「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ

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第49話:決意

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宰相ヴァルザーの恐るべき陰謀の全貌を知り、俺たちは言葉を失った。
敵は、一国の宰相であり、魔族を裏で操る黒幕。
あまりにも巨大で、あまりにも邪悪な相手。
辺境の村に住む俺たちが、どうこうできる問題ではない。それが、普通の判断だろう。
逃げるべきか。あるいは、見て見ぬふりをして、この村で息を潜めて暮らすか。
そんな選択肢が、俺の頭をよぎった。

だが、それはすぐに打ち消された。
ヴァルザーは、俺の力の危険性に気づいている。俺が存在する限り、彼は必ず次の手を打ってくるだろう。
俺たちが望むと望まざるとにかかわらず、戦いの渦中からは、もう逃れられないのだ。
そして、何よりも。
このままヴァルザーの好きにさせておけば、この国は、そしてこの村は、いずれ彼の歪んだ野望の犠牲になる。
俺がようやく見つけた、この温かい居場所が、失われてしまう。
それだけは、絶対に許せなかった。

「……やるしかない、か」
フレアが、俺の言葉を繰り返した。彼女は、ウォーハンマーの柄を強く握りしめていた。その瞳には、恐怖ではなく、むしろ強大な敵に対する闘志が燃え上がっている。
「面白えじゃねえか。相手が国のてっぺんの野郎だろうが、魔族だろうが、関係ねえ。あたしたちの邪魔をするってんなら、その自慢の頭蓋骨を、あたしの鎚でカチ割ってやるだけだ!」
その言葉は、いかにも彼女らしかった。どこまでも単純で、力強く、そして頼もしい。

「わたくしも、同感ですわ」
リリアも、静かだが揺るぎない声で言った。
「ヴァルザーという男は、多くの命を弄び、この国の平和を乱す元凶です。森の守り手として、そして、この村の仲間として、彼のような存在を許しておくわけにはいきません」
彼女の瞳には、慈愛だけでなく、邪悪を許さないという、強い意志の光が宿っていた。

二人の仲間が、俺と同じ覚悟を決めてくれている。
その事実が、俺の心を強く支えてくれた。
俺は、もう一人じゃない。

「だが、どうする? このまま、ここで次の刺客を待ち続けるのか?」
俺は、二人に問いかけた。
それは、あまりにも受け身すぎる。いずれ、じり貧になるのは目に見えていた。
「いいや、違う」
俺は、自らの問いに、自分で答えた。
「守っているだけでは、何も変わらない。俺たちの平穏は、永遠に脅かされ続けるだけだ。だから……」
俺は、立ち上がった。そして、羊皮紙の上に広げられた、古びた王国の地図を指差した。
その指が示した場所は、一つ。
王都、アヴァロン。

「こっちから、行くんだ」

その言葉に、リリアとフレアは息を呑んだ。
「王都へ……ですって?」
「ああ。敵の本拠地に、乗り込むんだ」
それは、あまりにも大胆で、無謀な提案だった。
王都は、ヴァルザーの庭だ。衛兵も、騎士団も、貴族たちも、その多くが彼の影響下にあるだろう。そんな場所に、たった三人で乗り込むなど、自殺行為に等しい。

「正気かい、アッシュ?」
フレアが、さすがに呆れたような顔で言った。
「あたしたちが王都に行ったところで、何ができるってんだい? 宰相閣下にお目通り願う前に、反逆者として捕まって、おしまいだぜ」
「だから、正面から行くわけじゃない」
俺は、地図の上で指を滑らせた。
「キリたちの話によれば、ヴァルザーに不満を持つ者たちも、少なくないはずだ。騎士団の中にも、貴族の中にも。そういう連中と、接触する」

俺の頭の中では、既におぼろげな作戦が形作られつつあった。
「ヴァルザーの陰謀を暴き、その罪を白日の下に晒すんだ。そのためには、決定的な証拠と、俺たちに協力してくれる味方が必要だ。それを、王都で見つけ出す」
「……そんなに、うまくいくのかい?」
「分からない。だが、やってみる価値はある」
俺は、確信を持って言った。
「俺には、お前たちがいる。リリアの知恵と、フレアの技術。そして、俺の『幸運』があれば、どんな不可能も、可能に変えられるはずだ」

その言葉は、何の根拠もない、ただの精神論だったかもしれない。
だが、俺たち三人は、これまでの戦いの中で、それを何度も証明してきた。
絶望的な状況を、ありえない奇跡で覆してきた。
俺の言葉に、フレアの顔から、呆れの色が消えていった。代わりに、いつもの獰猛な笑みが浮かんでくる。
「……へっ。なるほどな。敵の本拠地に乗り込んで、大将の首を獲るってかい。あたしは、そういう馬鹿げた賭け、嫌いじゃねえぜ!」

リリアも、不安そうな表情から、決意を固めた凛とした顔つきに変わっていた。
「分かりました、アッシュ様。どこまでも、お供いたします。あなたのその『幸運』が、この国の運命さえも、きっと良い方向へ導いてくれると、わたくしは信じていますわ」

こうして、俺たちの次なる方針は決まった。
受動的な防衛から、能動的な攻撃へ。
このアルカディア村の平穏を、そしてこの国の未来を脅かす元凶、宰相ヴァルザーを討つために、俺たちは敵の本拠地である王都へと、旅立つことを決意したのだ。

それは、これまでのどんな戦いよりも、危険で、困難な道のりになるだろう。
だが、俺の心に、迷いはなかった。
追放され、全てを失ったと思っていた俺に、守るべきものができた。
戦うべき理由ができた。
それだけで、人はどこまでも強くなれる。

俺は、窓の外に広がる、穏やかな村の景色を見つめた。
畑で働く老人たち。井戸端で笑い合う女性たち。元気に駆け回る子供たち。
「……必ず、戻ってくる」
俺は、心の中で、強く誓った。
この愛すべき日常を、俺たちの手で、必ず取り戻すのだと。
俺の、そして仲間たちの、本当の戦いが、今、始まろうとしていた。
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