地球育ちの俺、銀河帝国では『伝説の古代種族』らしい。~拾われた宇宙船で無自覚に無双してたら、皇女様に求婚されました~

夏見ナイ

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第26話

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農業惑星デメテルから帝都アストリアへの帰路。
視察船『アルテミス』の船内は、行きとは打って変わって、明るく希望に満ちた空気に包まれていた。帝国の食糧危機を救ったという達成感が、クルーや騎士たちの顔を輝かせている。

その中心にいるのは、もちろん大和だった。
だが、彼は英雄としての自覚などまるでないまま、自室の窓から流れる星々をぼんやりと眺めているだけだった。

(早く帰りたいな……)

彼の思考は、常にその一点に収束する。
そんな彼の元へ、エリアーナが訪れることが日課のようになっていた。

「ヤマト様、お紅茶をお持ちしましたわ」
「あ、どうも。すみません、いつも」

エリアーナは、大和の向かいの席に座ると、嬉しそうに微笑んだ。彼女の健康状態は、あの日以来、驚くほど安定していた。侍医たちが「ヤマト様の栄養学は奇跡だ」と騒ぎ、今では皇宮の料理長と共同で、大和が教えた(ということにされている)地球の家庭料理のレシピ研究に没頭しているらしい。

「デメテルでの一件、本当にありがとうございました。ヤマト様がいらっしゃらなければ、今頃帝国は……」
「いえ、あれは科学者の皆さんが優秀だっただけですよ」

いつも通りの謙遜。だが、エリアーナの目には、その謙虚さすらも、彼の偉大さを示す輝きに映っていた。

彼女は、大和と過ごす時間が増えるにつれて、日に日に彼への想いを強く、そして深くしていた。
初めて会った時、絶望的な状況で扉をこじ開けてくれた、あの力強い腕。
海賊の攻撃から、身を挺して船を守った、あの広い背中。
自分の体のことを、誰よりも真剣に心配してくれた、あの優しい眼差し。
そして、帝国の誰もが気づかなかった問題の本質を、いとも簡単に見抜いた、あの深遠な知性。

知れば知るほど、彼の魅力に引き込まれていく。
それは、単なる憧れや感謝ではない。一人の女性が、一人の男性に抱く、純粋な恋心だった。

「ヤマト様は……その、故郷にお帰りになりたいのですよね?」
エリアーナが、少し寂しそうに尋ねる。
「ええ、まあ……。家族や友人がいるわけじゃないですけど、やっぱり自分の生まれた星が一番落ち着きますから」

その言葉に、エリアーナの胸がちくりと痛んだ。
彼がいつか、この星からいなくなってしまう。その事実を思うと、たまらなく寂しくなる。
(ずっと、この方のそばにいられたら……)
そんな、叶わぬかもしれない願いが、彼女の心に芽生えていた。

二人のそんなやり取りを、少し離れた場所から、ゼノがこっそりと見守っていた。
最初こそ、出自不明の男が皇女殿下に近づくことに警戒心を抱いていたゼノだったが、今やその考えは百八十度変わっていた。

ヤマトという男は、計り知れない力と知性を持ちながら、決して驕ることのない、誰よりも心優しい人物だ。そして何より、彼がそばにいてくれる時、エリアーナは心からの笑顔を見せる。
病弱で、常にどこか儚げだった皇女殿下が見せる、あの生き生きとした表情。それは、ゼノが長年、彼女の護衛として仕えてきて、初めて見るものだった。

(ヤマト師匠こそ、エリアーナ様を、そしてこの帝国をお任せするにふさわしいお方かもしれん……)

ゼノの心の中では、忠実な騎士としての使命感と、二人の幸せを願う親心のような感情が、芽生え始めていた。
彼は、決意を固めた。
この二人の仲を、自分のできる限り、全力で応援しよう、と。

勘違いから始まった恋心と、同じく勘違いから生まれた応援団長の誕生。
大和本人だけが、そんな周囲の熱い想いに全く気づかないまま、今日もただ故郷の空を想うのだった。
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