地球育ちの俺、銀河帝国では『伝説の古代種族』らしい。~拾われた宇宙船で無自覚に無双してたら、皇女様に求婚されました~

夏見ナイ

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第33話

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エリアーナを支えた腕をそっと離し、二人は再び庭園の小道をゆっくりと歩き始めた。先ほどの小さなアクシデントで、二人の間の空気は少しだけ甘く、そして気まずいものになっていた。

その沈黙を破ったのは、エリアーナだった。彼女は、潤んだ瞳で大和を見上げ、ずっと気になっていた純粋な疑問を口にした。

「ヤマト様……。不躾なことをお伺いしても、よろしいでしょうか」
「はい、何でしょう?」
「ヤマト様は、どうしてそんなに何でもお出来になるのですか? 屈強な騎士様ですら敵わないほどの御力で、私や人々を守り、私たちでは思いもつかないような知恵で、帝国をお救いになる。ヤマト様は、一体どのようなお方なのですか?」

その問いは、彼女が抱き続けてきた、偽りのない尊敬と好奇心から生まれたものだった。
大和は、またその手の質問かと、少し困ったように頬を掻いた。

「うーん、だから、俺は本当に普通なんですよ。力だって、別に強くないですし」
「ご謙遜を。あの巨大な広告塔を、片手でお支えになったではございませんか」
「ああ、あれですか。いや、あれは見た目よりずっと軽かったんですよ。多分、使われてる金属が特殊で、中身は空洞だったんじゃないかな。俺の故郷の地球だと、あの大きさの鉄の塊ってもっとこう、ずっしり重いんですけどね」

大和は、地球の常識を基準に、必死で自分の普通さを説明しようとした。
しかし、その言葉を聞いたエリアーナの反応は、彼の予想とは全く違っていた。

彼女は、はっと息を呑み、信じられないものを見るような目で大和を見つめた。
「チキュウでは……あれが、普通なのですか……? あれよりも、もっと重いものが、当たり前のように存在していると……?」

その、心からの驚愕に満ちた声。
その瞬間、大和の頭の中で、バラバラだったパズルのピースが、カチリと音を立ててはまるような感覚があった。

――そういえば、握力計を壊した時、船医は呆然としていた。
――廊下を走っただけで、床が軋み、人が吹き飛んだ。
――船のハッチのボルトは、指で簡単に捻じ切れた。
――宇宙海賊のビームは、ただの金属パイプで打ち返せた。
――晩餐会で出た硬い甲羅は、普通のナイフでバターのように切れた。
――騎士団の必殺剣は、指でつまんで止められた。

一つ一つの出来事が、脳裏に蘇る。
今まで、彼はその全てを「この宇宙の物質が脆い」「この星の人たちが虚弱だ」という方向で解釈してきた。

だが、もし。
もし、そうじゃないとしたら?

もし、この宇宙の基準が「普通」で、自分の、そして自分が育った「地球」の基準が、異常なのだとしたら?

「……もしかして」

大和は、自分の手のひらをじっと見つめた。
ごく普通の、ペンだこが少し硬くなった、三十手前の男の手だ。しかし、今、この手は、彼にとって全く未知のもののように見えていた。

「俺が、おかしいのか……?」

初めて抱いた、自分自身への疑念。
それは、まだ確信には遠い、漠然とした違和感だった。
だが、自分がとんでもない勘違いの世界に迷い込んでいるのかもしれないという可能性に、彼はこの時、ようやく、ほんの少しだけ気づき始めたのだった。

穏やかな休日の午後。
大和は、自分の存在そのものが持つ意味を、初めて真剣に考え始めていた。
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