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第34話
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自分自身が「異常」なのかもしれない。
その疑念は、大和の心に小さな棘のように突き刺さった。しかし、それを確かめる術もなく、かといって誰かに相談できるような内容でもない。結局、彼はその違和感を心の隅に押しやり、いつも通りの日常を送るしかなかった。
そんなある日、エリアーナが「ぜひ、ヤマト様にご覧いただきたい場所がありますの」と言って、大和を皇宮の外へと連れ出した。
行き先は、帝都の一角にある、大きな孤児院だった。
そこには、戦争や災害で親を亡くした、様々な年齢の子供たちが暮らしていた。エリアーナは、皇女として、定期的にこの孤児院を訪れ、子供たちを励ましているのだという。
「わあ! エリアーナ様だ!」
「こっちに来てー!」
エリアーナの姿を見つけると、庭で遊んでいた子供たちが、一斉に駆け寄ってくる。彼女は、一人一人と目線を合わせ、優しく頭を撫でていた。その姿は、まるで聖母のようだ。
やがて、子供たちの視線は、エリアーナの隣に立つ、見慣れない男――大和へと注がれた。
「このお兄ちゃんはだあれ?」
一人の小さな女の子が、こてんと首を傾げて尋ねる。
「この方は、ヤマト様。帝国をお救いになった、とても強くて優しい英雄ですわ」
エリアーナがそう紹介すると、子供たちの目がキラキラと輝き始めた。
「英雄!?」「かっこいい!」
子供たちは、物怖じすることなく大和の周りに集まり、興味津々で彼を見上げる。
「ねえ、英雄さん! 抱っこして!」
「ぼくも! 肩車してほしい!」
無邪気な要求に、大和は少し戸惑いながらも、苦笑いを浮かべた。
「はいはい、順番な」
彼は、最初に声をかけた小さな女の子を、ひょいと軽々と抱き上げた。
その瞬間、見ていた院長や職員たちの顔が、さっと青ざめた。
「な、何ということを! ヤマト様、おやめください!」
「子供とはいえ、その体重を片腕で支えるなど、腕の骨が折れてしまいます!」
彼らは本気で心配し、慌てて駆け寄ってくる。
しかし、大和はきょとんとした顔で、腕の中の少女を見下ろした。
「え? いや、全然軽いですよ? 羽みたいに」
その言葉通り、大和は少女を片腕で楽々と抱いたまま、もう片方の腕で、別の男の子をひょいと肩の上に乗せた。
「うわー! 高い! すごーい!」
子供たちの歓声が、庭に響き渡る。
大和は、そのままの体勢で、ゆっくりと庭を歩き始めた。
その光景は、周囲の大人たちの目には、信じがたいものとして映っていた。
帝国の成人男性ですら、子供一人を長時間抱きかかえるのは重労働だ。それを、二人同時に、それも片方は肩車で、涼しい顔で歩き回っている。物理的にありえない。
やがて、その噂を聞きつけた近隣の住民たちが、孤児院の周りに集まり始めた。
彼らが見たのは、大勢の子供たちに囲まれ、その体をジャングルジムのようにして遊ばれながら、少し困ったように、しかしどこまでも優しく微笑んでいる、一人の男の姿だった。
その姿は、もはやただの「英雄」ではなかった。
無垢な子供たちを、その無限とも思える力と慈愛で包み込む、まるで神話に描かれる慈愛に満ちた神そのもの。
民衆は、涙を流しながらその光景に手を合わせた。
「ああ……ヤマト様……」
「なんと、お優しい……」
大和本人は、ただ子供たちと遊んでいるだけだった。
だが、その何気ない日常の一コマが、彼の「神格化」を、また一段階、決定的に進めてしまったのだった。
その疑念は、大和の心に小さな棘のように突き刺さった。しかし、それを確かめる術もなく、かといって誰かに相談できるような内容でもない。結局、彼はその違和感を心の隅に押しやり、いつも通りの日常を送るしかなかった。
そんなある日、エリアーナが「ぜひ、ヤマト様にご覧いただきたい場所がありますの」と言って、大和を皇宮の外へと連れ出した。
行き先は、帝都の一角にある、大きな孤児院だった。
そこには、戦争や災害で親を亡くした、様々な年齢の子供たちが暮らしていた。エリアーナは、皇女として、定期的にこの孤児院を訪れ、子供たちを励ましているのだという。
「わあ! エリアーナ様だ!」
「こっちに来てー!」
エリアーナの姿を見つけると、庭で遊んでいた子供たちが、一斉に駆け寄ってくる。彼女は、一人一人と目線を合わせ、優しく頭を撫でていた。その姿は、まるで聖母のようだ。
やがて、子供たちの視線は、エリアーナの隣に立つ、見慣れない男――大和へと注がれた。
「このお兄ちゃんはだあれ?」
一人の小さな女の子が、こてんと首を傾げて尋ねる。
「この方は、ヤマト様。帝国をお救いになった、とても強くて優しい英雄ですわ」
エリアーナがそう紹介すると、子供たちの目がキラキラと輝き始めた。
「英雄!?」「かっこいい!」
子供たちは、物怖じすることなく大和の周りに集まり、興味津々で彼を見上げる。
「ねえ、英雄さん! 抱っこして!」
「ぼくも! 肩車してほしい!」
無邪気な要求に、大和は少し戸惑いながらも、苦笑いを浮かべた。
「はいはい、順番な」
彼は、最初に声をかけた小さな女の子を、ひょいと軽々と抱き上げた。
その瞬間、見ていた院長や職員たちの顔が、さっと青ざめた。
「な、何ということを! ヤマト様、おやめください!」
「子供とはいえ、その体重を片腕で支えるなど、腕の骨が折れてしまいます!」
彼らは本気で心配し、慌てて駆け寄ってくる。
しかし、大和はきょとんとした顔で、腕の中の少女を見下ろした。
「え? いや、全然軽いですよ? 羽みたいに」
その言葉通り、大和は少女を片腕で楽々と抱いたまま、もう片方の腕で、別の男の子をひょいと肩の上に乗せた。
「うわー! 高い! すごーい!」
子供たちの歓声が、庭に響き渡る。
大和は、そのままの体勢で、ゆっくりと庭を歩き始めた。
その光景は、周囲の大人たちの目には、信じがたいものとして映っていた。
帝国の成人男性ですら、子供一人を長時間抱きかかえるのは重労働だ。それを、二人同時に、それも片方は肩車で、涼しい顔で歩き回っている。物理的にありえない。
やがて、その噂を聞きつけた近隣の住民たちが、孤児院の周りに集まり始めた。
彼らが見たのは、大勢の子供たちに囲まれ、その体をジャングルジムのようにして遊ばれながら、少し困ったように、しかしどこまでも優しく微笑んでいる、一人の男の姿だった。
その姿は、もはやただの「英雄」ではなかった。
無垢な子供たちを、その無限とも思える力と慈愛で包み込む、まるで神話に描かれる慈愛に満ちた神そのもの。
民衆は、涙を流しながらその光景に手を合わせた。
「ああ……ヤマト様……」
「なんと、お優しい……」
大和本人は、ただ子供たちと遊んでいるだけだった。
だが、その何気ない日常の一コマが、彼の「神格化」を、また一段階、決定的に進めてしまったのだった。
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