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第23話
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皇女エリアーナが、ヤマトの作った謎の料理を食べて劇的に回復した――。
そのニュースは、皇宮内に新たな衝撃をもたらした。大和は、武勇だけでなく、神の如き医療の知識をも持つ存在として、その評価をさらに不動のものとしていく。
もちろん、その状況を快く思わない者もいた。
筆頭は、ヴァリウス公爵である。
「馬鹿馬鹿しい。薬草を混ぜただけの料理で、皇女殿下の長年の病が癒えるものか。何か裏があるに決まっている」
自身の屋敷の書斎で、ヴァリウスは吐き捨てるように言った。
彼は、ヤマトという男の存在そのものが、帝国の秩序を乱す毒だと考えていた。出自不明の男が、皇女に取り入り、民衆の支持を集める。それは、彼が築き上げてきた権力基盤を脅かす、看過できない事態だった。
「もはや、生かしてはおけぬ」
ヴァリウスは、冷徹な判断を下した。
表立って動けば、皇帝や民衆の反発を招く。ならば、闇に葬るまで。
彼は、帝国でも最も腕が立つとされる暗殺者の一族「影の一族(シャドウ・クラン)」に接触した。法外な報酬と引き換えに、ヤマトの暗殺を依頼するためだ。
「相手は、伝説のテラノイドと噂されるほどの男だ。手練れを向かわせろ。失敗は許さん」
「御意に」
その夜。
月も星も見えない、暗い夜だった。
大和が寝室としてあてがわれている、皇宮の離宮。その屋根の上に、音もなく三つの影が舞い降りた。黒装束に身を包んだ、影の一族の暗殺者たちだ。
彼らは、気配を完全に消し、壁をヤモリのように這って、大和の寝室の窓へと近づく。
「ターゲットは一人。眠っている間に、毒針で始末する」
リーダー格の男が、手信号で仲間に指示を送る。
彼らは、帝国最高硬度を誇る特殊な金属で作られたワイヤーを取り出し、窓のロックに引っ掛けた。そして、熟練の技で、音もなく鍵を内側から開けていく。
カチャリ。
微かな音を立てて、ロックが外れた。
(よし)
リーダーはほくそ笑み、窓をゆっくりと開けようとした。
しかし。
「……ん?」
窓が、ピクリとも動かない。
まるで、溶接でもされているかのように、固く閉ざされている。
(おかしい。鍵は開けたはず……)
リーダーはもう一度、今度は少し力を込めて窓を引いてみた。
だが、やはり動かない。ミシリと、窓枠の方が軋む音がするだけだ。
「どうした?」
「開きません。何故か、異常に固い」
仲間の一人が、小声で囁く。
リーダーは眉をひそめ、作戦を変更した。
「仕方ない。玄関から入るぞ。扉の電子ロックは、この端末で一瞬だ」
三人は再び音もなく移動し、離宮の正面玄関へと回り込んだ。
リーダーは小型の端末を取り出し、扉のセキュリティシステムに接続する。数秒後、電子ロックが解除されたことを示す小さな緑のランプが点灯した。
「よし、開いたぞ。突入する」
リーダーは、自信満々にドアノブに手をかけ、回した。
そして、扉を押す。
……ズン。
扉は、動かなかった。
「なっ……!?」
リーダーは、今度は全体重をかけて扉を押した。
ビクともしない。まるで、一枚岩を相手にしているようだ。
「馬鹿な! ロックは解除したはずだ!」
「リーダー、代わります!」
仲間の一人が、リーダーを押し退け、渾身の力で扉にタックルをかました。
ドンッ!
鈍い音が響いただけだった。扉は微動だにせず、逆にタックルした暗殺者の肩が、嫌な音を立てて外れた。
「ぐっ……!?」
彼らは知らない。
この離宮に越してきた初日、大和が「このドア、少し建付けが悪いなあ」と言いながら、扉を一度外し、自分の感覚で「スムーズに動く」ように調整(という名の微細な変形)を加えていたことを。
その結果、地球人の平均的な筋力を持つ大和にとっては快適になったその扉は、帝国人にとっては、金庫室の扉よりも固い、開かずの扉と化してしまっていたのだ。
三人の暗殺者たちは、汗だくになりながら、扉を押し、引き、蹴り、様々な手段を試した。
しかし、扉は彼らの絶望を煽るかのように、ただ静かにそこにあるだけだった。
やがて、夜が白み始め、警備の騎士が巡回に来る時間となった。
「……撤退だ」
リーダーは、屈辱に震える声でそう告げた。
影の一族始まって以来の、屈辱的な失敗だった。ターゲットに会うことすらできず、ただの一枚のドアに完敗したのだ。
その頃、寝室のベッドでは、大和が気持ちよさそうに大あくびをしていた。
「ふぁ……よく寝た。ここの扉、ちゃんと閉まるから、夜も静かで安眠できるなあ」
まさか、その扉の前で、帝国最強の暗殺者たちが夜通し死闘を繰り広げていたとは、夢にも思っていなかった。
そのニュースは、皇宮内に新たな衝撃をもたらした。大和は、武勇だけでなく、神の如き医療の知識をも持つ存在として、その評価をさらに不動のものとしていく。
もちろん、その状況を快く思わない者もいた。
筆頭は、ヴァリウス公爵である。
「馬鹿馬鹿しい。薬草を混ぜただけの料理で、皇女殿下の長年の病が癒えるものか。何か裏があるに決まっている」
自身の屋敷の書斎で、ヴァリウスは吐き捨てるように言った。
彼は、ヤマトという男の存在そのものが、帝国の秩序を乱す毒だと考えていた。出自不明の男が、皇女に取り入り、民衆の支持を集める。それは、彼が築き上げてきた権力基盤を脅かす、看過できない事態だった。
「もはや、生かしてはおけぬ」
ヴァリウスは、冷徹な判断を下した。
表立って動けば、皇帝や民衆の反発を招く。ならば、闇に葬るまで。
彼は、帝国でも最も腕が立つとされる暗殺者の一族「影の一族(シャドウ・クラン)」に接触した。法外な報酬と引き換えに、ヤマトの暗殺を依頼するためだ。
「相手は、伝説のテラノイドと噂されるほどの男だ。手練れを向かわせろ。失敗は許さん」
「御意に」
その夜。
月も星も見えない、暗い夜だった。
大和が寝室としてあてがわれている、皇宮の離宮。その屋根の上に、音もなく三つの影が舞い降りた。黒装束に身を包んだ、影の一族の暗殺者たちだ。
彼らは、気配を完全に消し、壁をヤモリのように這って、大和の寝室の窓へと近づく。
「ターゲットは一人。眠っている間に、毒針で始末する」
リーダー格の男が、手信号で仲間に指示を送る。
彼らは、帝国最高硬度を誇る特殊な金属で作られたワイヤーを取り出し、窓のロックに引っ掛けた。そして、熟練の技で、音もなく鍵を内側から開けていく。
カチャリ。
微かな音を立てて、ロックが外れた。
(よし)
リーダーはほくそ笑み、窓をゆっくりと開けようとした。
しかし。
「……ん?」
窓が、ピクリとも動かない。
まるで、溶接でもされているかのように、固く閉ざされている。
(おかしい。鍵は開けたはず……)
リーダーはもう一度、今度は少し力を込めて窓を引いてみた。
だが、やはり動かない。ミシリと、窓枠の方が軋む音がするだけだ。
「どうした?」
「開きません。何故か、異常に固い」
仲間の一人が、小声で囁く。
リーダーは眉をひそめ、作戦を変更した。
「仕方ない。玄関から入るぞ。扉の電子ロックは、この端末で一瞬だ」
三人は再び音もなく移動し、離宮の正面玄関へと回り込んだ。
リーダーは小型の端末を取り出し、扉のセキュリティシステムに接続する。数秒後、電子ロックが解除されたことを示す小さな緑のランプが点灯した。
「よし、開いたぞ。突入する」
リーダーは、自信満々にドアノブに手をかけ、回した。
そして、扉を押す。
……ズン。
扉は、動かなかった。
「なっ……!?」
リーダーは、今度は全体重をかけて扉を押した。
ビクともしない。まるで、一枚岩を相手にしているようだ。
「馬鹿な! ロックは解除したはずだ!」
「リーダー、代わります!」
仲間の一人が、リーダーを押し退け、渾身の力で扉にタックルをかました。
ドンッ!
鈍い音が響いただけだった。扉は微動だにせず、逆にタックルした暗殺者の肩が、嫌な音を立てて外れた。
「ぐっ……!?」
彼らは知らない。
この離宮に越してきた初日、大和が「このドア、少し建付けが悪いなあ」と言いながら、扉を一度外し、自分の感覚で「スムーズに動く」ように調整(という名の微細な変形)を加えていたことを。
その結果、地球人の平均的な筋力を持つ大和にとっては快適になったその扉は、帝国人にとっては、金庫室の扉よりも固い、開かずの扉と化してしまっていたのだ。
三人の暗殺者たちは、汗だくになりながら、扉を押し、引き、蹴り、様々な手段を試した。
しかし、扉は彼らの絶望を煽るかのように、ただ静かにそこにあるだけだった。
やがて、夜が白み始め、警備の騎士が巡回に来る時間となった。
「……撤退だ」
リーダーは、屈辱に震える声でそう告げた。
影の一族始まって以来の、屈辱的な失敗だった。ターゲットに会うことすらできず、ただの一枚のドアに完敗したのだ。
その頃、寝室のベッドでは、大和が気持ちよさそうに大あくびをしていた。
「ふぁ……よく寝た。ここの扉、ちゃんと閉まるから、夜も静かで安眠できるなあ」
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