地球育ちの俺、銀河帝国では『伝説の古代種族』らしい。~拾われた宇宙船で無自覚に無双してたら、皇女様に求婚されました~

夏見ナイ

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第16話

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副団長ガレイドが城壁の染みと化してから、練兵場の空気は凍りついたままだった。
騎士たちは皆、戦意を喪失し、ただ呆然と立ち尽くしている。彼らが生涯をかけて磨き上げた技と力が、目の前の男には赤子の戯れにも等しいのだと、骨の髄まで理解させられてしまったからだ。

「……申し訳ありませんでした、ヤマト様」

沈黙を破り、前に進み出たのはゼノだった。
彼は、手にした鞘から自身の剣を抜き放つと、それを逆さに持ち、柄を大和に向けて差し出した。帝国騎士が、自身の剣を差し出す行為。それは、完全な降伏と、相手への絶対的な忠誠を示す、最大の敬意の表れだった。

「部下たちの非礼、そして私の監督不行き届き、団長として深くお詫び申し上げます。どのような罰でもお受けいたします」

その言葉に、はっと我に返った騎士たちも、慌ててゼノに倣って膝をつき、頭を垂れた。もはや、大和に敵意を向ける者など一人もいない。

大和は、その光景に困り果てていた。
(いや、俺は別に怒ってないんだけどな……。むしろ、こっちが壊しちゃって申し訳ないくらいで)

「ゼノさん、顔を上げてください。罰なんて、そんなつもりは全くありませんから」
大和が慌てて言うが、ゼノは頑として動かない。

「ヤマト様。一つだけ、私個人の我儘をお聞き届け願えないでしょうか」
「我儘?」
「はい。この近衛騎士団長ゼノ・グレイウォールの全霊を以て、ヤマト様にご挑戦申し上げることを、お許しいただきたい」

その言葉に、周囲の騎士たちが「団長!?」とどよめく。
ゼノは、静かに続けた。
「このままでは、私は私の誇りを保てません。そして、この騎士団を率いる資格も失いましょう。この目で、肌で、あなたの力の神髄を体感し、潔く散りたいのです。どうか、この願い、お聞き届けください」

その瞳は、真剣そのものだった。
彼は、自分のプライドに決着をつけるために、そして何より、この計り知れない存在「ヤマト」が何者なのかを、その身をもって確かめようとしていた。

大和は、ため息をつきたくなるのをぐっとこらえた。
(またか……。どうしてこの星の人たちは、こうも戦いたがるんだ……)
しかし、帝国で数少ない知り合いであるゼノの、悲壮なまでの覚悟を無下にもできない。

「……分かりました。でも、本当に軽くですよ? 怪我をさせたくないので」
「感謝、いたします」

ゼノは深々と頭を下げると、立ち上がって大和と対峙した。
彼の纏う空気が、先ほどまでとは明らかに違う。集中力が高まり、その全身から青白い闘気――帝国騎士が『オーラ』と呼ぶ生命エネルギーが、陽炎のように立ち上り始めた。

「参ります!」

ゼノの姿が、掻き消えた。
否、常人の目にはそう見えただけだ。彼は、大和の周囲を高速で移動し、残像を生み出している。
そして、全ての残像が、一つの動きに収束した。

「我が奥義! 天光穿つ一閃――『ノヴァ・ストライク』!」

ゼノの剣に、凝縮されたオーラが太陽のような輝きを宿す。それは彼の全生命力を注ぎ込んだ、文字通りの必殺剣だった。
目も眩むほどの閃光が、練兵場全体を白く染め上げる。

その光の中心で、大和は眩しそうに片手を顔の前にかざしていた。

「うわ、ちょっと眩しいですね、それ」

ごく自然に、本当に太陽が眩しい時にするように。
彼は、そのかざした方の手で、ゼノが振り下ろした光り輝く剣先を、ひょいと、いとも簡単につまんでいた。

ピタッ。

全ての音が消えた。
ゼノの必殺剣は、大和の人差し指と親指の間に挟まれ、完全にその動きを止めている。あれほど輝いていたオーラの光も、まるで吸い込まれたかのように、急速にその輝きを失っていく。

「…………え?」

ゼノは、自分の剣が止められた事実が理解できなかった。
全霊を込めた一撃が、まるで子供の玩具のように、あっさりと無力化されている。

大和は、困ったように笑いながら言った。
「だから、軽くって言ったじゃないですか」

その言葉を聞いた瞬間、ゼノの膝から力が抜けた。
カラン、と剣が手から滑り落ち、彼はその場にへなへなと崩れ落ちる。

完敗。
それは、もはや戦いですらなかった。
ゼノは、天を仰ぎ、乾いた笑いを漏らすことしかできなかった。
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