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第28話
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貴族議会での一件は、ヴァリウス公爵の権威を大きく失墜させ、逆に大和の名声をさらに高める結果となった。
帝都の民衆は、権力に屈しない(と彼らには見えた)大和の姿に熱狂し、その人気はもはや皇族に匹敵するほどになっていた。
そんな中、帝国では年に一度の最大のイベントである『建国記念祭』の季節がやってきた。
街は華やかな装飾で彩られ、人々は祭りの熱気に浮き足立っている。その祭典の目玉として、帝国中から腕自慢の戦士が集い、最強を決める武術大会が開催されるのが恒例だった。
そして、その年の武術大会には、特別ゲストとして、英雄ヤマトがエキシビションマッチに出場することが、皇帝陛下直々の勅命で決定された。
「いやいやいや! 無理ですって! 俺、素人ですよ!?」
大和は、全力で辞退しようとした。
「師匠、ご謙遜を。師匠の神技を民に見せ、帝国の武威を示すまたとない機会ですぞ!」
ゼノが、目を輝かせて言う。
「そうですわ、ヤマト様。きっと、素晴らしい試合になりますわ!」
エリアーナも、うっとりとした表情で期待を寄せる。
またしても、外堀は完全に埋められていた。
大和は、巨大な円形闘技場(コロッセオ)の中央に、引きずられるようにして立たされていた。数万の観客が埋め尽くす客席から、割れんばかりの『ヤマト』コールが巻き起こっている。
「さあ、いよいよ本日のメインイベント! 我らが英雄、ヤマト様のエキシビションマッチであります!」
実況アナウンサーの絶叫が、闘技場に響き渡る。
「対するは、この日のために辺境の惑星より召喚された、伝説の闘士! 身の丈3メートル! 鋼鉄の鎧すらその爪で引き裂くという、獰猛なる戦闘種族『ゴライアス』の末裔! 鉄腕のバルトーーーッ!」
アナウンスと共に、対面のゲートから、巨大な影が現れた。
それは、まさしく怪物だった。筋骨隆々の肉体は赤黒い鱗で覆われ、背中からは角が生え、その腕は丸太のように太い。手にした巨大な戦斧は、それだけで人を数人は殺められそうな凶悪なデザインだ。
バルトと名乗られたその怪物は、闘技場に足を踏み出すと、咆哮を上げた。
「グオオオオ!」
その声だけで、闘技場の空気がビリビリと震える。観客席の子供が泣き出し、大人たちも顔を青くした。
(うわ……。プロレスラーみたいな人だな……)
大和は、そんな呑気な感想を抱いていた。
バルトは、目の前に立つ、自分より遥かに小柄で、何の変哲もない男(大和)を睨みつけた。
彼は、この日のために莫大な契約金で雇われた、裏社会のチャンピオンだった。相手が帝国の英雄だろうが関係ない。ここで勝てば、名声も富も、全てが手に入る。
闘志を燃やし、バルトはゆっくりと大和に歩み寄る。
一歩、また一歩。
その巨体から放たれる圧倒的な威圧感が、闘技場を支配していく。
観客は固唾を飲んで見守った。英雄ヤマトは、この恐るべき怪物にどう立ち向かうのか、と。
バルトは、大和の目の前、数メートルの距離で立ち止まった。
そして、大和の全身を、その血走った目で見定める。
……おかしい。
バルトは、首を傾げた。
目の前の男からは、何の威圧感も感じられない。殺気も、闘志も、何もない。まるで、道端に生えている草か、石ころでも見ているようだ。
(なんだ、こいつは……?本当に英雄なのか……?)
不審に思ったバルトは、さらに深く、大和の存在そのものを探ろうと、自身の感覚を研ぎ澄ませた。
その瞬間。
バルトの脳を、あり得ない情報が焼き尽くした。
見えない。
目の前にいるはずの男の、〝限界〟が。
それは、まるで底のない深淵を覗き込んでいるかのようだった。生命力、潜在能力、その全てが、彼の理解を、いや、生物としての本能的な常識を、遥かに超越している。
目の前にいるのは、人ではない。
人の形をした、〝何か〟だ。
自分ごときが、決して敵対してはならない、宇宙的な規模の、絶対的な存在。
「あ……あ……」
バルトの全身から、汗が滝のように噴き出した。
膝が、ガクガクと笑い始める。
あれほど燃え上がっていた闘志は、絶対的な恐怖の前では、風の前の塵に同じだった。
「し、試合開始!」
審判が、震える声でゴングを鳴らす。
その音を合図に、バルトは、白目を剥いて、その場にどさりと崩れ落ちた。
完全に、意識を失っている。泡まで吹いていた。
闘技場は、一瞬の静寂の後、爆発的な大歓声に包まれた。
「うおおおお! 見たか!」
「戦う前に、覇気だけで相手を失神させたぞ!」
「さすがはヤマト様だ!」
観客たちは、大和が放った(とされる)王者の覇気に、怪物が戦わずしてひれ伏したのだと解釈した。
一方、大和は、目の前で突然倒れた対戦相手を見て、きょとんとしていた。
「あれ? この人、大丈夫かな。もしかして、持病でもあるのかな……」
彼は、本気で心配そうに、倒れたバルトに駆け寄ろうとして、審判に止められるのだった。
帝都の民衆は、権力に屈しない(と彼らには見えた)大和の姿に熱狂し、その人気はもはや皇族に匹敵するほどになっていた。
そんな中、帝国では年に一度の最大のイベントである『建国記念祭』の季節がやってきた。
街は華やかな装飾で彩られ、人々は祭りの熱気に浮き足立っている。その祭典の目玉として、帝国中から腕自慢の戦士が集い、最強を決める武術大会が開催されるのが恒例だった。
そして、その年の武術大会には、特別ゲストとして、英雄ヤマトがエキシビションマッチに出場することが、皇帝陛下直々の勅命で決定された。
「いやいやいや! 無理ですって! 俺、素人ですよ!?」
大和は、全力で辞退しようとした。
「師匠、ご謙遜を。師匠の神技を民に見せ、帝国の武威を示すまたとない機会ですぞ!」
ゼノが、目を輝かせて言う。
「そうですわ、ヤマト様。きっと、素晴らしい試合になりますわ!」
エリアーナも、うっとりとした表情で期待を寄せる。
またしても、外堀は完全に埋められていた。
大和は、巨大な円形闘技場(コロッセオ)の中央に、引きずられるようにして立たされていた。数万の観客が埋め尽くす客席から、割れんばかりの『ヤマト』コールが巻き起こっている。
「さあ、いよいよ本日のメインイベント! 我らが英雄、ヤマト様のエキシビションマッチであります!」
実況アナウンサーの絶叫が、闘技場に響き渡る。
「対するは、この日のために辺境の惑星より召喚された、伝説の闘士! 身の丈3メートル! 鋼鉄の鎧すらその爪で引き裂くという、獰猛なる戦闘種族『ゴライアス』の末裔! 鉄腕のバルトーーーッ!」
アナウンスと共に、対面のゲートから、巨大な影が現れた。
それは、まさしく怪物だった。筋骨隆々の肉体は赤黒い鱗で覆われ、背中からは角が生え、その腕は丸太のように太い。手にした巨大な戦斧は、それだけで人を数人は殺められそうな凶悪なデザインだ。
バルトと名乗られたその怪物は、闘技場に足を踏み出すと、咆哮を上げた。
「グオオオオ!」
その声だけで、闘技場の空気がビリビリと震える。観客席の子供が泣き出し、大人たちも顔を青くした。
(うわ……。プロレスラーみたいな人だな……)
大和は、そんな呑気な感想を抱いていた。
バルトは、目の前に立つ、自分より遥かに小柄で、何の変哲もない男(大和)を睨みつけた。
彼は、この日のために莫大な契約金で雇われた、裏社会のチャンピオンだった。相手が帝国の英雄だろうが関係ない。ここで勝てば、名声も富も、全てが手に入る。
闘志を燃やし、バルトはゆっくりと大和に歩み寄る。
一歩、また一歩。
その巨体から放たれる圧倒的な威圧感が、闘技場を支配していく。
観客は固唾を飲んで見守った。英雄ヤマトは、この恐るべき怪物にどう立ち向かうのか、と。
バルトは、大和の目の前、数メートルの距離で立ち止まった。
そして、大和の全身を、その血走った目で見定める。
……おかしい。
バルトは、首を傾げた。
目の前の男からは、何の威圧感も感じられない。殺気も、闘志も、何もない。まるで、道端に生えている草か、石ころでも見ているようだ。
(なんだ、こいつは……?本当に英雄なのか……?)
不審に思ったバルトは、さらに深く、大和の存在そのものを探ろうと、自身の感覚を研ぎ澄ませた。
その瞬間。
バルトの脳を、あり得ない情報が焼き尽くした。
見えない。
目の前にいるはずの男の、〝限界〟が。
それは、まるで底のない深淵を覗き込んでいるかのようだった。生命力、潜在能力、その全てが、彼の理解を、いや、生物としての本能的な常識を、遥かに超越している。
目の前にいるのは、人ではない。
人の形をした、〝何か〟だ。
自分ごときが、決して敵対してはならない、宇宙的な規模の、絶対的な存在。
「あ……あ……」
バルトの全身から、汗が滝のように噴き出した。
膝が、ガクガクと笑い始める。
あれほど燃え上がっていた闘志は、絶対的な恐怖の前では、風の前の塵に同じだった。
「し、試合開始!」
審判が、震える声でゴングを鳴らす。
その音を合図に、バルトは、白目を剥いて、その場にどさりと崩れ落ちた。
完全に、意識を失っている。泡まで吹いていた。
闘技場は、一瞬の静寂の後、爆発的な大歓声に包まれた。
「うおおおお! 見たか!」
「戦う前に、覇気だけで相手を失神させたぞ!」
「さすがはヤマト様だ!」
観客たちは、大和が放った(とされる)王者の覇気に、怪物が戦わずしてひれ伏したのだと解釈した。
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