Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ

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第27話 利害の一致

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カイが森の闇に消えた後、戦いの興奮が冷めやらぬ森には、アレンとソフィア、そして十数人の暗殺者の死体だけが残された。血の匂いが鼻をつき、気味の悪い静けさが二人を包む。

「……さて、どうする」
ソフィアが、忌々しげに死体を蹴飛ばしながら言った。
「こいつらをこのままにしておくわけにもいかない。ギルドに報告するか?」

「いや、それは得策じゃない」
アレンは即座に否定した。
「ギルドに報告すれば、あんたが『蛇の手』に狙われていることが公になる。そうなれば、街中であんたを狙う賞金稼ぎや、バルドルに恩を売りたい連中が現れないとも限らない」

「……それもそうか。面倒なことになるのはごめんだ」
ソフィアは腕を組み、唸った。
「だが、このまま放置すれば、死体遺棄の罪に問われる可能性もあるぞ」

「だから、情報を得る」
アレンはそう言うと、屈み込んで暗殺者の一人の懐を探り始めた。ソフィアも、アレンの意図を察して、別の死体を調べ始める。

「何かアジトに繋がるものがあれば、俺たちで直接叩く。そうすれば、これは正当防衛として処理できる」

「無茶を言う。アジトの場所が、そう簡単に見つかるものか」
ソフィアはぼやきながらも、手際よく死体の装備を剥いでいく。騎士団にいた頃の経験が、こういう場面で役立っていた。

しばらく調べてみたが、暗殺者たちはほとんど私物を持っていなかった。武器と、数種類の毒薬、そしてわずかな金貨。組織に関する書類や手紙の類は一切ない。用意周到な連中だった。

「だめだ、何もない」
ソフィアが諦めかけた、その時だった。
「……これは」
アレンが、一人の暗殺者が腰につけていた小さな革袋を手に取り、その中身を手のひらに広げた。中に入っていたのは、奇妙な色をした錠剤だった。

「回復薬か?いや、色が違うな」
ソフィアが覗き込む。
「おそらく、任務中に体力を維持するための特殊な強壮剤だ。だが、問題はそこじゃない」

アレンは錠剤を指で砕き、その匂いを嗅いだ。
「この匂い……微かに、鉄と硫黄の匂いが混じっている。これは、特定の鉱山地帯でしか採れない薬草を混ぜている証拠だ。それも、もう何年も前に閉鎖されたはずの鉱山の……」

ヒーラーとしての豊富な薬草知識が、思わぬ手がかりを掴ませた。

「それに、こいつらのブーツを見てくれ」
アレンは暗殺者の足元を指さした。
「靴底に、赤黒い泥が付着している。この辺りの森の土じゃない。鉄分を多く含んだ、鉱山特有の土だ」

「……なるほどな」
ソフィアも感心したように頷いた。
「薬草と土。アジトは、この近くの廃坑のどこか、ということか。だが、この辺りには廃坑がいくつもある。どこか一つに絞り込むのは……」

その時、二人の背後にある木の影から、静かな声がした。
「……黒鉄廃坑だ」

「!?」
ソフィアは驚いて振り返り、剣に手をかけた。そこに立っていたのは、去ったはずのカイだった。彼は、まるで最初からそこにいたかのように、音もなく姿を現した。

「あんた、まだいたのか」
ソフィアが、警戒を解かずに睨みつける。
カイは彼女の敵意を意にも介さず、アレンが示した赤黒い土を一瞥した。

「その土は、黒鉄廃坑の奥でしか採れない。あそこは昔、迷宮のように入り組んだ構造から『蟻の巣』と呼ばれていた。隠れ家にするには、うってつけの場所だ」

彼は、物陰からずっと二人の様子を窺っていたのだ。アレンの洞察力と、ソフィアの冷静な判断力。それらを値踏みするように。

「なぜ、戻ってきた?」
アレンが静かに尋ねた。
カイは少しの間黙り込んだ後、視線を逸らしながら、ぽつりと答えた。

「……一人でアジトに乗り込んでも、返り討ちに遭うだけだ。それは、分かっている」

彼の声には、先程までの頑なさはなく、わずかながら葛藤が滲んでいた。アレンの最後の言葉が、彼の心を揺さぶり続けていたのだ。

「あんたの言う通り、利害は一致している。……アジトを潰すまでだ。一時的に、手を組んでやる」

それは、彼のプライドが許す、最大限の歩み寄りだった。

ソフィアはまだ不満そうだったが、アレンは穏やかに頷いた。
「ああ、助かる。よろしく頼む、カイ」

「馴れ合うな」
カイはそう吐き捨てると、すぐに背を向けた。
「行くぞ。奴らが仲間が戻らないことに気づく前に、奇襲をかける」

三人の間に、奇妙な共闘関係が成立した。
カイの先導で、彼らは黒鉄廃坑へと向かった。カイの斥候としての能力は、驚異的だった。彼は獣のような鋭い五感で周囲の気配を探り、森に仕掛けられた見張りの罠をいとも簡単に見破っていく。

「……すごいな、あんた」
道中、ソフィアが思わず感嘆の声を漏らした。
「騎士団の斥候兵でも、ここまで優れた奴はそうはいない」

「……当然だ」
カイは短く答えるだけだったが、その横顔は少しだけ誇らしげに見えた。

アレンは、二人の後ろを歩きながら、静かに微笑んでいた。
誇りを失った女騎士。
復讐に生きる獣人。
そして、禁忌の力を秘めた元無能ヒーラー。
いびつで、不格好で、それぞれが深い傷を負っている。だが、不思議と悪い気はしなかった。

(これが、俺のパーティの始まりか)

それは、かつて所属していた栄光のSランクパーティとは似ても似つかない、影の中から生まれたようなパーティだった。
だが、そこには偽りのない目的と、互いの実力を認め合う、確かな信頼関係の兆しがあった。
三人の影が、月明かりに照らされた森の中を、一つの目的に向かって進んでいく。
彼らの戦いは、まだ始まったばかりだった。
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