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第9話
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「……今のは、その……事故だ。うん、事故」
大和は誰に言うでもなく呟き、気まずそうに視線を泳がせた。
ビームを打ち返してしまった。野球のノリだったとはいえ、明らかに正当防衛の範疇を超えている気がする。もし相手が死んでいたらどうしよう。そんな考えが頭をよぎり、血の気が引いていく。
一方、ゼノたちは別の意味で思考が停止していた。
ビーム兵器を、金属パイプで打ち返す。そんな芸当は、おとぎ話の英雄譚ですら聞いたことがない。目の前の男は、本当に我々と同じ生命体なのだろうか。伝説の『テラノイド』という言葉が、ゼノの脳内で現実味を帯びていく。
その凍り付いたような静寂を、船体を根底から揺るがす過去最大級の衝撃が打ち破った。
ドゴォォン!
凄まじい轟音と共に、今度は天井近くの壁が大きく吹き飛んだ。断熱材やケーブルが火花を散らしながら剥き出しになり、その向こうに、漆黒の宇宙空間と、憎々しげに浮かぶ海賊船の姿が直接見える。
「隔壁大破! 船内に直接攻撃が!」
「緊急隔壁、作動しません!」
船員たちの悲鳴が響き渡る。吹き飛んだ壁の破片――デブリが、大小さまざまに床へと降り注いだ。幸いにも、この区画は既に船外活動用の気密シールドが部分的に展開しており、空気が一気に吸い出される事態には至っていない。だが、それも時間の問題だった。
しつこい。
大和は、穴の向こうに見える海賊船を睨みつけ、純粋にそう思った。
人を助けて、穏やかに暮らしたいだけなのに、なぜこうも邪魔が入るのか。いい加減にしてほしい。地球にいた頃、仕事の邪魔をされた時のような、真っ当な怒りがふつふつと湧き上がってきた。
その時、彼の足元に、ちょうど手頃な大きさのデブリが転がってきた。歪んだ金属の塊。重さは十数キロといったところか。地球人にとっては片手でどうこうできる重さではないが、今の彼には、野球のボールより少し重いくらいにしか感じられなかった。
カッとなった頭で、大和はほとんど無意識にそのデブリを拾い上げていた。
そして、ピッチャーが振りかぶるように、その体を大きくしならせた。
「このっ……!」
狙いは、穴の向こうに見える海賊船の、一番偉そうなやつが乗っていそうな場所。ブリッジだ。
渾身の力で投げつけられた金属の塊は、大和の手を離れた瞬間、空気の悲鳴を置き去りにして加速した。
それは、投擲と呼ぶにはあまりにも速すぎた。
一筋の黒い線となって宇宙空間を疾走し、まるで吸い込まれるように、海賊船のブリッジの真正面に突き刺さる。
音は、なかった。
真空の宇宙では、衝撃音は伝わらない。
ただ、海賊船のブリッジ部分が、内側から膨らむように光ったかと思うと、サイレント映画のように静かに、そして盛大に爆ぜて四散した。
動力も、攻撃機能も、全てを失った海賊船は、ただの鉄屑となって宇宙を漂い始める。
あれだけ鳴り響いていた警報が、嘘のように止んだ。
「あ」
大和は、自分の投げたデブリが引き起こした結果を見て、小さく声を漏らす。
今度こそ、まずいことをしてしまったかもしれない。器物損壊どころの騒ぎではない。
彼は、心配そうにこちらを見つめるゼノに向かって、力なく笑いかけた。
「……やりすぎ、ちゃいましたかね?」
その問いに、もはや誰も答えることはできなかった。
大和は誰に言うでもなく呟き、気まずそうに視線を泳がせた。
ビームを打ち返してしまった。野球のノリだったとはいえ、明らかに正当防衛の範疇を超えている気がする。もし相手が死んでいたらどうしよう。そんな考えが頭をよぎり、血の気が引いていく。
一方、ゼノたちは別の意味で思考が停止していた。
ビーム兵器を、金属パイプで打ち返す。そんな芸当は、おとぎ話の英雄譚ですら聞いたことがない。目の前の男は、本当に我々と同じ生命体なのだろうか。伝説の『テラノイド』という言葉が、ゼノの脳内で現実味を帯びていく。
その凍り付いたような静寂を、船体を根底から揺るがす過去最大級の衝撃が打ち破った。
ドゴォォン!
凄まじい轟音と共に、今度は天井近くの壁が大きく吹き飛んだ。断熱材やケーブルが火花を散らしながら剥き出しになり、その向こうに、漆黒の宇宙空間と、憎々しげに浮かぶ海賊船の姿が直接見える。
「隔壁大破! 船内に直接攻撃が!」
「緊急隔壁、作動しません!」
船員たちの悲鳴が響き渡る。吹き飛んだ壁の破片――デブリが、大小さまざまに床へと降り注いだ。幸いにも、この区画は既に船外活動用の気密シールドが部分的に展開しており、空気が一気に吸い出される事態には至っていない。だが、それも時間の問題だった。
しつこい。
大和は、穴の向こうに見える海賊船を睨みつけ、純粋にそう思った。
人を助けて、穏やかに暮らしたいだけなのに、なぜこうも邪魔が入るのか。いい加減にしてほしい。地球にいた頃、仕事の邪魔をされた時のような、真っ当な怒りがふつふつと湧き上がってきた。
その時、彼の足元に、ちょうど手頃な大きさのデブリが転がってきた。歪んだ金属の塊。重さは十数キロといったところか。地球人にとっては片手でどうこうできる重さではないが、今の彼には、野球のボールより少し重いくらいにしか感じられなかった。
カッとなった頭で、大和はほとんど無意識にそのデブリを拾い上げていた。
そして、ピッチャーが振りかぶるように、その体を大きくしならせた。
「このっ……!」
狙いは、穴の向こうに見える海賊船の、一番偉そうなやつが乗っていそうな場所。ブリッジだ。
渾身の力で投げつけられた金属の塊は、大和の手を離れた瞬間、空気の悲鳴を置き去りにして加速した。
それは、投擲と呼ぶにはあまりにも速すぎた。
一筋の黒い線となって宇宙空間を疾走し、まるで吸い込まれるように、海賊船のブリッジの真正面に突き刺さる。
音は、なかった。
真空の宇宙では、衝撃音は伝わらない。
ただ、海賊船のブリッジ部分が、内側から膨らむように光ったかと思うと、サイレント映画のように静かに、そして盛大に爆ぜて四散した。
動力も、攻撃機能も、全てを失った海賊船は、ただの鉄屑となって宇宙を漂い始める。
あれだけ鳴り響いていた警報が、嘘のように止んだ。
「あ」
大和は、自分の投げたデブリが引き起こした結果を見て、小さく声を漏らす。
今度こそ、まずいことをしてしまったかもしれない。器物損壊どころの騒ぎではない。
彼は、心配そうにこちらを見つめるゼノに向かって、力なく笑いかけた。
「……やりすぎ、ちゃいましたかね?」
その問いに、もはや誰も答えることはできなかった。
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