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第8話
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ゼノに先導され、大和は船の内部通路をひた走っていた。
絶え間なく響く衝撃音と、船体が軋む不快な金属音。すぐ近くで何かが爆発したのか、床が大きく突き上げるように揺れた。
「きゃっ!」
一緒に行動していた若い女性クルーが、バランスを崩して倒れそうになる。大和は咄嗟にその腕を掴んで支えた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます……」
顔を青くした彼女を立たせ、再び走り出す。シェルターはまだ先のようだ。
こんな状況でも、大和の思考は妙に冷静な部分があった。それは恐怖がないわけではない。むしろ、現実感がなさすぎて、まるで質の悪いアクション映画の撮影現場にでも紛れ込んでしまったかのような、どこか他人事のような感覚だった。
一行が長い廊下を抜け、角を曲がろうとした、まさにその時。
すぐ横の壁が、前触れもなく赤く発光した。分厚いはずの金属の壁が、内側から熱せられた鉄板のように、じゅっと音を立てて溶け落ちていく。
「伏せろ!」
ゼノが鋭く叫んだ。
しかし、その声が終わるよりも早く、溶けた壁の向こうから、灼熱の光弾が撃ち込まれた。赤橙色のエネルギーの塊が、空気を焦がす匂いを撒き散らしながら、一直線にこちらへ飛んでくる。
狙いは、集団の中心にいた大和たちだ。
船員たちの顔が絶望に凍りつく。ゼノですら、咄嗟に身を挺して誰かを庇うことしかできない。避けられない、絶対的な死の一撃。
だが、大和の目には、その光景が全く別のものとして映っていた。
(――速い、けど)
迫り来る光弾が、彼の動体視力の中ではっきりと捉えられていた。それはまるで、高校の野球部時代に対峙した、豪速球投手のストレートのようだった。熱くて、ちょっと眩しいだけの、ただの〝ボール〟に。
思考よりも早く、体が動いていた。
壁際に、何かのメンテナンスで使われたのか、一本の金属パイプが立てかけてあるのが視界の端に入った。
大和はそれを無意識に掴み取る。長さといい、重さといい、手にしっくりと馴染む。
ステップを踏み、腰を捻り、腕をしならせる。
完璧なバッティングフォーム。
飛来する光弾の軌道に合わせ、金属パイプをフルスイングで叩きつけた。
カキンッ!
あり得ない金属音が響き渡る。
灼熱の光弾は、まるで打ち返されたホームランボールのように、綺麗な放物線を描いて飛来した方向――溶けた壁の穴の向こう側へと、寸分の狂いもなく吸い込まれていった。
「危ねぇな!」
大和が吐き捨てた悪態は、純粋に危険な〝ボール〟を投げ込んできた相手へのものだった。
直後、壁の向こうから「ぎゃっ!」という短い断末魔が聞こえたが、彼の耳には届いていない。
シーン、と静まり返る廊下。
ゼノも、他の船員たちも、目の前で起きた超常現象が理解できず、ただ口を開けて呆然と立ち尽くしていた。
大和は、手にした金属パイプに目を落とす。先端が熱で僅かに溶け、赤い光を放っていた。
「うわ、熱っ」
思わず手放すと、パイプはカランと音を立てて床に転がった。
「ヤマト……様……?」
ゼノが、震える声で呟く。
彼の視線は、パイプを打ち返した男の横顔に、釘付けになっていた。今、この男は、一体何をしたというのだ。
絶え間なく響く衝撃音と、船体が軋む不快な金属音。すぐ近くで何かが爆発したのか、床が大きく突き上げるように揺れた。
「きゃっ!」
一緒に行動していた若い女性クルーが、バランスを崩して倒れそうになる。大和は咄嗟にその腕を掴んで支えた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます……」
顔を青くした彼女を立たせ、再び走り出す。シェルターはまだ先のようだ。
こんな状況でも、大和の思考は妙に冷静な部分があった。それは恐怖がないわけではない。むしろ、現実感がなさすぎて、まるで質の悪いアクション映画の撮影現場にでも紛れ込んでしまったかのような、どこか他人事のような感覚だった。
一行が長い廊下を抜け、角を曲がろうとした、まさにその時。
すぐ横の壁が、前触れもなく赤く発光した。分厚いはずの金属の壁が、内側から熱せられた鉄板のように、じゅっと音を立てて溶け落ちていく。
「伏せろ!」
ゼノが鋭く叫んだ。
しかし、その声が終わるよりも早く、溶けた壁の向こうから、灼熱の光弾が撃ち込まれた。赤橙色のエネルギーの塊が、空気を焦がす匂いを撒き散らしながら、一直線にこちらへ飛んでくる。
狙いは、集団の中心にいた大和たちだ。
船員たちの顔が絶望に凍りつく。ゼノですら、咄嗟に身を挺して誰かを庇うことしかできない。避けられない、絶対的な死の一撃。
だが、大和の目には、その光景が全く別のものとして映っていた。
(――速い、けど)
迫り来る光弾が、彼の動体視力の中ではっきりと捉えられていた。それはまるで、高校の野球部時代に対峙した、豪速球投手のストレートのようだった。熱くて、ちょっと眩しいだけの、ただの〝ボール〟に。
思考よりも早く、体が動いていた。
壁際に、何かのメンテナンスで使われたのか、一本の金属パイプが立てかけてあるのが視界の端に入った。
大和はそれを無意識に掴み取る。長さといい、重さといい、手にしっくりと馴染む。
ステップを踏み、腰を捻り、腕をしならせる。
完璧なバッティングフォーム。
飛来する光弾の軌道に合わせ、金属パイプをフルスイングで叩きつけた。
カキンッ!
あり得ない金属音が響き渡る。
灼熱の光弾は、まるで打ち返されたホームランボールのように、綺麗な放物線を描いて飛来した方向――溶けた壁の穴の向こう側へと、寸分の狂いもなく吸い込まれていった。
「危ねぇな!」
大和が吐き捨てた悪態は、純粋に危険な〝ボール〟を投げ込んできた相手へのものだった。
直後、壁の向こうから「ぎゃっ!」という短い断末魔が聞こえたが、彼の耳には届いていない。
シーン、と静まり返る廊下。
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大和は、手にした金属パイプに目を落とす。先端が熱で僅かに溶け、赤い光を放っていた。
「うわ、熱っ」
思わず手放すと、パイプはカランと音を立てて床に転がった。
「ヤマト……様……?」
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