Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ

文字の大きさ
14 / 98

第14話 エルフの少女

しおりを挟む
村の入り口で繰り広げられる攻防は、熾烈を極めていた。数に勝るオークの猛攻に、村人たちの築いた貧弱なバリケードは、もはや崩壊寸前だった。男たちの怒号と、オークの野蛮な雄叫び、そして金属と木がぶつかり合う鈍い音が、村中に響き渡っている。

アレンは教会の前で、次々と運び込まれてくる負傷者たちを必死に治療し続けていた。彼の治癒魔法はまさに奇跡的で、どれほど深い傷を負った者でも、数秒後には再び武器を手に前線へ復帰していく。アレン一人の存在が、この絶望的な戦況をかろうじて支えていた。

しかし、彼の顔色は次第に悪くなっていた。魔力はまだ余裕がある。だが、精神的な消耗が激しかった。目の前で仲間たちが傷つき、血を流す光景を見続けるのは、彼の心を容赦なくすり減らしていく。

(このままじゃ、ジリ貧だ……!)

いくら負傷者を治療しても、オークの数は減らない。村人たちの体力も、無限ではない。この戦いが長引けば、いずれ限界が訪れるのは目に見えていた。

その時だった。
村の脇にある森の中から、何かが飛び出してくるのが見えた。
それは、二人の大人と、一人の子供だった。尖った耳、しなやかな体躯。森の民、エルフだ。彼らはボロボロの衣服を身につけ、その顔には恐怖と疲労の色が濃く浮かんでいた。

「誰か!助けて!」

先頭を走っていた男性のエルフが、悲痛な叫び声を上げた。
彼らの背後から、森の木々を薙ぎ倒しながら、一体の巨大なオークが姿を現した。それは、これまで村を襲っていたオークたちよりも遥かに大きく、その肌は傷だらけで、片目には深い刀傷が走っている。手にした棍棒には、禍々しい文様が刻まれていた。
あれが、この群れのリーダー、オーク・ジェネラルだ。

「グルオオオオ!」

オーク・ジェネラルは咆哮を上げ、逃げるエルフたちに狙いを定めて棍棒を振りかぶった。
村人たちもその危機に気づき、何人かが助けようと駆け出す。だが、間に合わない。

「お父さん!お母さん!」

エルフの少女が、恐怖に引きつった声で叫んだ。
彼女の両親であろう男女のエルフは、咄嗟に少女を庇うようにして、その前に立ちはだかった。自分たちの命を盾にして、娘を守ろうとしたのだ。

その光景が、アレンの目に焼き付いた。
それは、ほんの一瞬の出来事だった。

振り下ろされた棍棒が、まず男性のエルフの頭を叩き潰した。次に、その勢いのまま、隣にいた女性エルフの体を薙ぎ払う。二人は悲鳴を上げる間もなく、くしゃりと音を立てて地面に崩れ落ちた。

血飛沫が舞い、まだ温かい肉片が、呆然と立ち尽くす少女の頬を汚した。

「――あ」

少女の口から、声にならない声が漏れた。
彼女の大きく見開かれた翠色の瞳が、すぐ目の前で肉塊と化した両親の姿を映している。信じられない、という表情。理解が、追いついていない。

村の誰もが、そのあまりにも惨たらしい光景に息を呑んだ。
アレンも、その場で凍りついていた。人の死。それも、子供の目の前で、両親が無残に殺される瞬間を、彼は初めて目の当たりにした。胃の腑から、冷たいものがせり上がってくる。

「……あ……ああ……」

少女の震える唇から、ようやく嗚咽が漏れ始めた。彼女は崩れ落ちた両親の亡骸に駆け寄ろうとするが、恐怖で足が動かない。ただ、その場にへたり込み、小さな体を震わせるだけだった。

「グルル……」

オーク・ジェネラルは、エルフの少女を一瞥すると、興味を失ったかのように鼻を鳴らした。そして、その血走った目を、村人たちの方へと向ける。邪魔者を排除し、いよいよ本格的な蹂躙を始めようとしていた。

バリケードを突破した他のオークたちも、リーダーの後に続こうと村の中へなだれ込んでくる。
もはや、これまでだった。村人たちの顔に、絶望の色が浮かぶ。

「いや……いやぁ……」

少女のしゃくり上げる声が、戦場の喧騒の中で、やけにクリアにアレンの耳に届いた。
その声が、アレンの中の何かを激しく揺さぶった。

(助けられなかった……)

目の前で、命が失われた。自分には、それを救う力があったかもしれないのに。もし、自分がもっと早く気づいていれば。もし、自分に攻撃魔法の一つでも使えれば。
後悔と無力感が、嵐のように彼の心を荒れ狂わせる。

(もう、誰も死なせたくない)
(あの子を、一人にしたくない)

強い思いが、彼の魂の奥底から湧き上がってきた。
それは、かつてパーティを追放された時の絶望とは全く違う、誰かを守りたいという、熱く、そして純粋な願いだった。

アレンの脳裏に、あのスキルが浮かび上がった。
【完全蘇生】
禁忌の力。人前で使えば、何が起こるか分からない。異端者として、化物として、この村からさえも追われることになるかもしれない。
だが。

アレンは、泣きじゃくるエルフの少女を見つめた。
彼女の孤独と絶望が、痛いほど伝わってくる。その姿が、かつて全てを失った自分と重なった。

(もし、あの時の俺に、こんな力があったなら)

もし、両親が死んだ時にこの力があったなら。
もし、パーティにいた頃にこの力があったなら。

もう、後悔はしたくない。

目の前で悲しみに暮れる、たった一人の少女。
彼女を救えるのは、世界中で自分しかいない。

アレンの中で、覚悟が決まった。
たとえ、この力が世界からどれだけ疎まれようとも。たとえ、自分が人ならざる者と蔑まれようとも。
今、この瞬間、この力を使うべきだ。

彼は、ゆっくりと立ち上がった。その瞳には、先程までの怯えや戸惑いはなく、鋼のような強い意志の光が宿っていた。
彼はオーク・ジェネラルと、泣き崩れる少女の間に割って入るように、一歩、また一歩と足を踏み出した。
村人たちが、アレンの常軌を逸した行動に息を呑む。

「アレン!?何を!?」
バルトロの制止の声が飛ぶ。

だが、アレンは止まらない。
彼は、自分の人生を懸けた、最大の賭けに出ようとしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

処理中です...