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第12話
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熱狂的な歓迎パレードがようやく終わり、大和が乗り込んだフロートは、天を衝くようにそびえ立つ白亜の宮殿――アストレア皇宮の正面ゲートへとたどり着いた。
ゲートの高さだけでも、地球の高層ビルに匹敵するのではないか。精緻な彫刻が施された巨大な門が、音もなく左右に開いていく。その光景は、もはや現実のものとは思えなかった。
「……すごいな」
何度目かになる感嘆の言葉が、無意識に口からこぼれた。
フロートを降りると、そこには緋色の絨毯がまっすぐに宮殿の奥まで敷かれていた。その両脇には、寸分の乱れもなく整列した儀仗兵たちが、敬礼を捧げている。
「ヤマト様、陛下がお待ちです」
ゼノに促され、大和はエリアーナと共に、その緋色の絨毯の上を歩き始めた。一歩足を踏み出すたびに、自分の場違い感が心を蝕んでいく。俺はただの会社員だぞ。こんなところを歩いていい人間じゃない。背中に突き刺さる儀仗兵や貴族たちの畏敬の視線が、針のように痛かった。
長い、長い廊下を抜け、一行は一つの巨大な扉の前で足を止めた。黄金で縁取られたその扉には、帝国の紋章である翼を持つ獅子が描かれている。
「ヤマト・サトウ様、ご入来!」
衛兵の張りのある声と共に、重々しい音を立てて扉が開かれる。
その先に広がっていたのは、体育館がいくつも入ってしまいそうなほど広大な空間――玉座の間だった。天井はプラネタリウムのように星々が描かれ、磨き上げられた床は鏡のように大和の姿を映している。その空間の最も奥、数段高くなった壇上に、荘厳な玉座が鎮座していた。
そして、そこに一人の男が座っている。
年は五十代ほどだろうか。歳を重ねた威厳と、歴戦の指導者だけが持つ鋭い眼光。エリアーナと同じ淡い金色の髪を持ち、その体格は細身の者が多いこの星の人々の中では、比較的がっしりとしている。
彼こそが、数十億の民を束ねるアストレア銀河帝国第127代皇帝、ガイウス・フォン・アストレアその人だった。
大和は、その圧倒的な存在感を前に、思わず息を呑んだ。社会人として数々の企業の社長や重役と会ってきたが、その誰とも次元が違う。本物の「王」が持つ覇気というものを、肌で感じていた。
皇帝は、壇上からゆっくりと立ち上がると、自ら階段を下り、大和たちの前まで歩み寄ってきた。
「面を上げよ、救国の英雄」
低く、しかしよく通る声だった。
大和は、反射的に頭を下げていた体を起こす。皇帝の目は、真っ直ぐに大和を射抜いていた。
「娘と、我が帝国の民を救ってくれたこと、心より礼を言う。ヤマト・サトウ殿」
「い、いえ! とんでもないことでございます! 俺は何も……」
「謙遜は不要だ。そなたの武勇は、エリアーナとゼノから聞き及んでいる。たった一人で海賊艦を無力化したその力、まさしく伝説のテラノイドの名にふさわしい」
皇帝は満足げに頷くと、大和の肩にそっと手を置いた。その手は温かく、力強かった。
「帝都にいる間は、我が賓客として、何一つ不自由はさせぬと約束しよう。望むものがあれば、何でも言うがよい」
最高権力者からの、最大限の賛辞と歓待の約束。
大和の脳裏には、叩き込まれたビジネススキルが警鐘を鳴らしていた。「ここで調子に乗るな」「謙虚であれ」「相手を立てろ」。
「もったいのうございます、陛下。皆様が無事であったことが、私にとって何よりの喜びです」
必死に絞り出した百点満点の優等生回答。
それを聞いた皇帝は、ますます感心したように目を細めた。周囲の貴族たちも「おお……」と感嘆の声を漏らしている。その強大な力に驕ることなく、慈悲深さまで持ち合わせているとは。
彼らの勘違いが、さらに一段階深まったことを、大和だけが知らずにいた。
謁見が終わり、豪華絢爛な控えの間に通された大和は、ふかふかのソファに体を預けた瞬間、どっと全身の力が抜けていくのを感じた。
「……もう無理。胃に穴が開く……」
絞り出すような呟きは、誰の耳に届くこともなく、壮麗な部屋の空気に溶けて消えていった。
ゲートの高さだけでも、地球の高層ビルに匹敵するのではないか。精緻な彫刻が施された巨大な門が、音もなく左右に開いていく。その光景は、もはや現実のものとは思えなかった。
「……すごいな」
何度目かになる感嘆の言葉が、無意識に口からこぼれた。
フロートを降りると、そこには緋色の絨毯がまっすぐに宮殿の奥まで敷かれていた。その両脇には、寸分の乱れもなく整列した儀仗兵たちが、敬礼を捧げている。
「ヤマト様、陛下がお待ちです」
ゼノに促され、大和はエリアーナと共に、その緋色の絨毯の上を歩き始めた。一歩足を踏み出すたびに、自分の場違い感が心を蝕んでいく。俺はただの会社員だぞ。こんなところを歩いていい人間じゃない。背中に突き刺さる儀仗兵や貴族たちの畏敬の視線が、針のように痛かった。
長い、長い廊下を抜け、一行は一つの巨大な扉の前で足を止めた。黄金で縁取られたその扉には、帝国の紋章である翼を持つ獅子が描かれている。
「ヤマト・サトウ様、ご入来!」
衛兵の張りのある声と共に、重々しい音を立てて扉が開かれる。
その先に広がっていたのは、体育館がいくつも入ってしまいそうなほど広大な空間――玉座の間だった。天井はプラネタリウムのように星々が描かれ、磨き上げられた床は鏡のように大和の姿を映している。その空間の最も奥、数段高くなった壇上に、荘厳な玉座が鎮座していた。
そして、そこに一人の男が座っている。
年は五十代ほどだろうか。歳を重ねた威厳と、歴戦の指導者だけが持つ鋭い眼光。エリアーナと同じ淡い金色の髪を持ち、その体格は細身の者が多いこの星の人々の中では、比較的がっしりとしている。
彼こそが、数十億の民を束ねるアストレア銀河帝国第127代皇帝、ガイウス・フォン・アストレアその人だった。
大和は、その圧倒的な存在感を前に、思わず息を呑んだ。社会人として数々の企業の社長や重役と会ってきたが、その誰とも次元が違う。本物の「王」が持つ覇気というものを、肌で感じていた。
皇帝は、壇上からゆっくりと立ち上がると、自ら階段を下り、大和たちの前まで歩み寄ってきた。
「面を上げよ、救国の英雄」
低く、しかしよく通る声だった。
大和は、反射的に頭を下げていた体を起こす。皇帝の目は、真っ直ぐに大和を射抜いていた。
「娘と、我が帝国の民を救ってくれたこと、心より礼を言う。ヤマト・サトウ殿」
「い、いえ! とんでもないことでございます! 俺は何も……」
「謙遜は不要だ。そなたの武勇は、エリアーナとゼノから聞き及んでいる。たった一人で海賊艦を無力化したその力、まさしく伝説のテラノイドの名にふさわしい」
皇帝は満足げに頷くと、大和の肩にそっと手を置いた。その手は温かく、力強かった。
「帝都にいる間は、我が賓客として、何一つ不自由はさせぬと約束しよう。望むものがあれば、何でも言うがよい」
最高権力者からの、最大限の賛辞と歓待の約束。
大和の脳裏には、叩き込まれたビジネススキルが警鐘を鳴らしていた。「ここで調子に乗るな」「謙虚であれ」「相手を立てろ」。
「もったいのうございます、陛下。皆様が無事であったことが、私にとって何よりの喜びです」
必死に絞り出した百点満点の優等生回答。
それを聞いた皇帝は、ますます感心したように目を細めた。周囲の貴族たちも「おお……」と感嘆の声を漏らしている。その強大な力に驕ることなく、慈悲深さまで持ち合わせているとは。
彼らの勘違いが、さらに一段階深まったことを、大和だけが知らずにいた。
謁見が終わり、豪華絢爛な控えの間に通された大和は、ふかふかのソファに体を預けた瞬間、どっと全身の力が抜けていくのを感じた。
「……もう無理。胃に穴が開く……」
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