Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ

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第13話 オークの襲撃

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森から村へ戻ったアレンの足取りは重かった。【完全蘇生】という現実離れした力が、彼の心に重くのしかかっていた。この力は誰にも話せない。話したところで、信じてもらえるはずもなかった。狂人扱いされるのが関の山だろう。

彼はこの秘密を胸の奥深くにしまい込み、何事もなかったかのように村での生活を始めた。村長であるバルトロの厚意で、今は使われていない小さな納屋を借り受け、そこを寝床とすることになった。

村での日々は、穏やかに過ぎていった。
アレンは村の若者たちに混じり、農作業を手伝った。畑を耕し、水路の補修をする。追放される前なら半日も経たずに音を上げていたであろう肉体労働も、今の彼には心地よい運動にしかならなかった。覚醒した彼の体は、常人を遥かに超える持久力と頑強さを秘めていたのだ。

汗を流して働いた後、村人たちと共に食べる食事は、どんなご馳走よりも美味しかった。そこには罵倒も嘲笑もない。ただ、共に働く仲間としての温かい笑顔と、労いの言葉があるだけだった。

ある日の午後、薪割りを手伝っていた時だった。若い村人の一人が、誤って斧で自分のすねに深い傷を作ってしまった。血が噴き出し、男は苦痛に顔を歪める。

「大丈夫か!」
「すぐに布を!止血しないと!」

周囲が騒然とする中、アレンは冷静にその男のそばに駆け寄った。

「動かないで。今、治します」

彼はそう言うと、傷口にそっと手をかざした。
「《ヒール》」
アレンがそう唱えると、彼の掌から柔らかな緑色の光が溢れ出し、傷口を包み込んだ。それは、彼が使い慣れた唯一の回復魔法。しかし、その効果は以前とは比較にならないほど強力になっていた。

光に照らされた傷口は、まるで早送りの映像を見ているかのように、みるみるうちに塞がっていく。肉が盛り上がり、皮膚が再生し、ほんの十数秒後には、そこには切り傷があったことすら分からないほど綺麗な肌が戻っていた。

「……え?」

怪我をした本人も、周りで見ていた村人たちも、皆が言葉を失ってその光景を見つめていた。

「う、動くぞ……痛く、ない……」

男は恐る恐る自分の足を動かし、その場で軽く飛び跳ねてみせた。傷の痛みも、違和感も全くない。

「す、すげえ……!アレン、お前、そんなにすごいヒーラーだったのか!」
「まるで神殿にいらっしゃる聖女様の奇跡みたいだ……!」

村人たちは興奮した様子でアレンを取り囲み、賞賛の言葉を口にした。アレンは戸惑いながらも、彼らの純粋な感謝の言葉に、胸が温かくなるのを感じた。

(魔力の消耗も、ほとんどない……)

彼は自分の内なる力を感じ取り、改めて自身の変化を実感していた。以前なら、あれだけの傷を癒せばかなりの魔力を消耗したはずだ。しかし今は、ほんの少ししか魔力を使っていない。まるで、彼の魔力総量が巨大な湖になったかのようだった。

追放されたパーティでは「気休めにもならん」と罵られた《ヒール》。その力が今、目の前で人を救い、感謝されている。その事実が、砕け散っていたアレンの自己肯定感を、少しずつ、しかし確実に修復していった。
自分の力は、無駄ではなかったのだと。

そんな穏やかな日々が、突如として引き裂かれたのは、それから数日後のことだった。

昼下がり、村がのどかな午睡に微睡んでいた時。
カン、カン、カン!と、村の入り口にある見張り台から、けたたましい警鐘の音が鳴り響いた。村中の人々が何事かと家の外へ飛び出す。

アレンもバルトロと共に広場へ駆けつけると、見張り台の上から、血相を変えた若者が叫んでいた。

「オークだ!オークの群れがこっちに来る!」

その言葉に、村の空気が凍りついた。

「数は!?」
バルトロが厳しい声で問い返す。
「見えただけでも……二十は超えてる!リーダー格の、デカいのも混じってる!」

絶望的な報告だった。このクレリア村には、まともな戦士などいない。いるのは農夫と、引退した老兵が数人だけ。屈強なオークの群れに襲われれば、村が蹂躙されるのに時間はかからないだろう。

「女子供は、村の中央の教会へ!男は武器を持て!何でもいい、鍬でも鎌でも構わん!村の入り口で迎え撃つぞ!」

バルトロの檄が飛ぶ。村は一瞬にしてパニックに陥った。泣き叫ぶ子供を抱えて走る母親。物置から錆びた剣や槍を引っ張り出してくる男たち。誰もが恐怖に顔を引きつらせながらも、必死に自分たちの家を守ろうとしていた。

アレンも、その混乱の渦の中にいた。
彼の脳裏に、かつてガリウスたちと共に戦ったオークたちの姿が蘇る。あの強靭な肉体と、容赦のない暴力。Sランクパーティですら、慎重に戦うべき相手だ。村人たちだけで敵うはずがない。

(逃げるか……?)

一瞬、そんな考えが頭をよぎった。自分一人なら、この混乱に乗じて森へ逃げ込むこともできるだろう。
だが、彼はすぐにその考えを振り払った。
自分の後ろには、自分を温かく迎え入れてくれた村人たちがいる。バルトロの優しい笑顔がある。この数日間で、この村はアレンにとって、命に代えても守りたい『故郷』になっていた。

(戦う力は、俺にはない。でも……)

アレンは拳を強く握りしめた。

(俺にしか、できないことがあるはずだ!)

彼は決意を固め、教会へと走った。
「バルトロさん!負傷者は教会の前に運んでください!俺が全員、治療します!」

その力強い言葉に、不安に震えていた村人たちの視線が一斉にアレンへと集まる。バルトロはアレンの覚悟に満ちた目を見ると、力強く頷いた。

「……頼んだぞ、アレン!」

やがて、地響きと共に、オークの群れの雄叫びが村に迫ってきた。緑色の醜悪な巨体、血走った目、手にした巨大な棍棒。それは、悪夢そのものだった。
村の男たちが入り口に築いた粗末なバリケードの前で、死を覚悟した抵抗を始める。

すぐに、最初の負傷者が出た。
オークの棍棒に腕を砕かれた男が、仲間にかつがれて教会の前へと運び込まれる。

「アレン!頼む!」
「任せてください!」

アレンは即座に駆け寄り、砕かれた腕に手をかざす。
「《ヒール》!」
強力な治癒の光が、骨を繋ぎ、肉を再生させる。男は苦悶の表情から一転、驚愕の顔で自分の腕を見つめた。

「な、治った……?」
「休んでいる暇はありません!まだ戦えるなら、前に!」

次から次へと、負傷者が運び込まれてくる。肩を斬られた者、足から血を流す者、頭を打って意識が朦朧としている者。
アレンは休むことなく、その一人一人に回復魔法をかけていった。彼の掌から放たれる緑の光は、まるで尽きることのない泉のように、絶え間なく溢れ出し続けた。

その姿は、かつてパーティで役立たずと罵られていた無力なヒーラーではなかった。
絶望的な戦場で、仲間たちの命を繋ぎとめる、唯一無二の生命線。
アレンは歯を食いしばり、必死に仲間たちを癒し続ける。しかし、戦況は悪化の一途を辿っていた。オークの数はあまりにも多く、村人たちの抵抗も限界に近づいていた。バリケードが、少しずつ破壊されていく音が、すぐそこまで迫っていた。
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