Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ

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第30話 黎明の翼、結成

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黒鉄廃坑からアークライトの街へと戻る三人の足取りは、来た時とは打って変わって軽やかだった。朝日を浴びながら街道を歩く彼らの間には、まだぎこちなさはあるものの、確かな一体感が生まれ始めていた。

「それで、これからどうするんだ?手に入れた証拠を、すぐに騎士団に突き出すのか?」
ソフィアが、少し逸る気持ちを抑えながら尋ねた。長年の無念を晴らす機会が、すぐそこまで来ているのだ。
「いや、まだだ」
アレンは冷静に首を振った。
「バルドルは公爵家の嫡男。これだけの証拠があっても、奴の権力をもってすれば、握り潰される可能性が高い。それに、奴の背後には『蛇の手』という巨大な組織がいる。下手に動けば、俺たちが消されるだけだ」

「じゃあ、どうするんだよ。このまま証拠を懐に入れて、指をくわえて見てろってのか?」
ソフィ-アが不満げに言う。

「もっと確実な証拠と、そして、俺たち自身の『力』が必要だ」
アレンはきっぱりと言った。
「俺たちが、王都の誰もが無視できないほどの実績と名声を手に入れる。その上で、この証拠を然るべき場所に、最も効果的なタイミングで叩きつけるんだ。そうすれば、いかに公爵家とて、醜聞を隠し通すことはできなくなる」

それは、遠大だが、最も確実な計画だった。ソフィアも、アレンの言うことが正しいと理解し、ぐっと言葉を呑んだ。

「そのためにも、まずは俺たちの地盤を固める必要がある」
アレンはそう言うと、二人に改めて向き直った。
「ソフィア、カイ。俺たちは今日から、正式なパーティだ。異論はないな?」

ソフィアは、ふんと鼻を鳴らした。
「あんたがリーダーなら、まあ、文句はない。昨日の模擬戦と、さっきの指揮は見事だった」
カイは、無言でこくりと頷いた。それが、彼の肯定の返事だった。

「よし、決まりだな。なら、ギルドに戻って、正式にパーティ登録をしよう。そのためには、パーティ名が必要だ」

「パーティ名……?」
ソフィアとカイは、顔を見合わせた。そんなことは、全く考えていなかったらしい。

「何かいい案はあるか?」
アレンが尋ねると、ソフィアは少し考え込んだ後、自信満々に言った。
「うむ、そうだな……俺の剣技にちなんで、『紅蓮の剣』というのはどうだ!強そうだろ!」
「……安直だな」
カイが、ぼそりと呟いた。
「なんだと!?」
ソフィアがカイに掴みかかろうとするのを、アレンは苦笑しながら制した。

「じゃあ、カイはどうだ?」
「……『黒豹の牙』」
「それも安直じゃないか!」
今度はソフィアが言い返す。

三人は、ああでもないこうでもないと、子供の喧嘩のように言い合いを始めた。その光景は、数時間前まで死線を共に戦ったとは思えないほど、和やかなものだった。
アレンは、そんな二人を見て、心からおかしいと思った。そして、自然と一つの名前が彼の口からこぼれ出た。

「……【黎明の翼】」

その言葉に、二人の言い争いがぴたりと止まった。

「黎明の……翼?」
ソフィアが、その言葉を繰り返す。

「ああ」
アレンは、東の空から昇る太陽を見つめながら、静かに言った。
「俺たちは、皆、暗い夜の中にいた。絶望し、傷つき、未来を見失っていた。だが、俺たちは出会った。そして、これから共に、新しい朝に向かって飛び立とうとしている」

彼は、ソフィアとカイの顔を順に見た。
「夜明けを告げ、希望へと羽ばたく翼。そんなパーティに、俺はしたい」

その言葉には、アレンの強い願いと決意が込められていた。
ソフィアは、何も言わなかった。ただ、じっとアレンの顔を見つめ、やがて、ふっと顔を背けて呟いた。
「……まあ、悪くない。あんたにしては、詩人みたいなことを言うじゃないか」
その横顔は、少しだけ赤らんでいるように見えた。

カイも、静かに頷いた。
「……いい名前だ」

こうして、彼らのパーティ名は【黎-明の翼】に決まった。

アークライトの街に戻った三人は、まっすぐ冒険者ギルドへと向かった。
カウンターにいたのは、またしてもあの栗色の髪の女性職員だった。彼女は、アレンが昨日までとは全く違う雰囲気の二人を連れていることに驚きながらも、事務的に手続きを進めた。

「パーティ名、【黎明の翼】。リーダーは、アレン様。メンバーは、ソフィア様とカイ様。……以上で、登録を完了いたしました」

職員が、真新しいギルドカードを三枚、カウンターに並べた。そこには、夜明けの空を飛ぶ一対の翼を模した、美しい紋章が刻まれている。

その時、ギルドの中にいた冒険者たちが、彼らの様子に気づき、ひそひそと噂を始めた。
「おい、見ろよ。あのアレンが、本当にパーティを組んだぞ」
「メンバーは……あの酒浸りの元騎士と、素性の知れない獣人かよ。落ちこぼれの寄せ集めだな」
「どうせ、すぐに解散するに決まってるさ。ヒーラーがリーダーのパーティなんて、聞いたこともねえ」

嘲笑が、三人の背中に突き刺さる。
ソフィアは、怒りで眉を吊り上げ、何か言い返そうとした。
だが、アレンはそれを手で制した。

「行こう」
彼は、周囲の雑音などまるで聞こえていないかのように、静かに言った。
「俺たちの実力は、言葉じゃなく、結果で示せばいい」

その堂々とした態度に、ソフィアもカイも、何も言わずに頷いた。
三人は、まだ自分たちを笑い者にする冒険者たちに背を向け、ギルドの扉へと向かった。

外に出ると、真昼の太陽が彼らを眩しく照らし出した。
アレンは、空を見上げた。
そこには、どこまでも続く青い空が広がっている。

「さて、と」
彼は、隣に立つ二人の仲間に向かって、にっこりと笑いかけた。
「俺たちの伝説は、ここから始まる」

心に傷を負ったヒーラー、アレン。
誇りを失った女騎士、ソフィア。
復讐を誓う獣人、カイ。
そして、遠い故郷の村で彼らを待つ、エルフの少女、リーナ。

寄せ集めの、訳ありのパーティ、【黎明の翼】。
彼らがこれから、大陸の歴史にその名を刻む伝説のパーティとなることを、今はまだ誰も知らない。
ただ、確かなことは、彼らの翼は、今、確かに風を掴み、大空へと羽ばたき始めたということだけだった。

(第一章 完)
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