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第25話
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大和のポロリとこぼした一言――「連作障害」という概念は、行き詰まっていた帝国の科学者たちに、まさに天啓の如き衝撃を与えた。
彼らはすぐさま研究室に引きこもり、徹夜で土壌と枯れたアスト麦の再分析を開始した。
これまで、彼らは病原菌やウイルスといった「外部からの脅威」にばかり目を向けていた。だが、視点を変え、土壌そのものに異常があるのではないか、という仮説のもとに分析を進めた結果、驚くべき事実が判明する。
「これだ……! 間違いない!」
数日後。
視察団が滞在する基地の会議室で、科学者チームのリーダーが興奮した面持ちで報告を行った。
彼の目の前のスクリーンには、複雑な化学式とグラフが表示されている。
「原因は、未知の病原菌などではありませんでした。土壌内の、特定の微量元素の極端な欠乏です!」
彼が指し示したグラフは、惑星デメテルの土壌から、ある特定のミネラル成分だけが綺麗に失われていることを示していた。
「アスト麦は、成長の過程でこの微量元素を大量に消費します。長年、同じ場所でアスト麦だけを栽培し続けた結果、土壌からこの元素が完全に枯渇してしまった。これが、アスト麦が自身の免疫力を維持できなくなり、ありふれた常在菌にすら抵抗できず、枯死に至った直接の原因です!」
つまり、病気の原因は、土地が「栄養失調」に陥っていたことだったのだ。
大和が言った「土地の栄養が偏る」という言葉が、まさに真理だったのである。
「なんと……。そんな単純なことが……」
ゼノは、唖然としてスクリーンを見つめた。
エリアーナは、誇らしげな、そして少しうっとりとした表情で、隣に座る大和を見つめている。
「対策は?」
皇帝から全権を委任されているゼノが問う。
「はい! 欠乏している微量元素を特定した以上、それを補う特殊肥料の開発は容易です。さらに……ヤマト様がご教示くださった『輪作』という画期的な農法! これを導入すれば、今後はこのような事態を防ぐことも可能でしょう!」
科学者のリーダーは、熱っぽく語りながら、大和に向かって深々と頭を下げた。
「ヤマト様。あなたのその深遠なる叡智が、我々帝国を、そして数十億の民を飢餓から救いました。このご恩、言葉もございません!」
会議室にいた全員の、尊敬と感謝に満ちた視線が大和に突き刺さる。
(いや、だから、俺は何もしてないんだけど……。じいちゃんの受け売りだって言ったよね!?)
大和は、もはや弁解する気力もなかった。ただひたすら、引きつった笑みを浮かべて愛想笑いをするしかない。
彼の脳裏には、麦わら帽子をかぶり、「大地も生き物だからな。たまには休ませてやらんとな」と笑っていた、今は亡き祖父の姿が浮かんでいた。
この一件により、アストレア銀河帝国の農業は、歴史的な転換点を迎えることになった。
単一作物の大量生産から、多様な作物を周期的に育てる持続可能な農業へ。そのきっかけを作ったのが、ただの日本のサラリーマンが口にした、祖父の知恵袋だったという事実は、帝国の公式な歴史書に記されることはない。
ただ、『英雄ヤマト、神の視座より大地を癒す』という、新たな伝説の一ページが、民衆の間に語り継がれていくだけである。
食糧危機は、こうして未然に防がれた。
そして、大和の「勘違い英雄」としての名声は、もはや誰も手の付けられないところまで、高まってしまったのだった。
彼らはすぐさま研究室に引きこもり、徹夜で土壌と枯れたアスト麦の再分析を開始した。
これまで、彼らは病原菌やウイルスといった「外部からの脅威」にばかり目を向けていた。だが、視点を変え、土壌そのものに異常があるのではないか、という仮説のもとに分析を進めた結果、驚くべき事実が判明する。
「これだ……! 間違いない!」
数日後。
視察団が滞在する基地の会議室で、科学者チームのリーダーが興奮した面持ちで報告を行った。
彼の目の前のスクリーンには、複雑な化学式とグラフが表示されている。
「原因は、未知の病原菌などではありませんでした。土壌内の、特定の微量元素の極端な欠乏です!」
彼が指し示したグラフは、惑星デメテルの土壌から、ある特定のミネラル成分だけが綺麗に失われていることを示していた。
「アスト麦は、成長の過程でこの微量元素を大量に消費します。長年、同じ場所でアスト麦だけを栽培し続けた結果、土壌からこの元素が完全に枯渇してしまった。これが、アスト麦が自身の免疫力を維持できなくなり、ありふれた常在菌にすら抵抗できず、枯死に至った直接の原因です!」
つまり、病気の原因は、土地が「栄養失調」に陥っていたことだったのだ。
大和が言った「土地の栄養が偏る」という言葉が、まさに真理だったのである。
「なんと……。そんな単純なことが……」
ゼノは、唖然としてスクリーンを見つめた。
エリアーナは、誇らしげな、そして少しうっとりとした表情で、隣に座る大和を見つめている。
「対策は?」
皇帝から全権を委任されているゼノが問う。
「はい! 欠乏している微量元素を特定した以上、それを補う特殊肥料の開発は容易です。さらに……ヤマト様がご教示くださった『輪作』という画期的な農法! これを導入すれば、今後はこのような事態を防ぐことも可能でしょう!」
科学者のリーダーは、熱っぽく語りながら、大和に向かって深々と頭を下げた。
「ヤマト様。あなたのその深遠なる叡智が、我々帝国を、そして数十億の民を飢餓から救いました。このご恩、言葉もございません!」
会議室にいた全員の、尊敬と感謝に満ちた視線が大和に突き刺さる。
(いや、だから、俺は何もしてないんだけど……。じいちゃんの受け売りだって言ったよね!?)
大和は、もはや弁解する気力もなかった。ただひたすら、引きつった笑みを浮かべて愛想笑いをするしかない。
彼の脳裏には、麦わら帽子をかぶり、「大地も生き物だからな。たまには休ませてやらんとな」と笑っていた、今は亡き祖父の姿が浮かんでいた。
この一件により、アストレア銀河帝国の農業は、歴史的な転換点を迎えることになった。
単一作物の大量生産から、多様な作物を周期的に育てる持続可能な農業へ。そのきっかけを作ったのが、ただの日本のサラリーマンが口にした、祖父の知恵袋だったという事実は、帝国の公式な歴史書に記されることはない。
ただ、『英雄ヤマト、神の視座より大地を癒す』という、新たな伝説の一ページが、民衆の間に語り継がれていくだけである。
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