を宿し、前方に広がる獲物の群れを静かに捉えていた。

彼らは雄叫びを上げることも、鬨の声をあげることもない。
ただ、絶対的な静寂の中、主の命令を待つ完璧な殺戮機械の群れ。

アリアは壁の上から、その光景に言葉を失っていた。
これが国父様の静かなる怒りの顕現。
神の軍団。

彼女の隣では、いつの間にかラボから出てきていたリノが震える声で呟いていた。
「……すごい。一体一体の魔力効率が、理論上の限界値を突破している。自己修復機能まで搭載されているのか。これは軍隊ではない。一つの意志を持った災害だ」

帝国軍の兵士たちも、その異様な光景に気づいた。
突撃の勢いが鈍る。

「……な、なんだ、あれは」
「魔物か!? 地獄の門が開いたのか!」

彼らの前に現れたのは、剣も槍も持たない獣のような姿をした、謎の黒い軍団。
そのあまりの静けさが、逆に彼らの恐怖を増幅させた。

そして。
俺の最後の命令が下された。

『駆除、開始』

その思考をトリガーに、一万の【イレイザー】が同時に動き出した。

それはもはや進軍ではなかった。
音もなく風のように、闇の中を滑るように疾駆する。
十万の帝国軍が形成する分厚い隊列の隙間を、まるで水が流れるかのように浸透していく。

帝国軍の兵士たちは、何が起きたのか理解できなかった。
気づいた時には漆黒の獣が、すぐ隣を走り抜けていた。
そして次の瞬間には、自分の手にした剣が、鎧が、紙のように切り裂かれていた。

「……え?」

兵士は自分の手元を見た。そこには柄だけになった剣が虚しく握られている。
体の鎧はまるで芸術品のように細かく切り刻まれていたが、その下の肉体には傷一つついていなかった。

キィン! ギャリリッ!

そんな金属が切り裂かれる音だけが、戦場のあちこちで響き渡る。
イレイザーたちは人間には目もくれない。ただ、彼らが持つ『戦う力』の象徴である武具だけを、超振動ブレードで的確に、そして無慈悲に破壊していく。

抵抗しようとした者は、背中の魔力キャノンから放たれる衝撃弾で優しく気絶させられるだけ。

殺意がない。
憎悪もない。
ただ淡々と、そして効率的に敵の戦力を『解体』していく。

その光景は、帝国軍の兵士たちにとって斬り殺されることよりも遥かに恐ろしいものだった。
自分たちは敵としてすら認識されていない。
ただ、駆除されるべき『害虫』として処理されている。
その絶対的な格の違いが、彼らの心を根底からへし折っていった。

「……ひ、ひぃぃぃ」
「戦えるか! こんなものと!」
「化け物だ! こいつらは化け物だ!」

戦意は完全に崩壊した。
兵士たちは武器を捨て、丸裸にされ、赤子のようにその場にへたり込んで泣き叫ぶことしかできなかった。

総司令官ドルガンは、本陣でその地獄絵図を呆然と眺めていた。
彼の自慢の、大陸最強と謳われた軍団が、まるで子供の砂遊びのようにいとも容易く無力化されていく。

彼の隣で副官が震える声で言った。
「……か、閣下。も、もう無理です。我々は勝てませぬ」

ドルガンは何も答えなかった。
彼の脳裏に、あの赤い複眼と『タチサレ』という声が再び蘇っていた。

あの時逃げ出すべきだったのだ。
神の領域に足を踏み入れるべきではなかったのだ。

彼の膝ががくりと折れた。
彼は泥だらけの地面に両手をついた。

百戦錬磨の猛将が、生まれて初めて完全な敗北を認めた瞬間だった。

その一部始終を。
俺はベッドの上で、脳内モニターを通して眺めていた。

(……よしよし。順調に武装解除が進んでいるな。これなら騒音も最小限で済みそうだ)

俺はまるで工場の生産ラインの進捗を確認するかのように、冷静に、そしてどこか退屈そうにその光景を見ていた。

(それにしても一万体は少し多すぎたか。ほとんどの奴らはただうろついているだけで仕事が終わってしまいそうだ。まあ、いい。大は小を兼ねるというからな)

俺は満足げに頷くと、モニターのウィンドウを最小化した。
結果はもう見えている。

あとは彼らが、おとなしく帰ってくれるのを待つだけだ。
そして俺の静かな日常が、完全に戻ってくる。

俺は大きな欠伸を一つすると、再び心地よい眠りの世界へと意識を沈めていった。

神の軍団による、一方的な蹂躙劇。
その総指揮官は、その結末を見届けることすらなくいびきをかいて寝ていた。

これ以上ないほどの、完璧な、そして究極の『舐めプ』だった。
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