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第37話
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帝国の不穏な空気など全く知らない大和は、その日も自室でのんびりと過ごしていた。
最近、エリアーナが持ってきてくれた帝国の歴史小説が意外に面白く、すっかり読書にハマってしまっていたのだ。
そんな彼のもとへ、エリアーナがお茶にやってくるのは、もはや日常の光景となっていた。
しかし、その日の彼女の様子は、いつもと少し違っていた。どこか思い詰めたような、緊張した面持ちをしている。
「ヤマト様……。今、少しだけ、お時間よろしいでしょうか」
「はい、もちろんです。どうかしましたか? 顔色が少し優れないようですが」
大和が心配して尋ねると、エリアーナはふるふると首を横に振った。
彼女は、侍女を下がらせ、部屋に二人きりになると、意を決したように口を開いた。
「あの……ヤマト様は、やはり、故郷のチキュウへお帰りになりたいのですよね?」
その問いに、大和は少し驚きながらも、正直に頷いた。
「ええ、まあ……。帰れるものなら、帰りたいと思っています」
その答えを聞いたエリアーナの表情が、一瞬、悲しそうに曇る。
彼女は、きゅっとドレスの裾を握りしめ、俯いていた顔を上げた。その瞳は、潤みながらも、強い決意の光を宿していた。
「もし……もしも、ですわ。ヤマト様がこの帝国に残ってくださる、という選択肢は……ございませんか?」
「え?」
大和は、彼女の言葉の意味がすぐには理解できなかった。
エリアーナは、続けた。
「ヤマト様がこの帝国に来てくださってから、私の毎日は、本当に変わりました。病弱だった体も、ヤマト様のおかげでこんなに元気になりました。今まで知らなかった、たくさんの楽しいこと、嬉しいことを、ヤマト様が教えてくださいました」
彼女の声は、微かに震えている。
「私は……ヤマト様がいない帝国なんて、もう考えられません。だから……お願いです。これからも、ずっと、私の……ううん、私たちのそばにいて、この帝国を、お守りいただけないでしょうか」
それは、皇女としての願いであると同時に、一人の少女としての、切実な告白だった。
「ずっと、そばにいてほしい」
その言葉の裏に隠された、彼女の純粋な好意。
さすがの大和も、その言葉の重みに気づかないほど鈍感ではなかった。
自分の心臓が、ドクン、と大きく脈打つのを感じる。
地球にいた頃も含めて、異性からこれほど真っ直ぐな好意を向けられた経験など、彼には一度もなかった。
「え、あ、あの……それは……」
どう答えていいか分からない。
嬉しい、という気持ちがないわけではない。だが、それ以上に、戸惑いが大きかった。
自分は、ただのしがないサラリーマンだ。彼女は、銀河帝国の皇女。住む世界が違いすぎる。
大和が、しどろもどろになっていると、エリアーナは自分の言ったことの重大さに今更ながら気づいたのか、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「ご、ごめんなさい! わ、私、おかしなことを……! 今のは、忘れてくださいませ!」
そう言って、彼女は逃げるように部屋を飛び出していってしまった。
一人残された大和は、しばらくの間、呆然と立ち尽くすしかなかった。
頬が、妙に熱い。心臓が、まだバクバクと音を立てている。
「……参ったな、これは」
ぽつりと漏れた呟きは、誰に聞かれることもなく、静かな部屋に消えていった。
彼の平穏だったはずの心は、可憐な皇女が投じた一石によって、大きく波紋を広げ始めていた。
最近、エリアーナが持ってきてくれた帝国の歴史小説が意外に面白く、すっかり読書にハマってしまっていたのだ。
そんな彼のもとへ、エリアーナがお茶にやってくるのは、もはや日常の光景となっていた。
しかし、その日の彼女の様子は、いつもと少し違っていた。どこか思い詰めたような、緊張した面持ちをしている。
「ヤマト様……。今、少しだけ、お時間よろしいでしょうか」
「はい、もちろんです。どうかしましたか? 顔色が少し優れないようですが」
大和が心配して尋ねると、エリアーナはふるふると首を横に振った。
彼女は、侍女を下がらせ、部屋に二人きりになると、意を決したように口を開いた。
「あの……ヤマト様は、やはり、故郷のチキュウへお帰りになりたいのですよね?」
その問いに、大和は少し驚きながらも、正直に頷いた。
「ええ、まあ……。帰れるものなら、帰りたいと思っています」
その答えを聞いたエリアーナの表情が、一瞬、悲しそうに曇る。
彼女は、きゅっとドレスの裾を握りしめ、俯いていた顔を上げた。その瞳は、潤みながらも、強い決意の光を宿していた。
「もし……もしも、ですわ。ヤマト様がこの帝国に残ってくださる、という選択肢は……ございませんか?」
「え?」
大和は、彼女の言葉の意味がすぐには理解できなかった。
エリアーナは、続けた。
「ヤマト様がこの帝国に来てくださってから、私の毎日は、本当に変わりました。病弱だった体も、ヤマト様のおかげでこんなに元気になりました。今まで知らなかった、たくさんの楽しいこと、嬉しいことを、ヤマト様が教えてくださいました」
彼女の声は、微かに震えている。
「私は……ヤマト様がいない帝国なんて、もう考えられません。だから……お願いです。これからも、ずっと、私の……ううん、私たちのそばにいて、この帝国を、お守りいただけないでしょうか」
それは、皇女としての願いであると同時に、一人の少女としての、切実な告白だった。
「ずっと、そばにいてほしい」
その言葉の裏に隠された、彼女の純粋な好意。
さすがの大和も、その言葉の重みに気づかないほど鈍感ではなかった。
自分の心臓が、ドクン、と大きく脈打つのを感じる。
地球にいた頃も含めて、異性からこれほど真っ直ぐな好意を向けられた経験など、彼には一度もなかった。
「え、あ、あの……それは……」
どう答えていいか分からない。
嬉しい、という気持ちがないわけではない。だが、それ以上に、戸惑いが大きかった。
自分は、ただのしがないサラリーマンだ。彼女は、銀河帝国の皇女。住む世界が違いすぎる。
大和が、しどろもどろになっていると、エリアーナは自分の言ったことの重大さに今更ながら気づいたのか、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「ご、ごめんなさい! わ、私、おかしなことを……! 今のは、忘れてくださいませ!」
そう言って、彼女は逃げるように部屋を飛び出していってしまった。
一人残された大和は、しばらくの間、呆然と立ち尽くすしかなかった。
頬が、妙に熱い。心臓が、まだバクバクと音を立てている。
「……参ったな、これは」
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