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第7話
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皇女エリアーナの私室の扉を〝こじ開けて〟以来、大和を取り巻く環境は、さらに奇妙なものへと変化していた。
以前の恐怖と緊張に満ちた敬意は薄れ、代わりに、まるで伝説の英雄に接するかのような、熱っぽい憧れの視線を感じるようになった。特に、皇女エリアーナとその侍女たちは、廊下で会うたびに頬を染め、深々と頭を下げてくる。
「(扉の一つや二つ、男手があれば開くだろうに……。この船の人たちは、本当に力が弱いんだな)」
大和はそんな風に、あくまで好意的に解釈していた。彼らにとって、鋼鉄のロックボルトを指で捻じ切ることがどれだけ異常な事態かなど、想像も及ばない。
そんな、どこか噛み合わないながらも平穏な日々は、突如として引き裂かれた。
『警報! 警報! 未確認艦艇、急速接近中! 全員、第一種戦闘態勢に移行せよ!』
けたたましいアラーム音と、冷静さを失った合成音声が、船内の隅々まで響き渡った。穏やかだった照明は赤く点滅し、平和な日常が一瞬にして非日常へと塗り替えられる。
「な、なんだ!?」
自室で読書をしていた(帝国語の勉強を兼ねていた)大和は、突然の事態に飛び上がった。廊下に出ると、船員たちが慌ただしく走り回っている。その顔には、これまで見たこともない恐怖と焦りの色が浮かんでいた。
艦橋では、既に絶望的な状況がスクリーンに映し出されていた。
無骨で獰猛なデザインの、明らかに戦闘目的で建造された黒鉄の船。髑髏を模したエンブレムが、その所属を雄弁に物語っていた。
「海賊だと!? なぜこんな航路に!」
艦長が苦々しく吐き捨てる。
「通信! 『積み荷を全て引き渡せば、命だけは助けてやる』と!」
「ふざけるな! こちらには皇女殿下がお乗りになっているのだぞ!」
だが、威勢のいい言葉とは裏腹に、状況は最悪だった。
大和たちが乗る『アルテミス』は、あくまで移民視察や賓客の輸送を目的とした非戦闘艦だ。最低限の自衛武装はあるものの、百戦錬磨の宇宙海賊の戦闘艦に敵うはずもない。
ドンッ!
船体が大きく揺れ、衝撃が襲う。海賊船からの威嚇射撃だ。船内のあちこちで、短い悲鳴が上がる。
「ヤマト様! こちらへ!」
部屋に駆け込んできたのは、近衛騎士団長のゼノ・グレイウォールだった。彼は、皇女エリアーナを護衛するためにこの船に同乗している、帝国でも屈指のエリート騎士だ。しかし、その冷静沈着な彼の顔にも、今は焦りの色が見て取れた。
「あなた様は非戦闘員です! 我々が誘導しますので、船倉のシェルターへ避難してください!」
「は、はい!分かりました!」
有無を言わさぬその気迫に、大和は頷くしかなかった。
ゼノに促されるまま、大和は他の非戦闘員の船員たちと共に、船体中央部のシェルターへと向かう。通路の壁が時折、外からの攻撃で赤熱し、船全体が悲鳴を上げて軋んでいた。
テレビや映画でしか見たことのない、まさしく戦場。
その圧倒的な現実を前に、大和はただ、言われるがままに避難することしかできなかった。
以前の恐怖と緊張に満ちた敬意は薄れ、代わりに、まるで伝説の英雄に接するかのような、熱っぽい憧れの視線を感じるようになった。特に、皇女エリアーナとその侍女たちは、廊下で会うたびに頬を染め、深々と頭を下げてくる。
「(扉の一つや二つ、男手があれば開くだろうに……。この船の人たちは、本当に力が弱いんだな)」
大和はそんな風に、あくまで好意的に解釈していた。彼らにとって、鋼鉄のロックボルトを指で捻じ切ることがどれだけ異常な事態かなど、想像も及ばない。
そんな、どこか噛み合わないながらも平穏な日々は、突如として引き裂かれた。
『警報! 警報! 未確認艦艇、急速接近中! 全員、第一種戦闘態勢に移行せよ!』
けたたましいアラーム音と、冷静さを失った合成音声が、船内の隅々まで響き渡った。穏やかだった照明は赤く点滅し、平和な日常が一瞬にして非日常へと塗り替えられる。
「な、なんだ!?」
自室で読書をしていた(帝国語の勉強を兼ねていた)大和は、突然の事態に飛び上がった。廊下に出ると、船員たちが慌ただしく走り回っている。その顔には、これまで見たこともない恐怖と焦りの色が浮かんでいた。
艦橋では、既に絶望的な状況がスクリーンに映し出されていた。
無骨で獰猛なデザインの、明らかに戦闘目的で建造された黒鉄の船。髑髏を模したエンブレムが、その所属を雄弁に物語っていた。
「海賊だと!? なぜこんな航路に!」
艦長が苦々しく吐き捨てる。
「通信! 『積み荷を全て引き渡せば、命だけは助けてやる』と!」
「ふざけるな! こちらには皇女殿下がお乗りになっているのだぞ!」
だが、威勢のいい言葉とは裏腹に、状況は最悪だった。
大和たちが乗る『アルテミス』は、あくまで移民視察や賓客の輸送を目的とした非戦闘艦だ。最低限の自衛武装はあるものの、百戦錬磨の宇宙海賊の戦闘艦に敵うはずもない。
ドンッ!
船体が大きく揺れ、衝撃が襲う。海賊船からの威嚇射撃だ。船内のあちこちで、短い悲鳴が上がる。
「ヤマト様! こちらへ!」
部屋に駆け込んできたのは、近衛騎士団長のゼノ・グレイウォールだった。彼は、皇女エリアーナを護衛するためにこの船に同乗している、帝国でも屈指のエリート騎士だ。しかし、その冷静沈着な彼の顔にも、今は焦りの色が見て取れた。
「あなた様は非戦闘員です! 我々が誘導しますので、船倉のシェルターへ避難してください!」
「は、はい!分かりました!」
有無を言わさぬその気迫に、大和は頷くしかなかった。
ゼノに促されるまま、大和は他の非戦闘員の船員たちと共に、船体中央部のシェルターへと向かう。通路の壁が時折、外からの攻撃で赤熱し、船全体が悲鳴を上げて軋んでいた。
テレビや映画でしか見たことのない、まさしく戦場。
その圧倒的な現実を前に、大和はただ、言われるがままに避難することしかできなかった。
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