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第13話:力の解放
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リリアーナの指先が、銀髪の騎士の額に触れた。
その瞬間、彼女の中で何かが弾けた。
それは意志ではなかった。決意でもなかった。
ただ、堰を切ったように、抑えつけていた力が奔流となって溢れ出したのだ。
「あっ……!」
声にならない悲鳴が喉から漏れる。
全身から、まばゆい銀色の光がほとばしった。それは聖女の奇跡と呼ばれるような穏やかな光ではない。制御を失った激流。全てを飲み込み、焼き尽くさんばかりの暴力的なまでの輝きだった。
リリアーナの体が、内側から引き裂かれるような激痛に襲われる。
魂ごと、ごっそりと何かを吸い上げられていく感覚。自らの生命力が、光となって指先から彼へと注ぎ込まれていく。幼い頃、マリアンヌを傷つけた時とは比べ物にならないほどの、凄まじいエネルギーの流出だった。
視界が白く染まり、意識が明滅する。
怖い。
また間違えてしまうかもしれない。この人を癒やすどころか、命を奪ってしまうかもしれない。
トラウマが冷たい楔となって、思考を縛り付ける。
しかし、指先に伝わる彼の肌の冷たさが、弱々しい呼吸が、リリアーナを現実に引き戻した。
この人は、死にかけている。
私がここでやめれば、この人は確実に死ぬ。
だったら、やるしかない。
リリアーナは奥歯を食いしばり、朦朧とする意識を必死で繋ぎ止めた。
もう自分の命がどうなってもいい。ただ、この人が助かってほしい。
その一心だけが、彼女を支える唯一の柱だった。
彼女から放たれる銀の光は、瀕死の騎士を完全に包み込んだ。
すると、驚くべき変化が起きた。
彼の体を蝕んでいた黒い魔瘴が、光に触れたそばから霧散していく。まるで、闇が光に浄化されるように、シュウシュウと音を立てて消えていくのだ。肌に浮かび上がっていた不気味な黒い痣も、見る見るうちに薄れていった。
何よりの変化は、彼の表情だった。
苦痛に歪んでいた顔が、少しずつ、ほんの少しずつ穏やかになっていく。固く結ばれていた唇が微かに緩み、苦しげだった呼吸も、深く静かなものへと変わっていく。
リリアーナは、その変化を確かに感じ取っていた。
自分の力が、今度こそ、誰かを救っている。
呪いでしかなかったこの力が、初めて、命を繋ぐために使われている。
その事実に、胸の奥から熱いものがこみ上げてきた。
それは喜びとも安堵とも違う、もっと根源的な感情だった。生まれて初めて、自分がこの世界に存在していて良いのだと、許されたような感覚。
どれほどの時間が経っただろう。
やがて、リリアーナの体から溢れ出ていた光が、勢いを失い始めた。彼女の生命力が、限界まで搾り取られたのだ。
視界は完全に白黒になり、耳は何も聞こえない。指先の感覚ももうない。
体から力が抜け、彼女の体はぐらりと傾いだ。
意識が途切れる、その最後の瞬間。
リリアーナの瞳に映ったのは、穏やかな寝息を立てる銀髪の騎士の寝顔だった。
そのあまりの美しさに、彼女は微かに微笑んだ気がした。
そして、彼女の意識は深い闇の中へと、静かに沈んでいった。
開けた森の中に、傷ついた二人が倒れている。ただ、夜の静寂だけが、彼らを包んでいた。
その瞬間、彼女の中で何かが弾けた。
それは意志ではなかった。決意でもなかった。
ただ、堰を切ったように、抑えつけていた力が奔流となって溢れ出したのだ。
「あっ……!」
声にならない悲鳴が喉から漏れる。
全身から、まばゆい銀色の光がほとばしった。それは聖女の奇跡と呼ばれるような穏やかな光ではない。制御を失った激流。全てを飲み込み、焼き尽くさんばかりの暴力的なまでの輝きだった。
リリアーナの体が、内側から引き裂かれるような激痛に襲われる。
魂ごと、ごっそりと何かを吸い上げられていく感覚。自らの生命力が、光となって指先から彼へと注ぎ込まれていく。幼い頃、マリアンヌを傷つけた時とは比べ物にならないほどの、凄まじいエネルギーの流出だった。
視界が白く染まり、意識が明滅する。
怖い。
また間違えてしまうかもしれない。この人を癒やすどころか、命を奪ってしまうかもしれない。
トラウマが冷たい楔となって、思考を縛り付ける。
しかし、指先に伝わる彼の肌の冷たさが、弱々しい呼吸が、リリアーナを現実に引き戻した。
この人は、死にかけている。
私がここでやめれば、この人は確実に死ぬ。
だったら、やるしかない。
リリアーナは奥歯を食いしばり、朦朧とする意識を必死で繋ぎ止めた。
もう自分の命がどうなってもいい。ただ、この人が助かってほしい。
その一心だけが、彼女を支える唯一の柱だった。
彼女から放たれる銀の光は、瀕死の騎士を完全に包み込んだ。
すると、驚くべき変化が起きた。
彼の体を蝕んでいた黒い魔瘴が、光に触れたそばから霧散していく。まるで、闇が光に浄化されるように、シュウシュウと音を立てて消えていくのだ。肌に浮かび上がっていた不気味な黒い痣も、見る見るうちに薄れていった。
何よりの変化は、彼の表情だった。
苦痛に歪んでいた顔が、少しずつ、ほんの少しずつ穏やかになっていく。固く結ばれていた唇が微かに緩み、苦しげだった呼吸も、深く静かなものへと変わっていく。
リリアーナは、その変化を確かに感じ取っていた。
自分の力が、今度こそ、誰かを救っている。
呪いでしかなかったこの力が、初めて、命を繋ぐために使われている。
その事実に、胸の奥から熱いものがこみ上げてきた。
それは喜びとも安堵とも違う、もっと根源的な感情だった。生まれて初めて、自分がこの世界に存在していて良いのだと、許されたような感覚。
どれほどの時間が経っただろう。
やがて、リリアーナの体から溢れ出ていた光が、勢いを失い始めた。彼女の生命力が、限界まで搾り取られたのだ。
視界は完全に白黒になり、耳は何も聞こえない。指先の感覚ももうない。
体から力が抜け、彼女の体はぐらりと傾いだ。
意識が途切れる、その最後の瞬間。
リリアーナの瞳に映ったのは、穏やかな寝息を立てる銀髪の騎士の寝顔だった。
そのあまりの美しさに、彼女は微かに微笑んだ気がした。
そして、彼女の意識は深い闇の中へと、静かに沈んでいった。
開けた森の中に、傷ついた二人が倒れている。ただ、夜の静寂だけが、彼らを包んでいた。
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