地球育ちの俺、銀河帝国では『伝説の古代種族』らしい。~拾われた宇宙船で無自覚に無双してたら、皇女様に求婚されました~

夏見ナイ

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第6話

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大和が「伝説の古代種族『テラノイド』」ではないかと噂され始めてから、船内での彼の扱いは劇的に、そして奇妙な方向に変わった。
誰もが大和に敬意を払うようになったのだが、それは同時に極度の緊張と恐怖を伴うものだった。すれ違う船員は、まるで爆弾に触れるかのようにサッと道を開け、最敬礼してくる。食堂で食事をすれば、周囲の席はいつの間にか無人になっていた。

「(俺、何かしたかな……)」

完全に孤立していた。備品を壊し、廊下で騒ぎを起こしたのだから当然かもしれないと、大和はひたすら肩身の狭い思いで船内生活を送っていた。

そんなある日、船内が妙に華やいだ雰囲気に包まれていることに、大和は気づいた。船員たちの会話の端々から、特別な賓客がこの船に乗っているという情報が漏れ聞こえてくる。

その賓客とは、アストレア銀河帝国の至宝、皇帝陛下の愛娘である皇女エリアーナ・フォン・アストレア。生まれつき病弱な彼女が、療養のために訪れていた辺境の惑星からの帰路、この船に乗り合わせているのだという。

「皇女様か……。すごい人が乗ってるんだな」

自分とは無縁の世界の話だ。大和はそう思いながら、気分転換のために許可された区画を散策していた。その時だった。

前方の豪華な装飾が施された扉の前で、数名の整備兵たちが何やら騒いでいる。赤いランプが点滅し、穏やかならぬ雰囲気が漂っていた。

「くそっ、電子ロックが完全に沈黙してる!」
「緊急用の手動ハッチはどうだ!?」
「ダメです! 固着していて、パワーレンチを使ってもピクリともしません!」

どうやら、誰かが部屋に閉じ込められてしまったらしい。野次馬をする趣味はなかったが、困っているなら見過ごせない。大和はそろりと彼らに近づいた。

「あの、どうしたんですか?」

大和の声に、整備兵たちがびくりと肩を震わせ、一斉に振り返った。その顔には「よりにもよって、このお方がなぜここに」と書いてある。

「ヤ、ヤマト様! これは、その、大したことでは!」
「皇女殿下の私室の扉が故障しまして……。ですが、我々で対処いたしますので!」

必死に取り繕う整備兵たち。だが、彼らの額に浮かぶ汗が、事態の深刻さを物語っていた。閉じ込められているのは、他ならぬ皇女殿下なのだ。

大和は扉に埋め込まれた、分厚い円形のハンドルに目をやった。地球の基準で言えば、銀行の金庫室にあるような、いかにも頑丈そうなロックだ。

「ちょっと、見せてもらってもいいですか?」
「えっ、しかし、このような粗相をヤマト様のお目に……」
「いいから、いいから」

大和は制止を振り切り、その巨大な金属製のハンドルに手をかけた。ひんやりとした感触。整備兵がパワーレンチを使っても動かなかったというのだから、相当固いのだろう。

(まあ、テコの原理って言うしな)

地球での日曜大工の経験則が、頭をもたげる。固着したネジは、一気に力を加えるのがコツだ。

「よっと」

本当に、その程度の軽い掛け声だった。
大和は、瓶のジャムの蓋を開けるくらいの感覚で、ハンドルをぐいっとひねった。

ギギギギギッ!

金属が断末魔のような悲鳴を上げた。次の瞬間、バキッ!という轟音と共に、ハンドルの根元から極太のロックボルトが捻じ切れる。
呆気なく安全装置が外れた手動ハッチが、重々しい音を立てて内側にゆっくりと開いた。

静寂。
整備兵たちは、ねじ切れて床に転がったロックボルトの残骸と、大和の顔を、まるで信じられないものを見るかのように交互に見ている。

そして、開いた扉の向こう側。
そこには、心配そうに眉を寄せる侍女と、透き通るような白い肌に淡い金色の髪を持つ、息を呑むほど美しい少女が立っていた。彼女が、皇女エリアーナだった。

エリアーナは、目の前で起きた物理法則を無視したような現象を、ただ呆然と見つめていた。そして、その視線は、何事もなかったかのように「あ、開きましたね」と屈託なく笑う、一人の男の姿に釘付けになる。

その力強い佇まいと、優しい眼差し。
彼女の心に、これまで感じたことのない温かな光が灯った瞬間だった。
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