42 / 100
第42話
しおりを挟む
司令室の壁が崩れ落ち、そこからなだれ込んできたのは、黒い戦闘服に身を包んだ反乱軍の特殊部隊だった。彼らは、一切の躊躇なく、室内に向けてブラスターを乱射する。
「陛下をお守りしろ!」
ゼノと生き残っていた近衛騎士たちが、皇帝の前に立ちはだかり、剣でレーザーを弾き返す。だが、多勢に無勢。一人、また一人と、騎士たちが灼熱の光弾に焼かれて倒れていった。
「エリアーナ様、こちらへ!」
大和は、エリアーナの手を強く引き、司令室の奥へと駆け込んだ。爆風と粉塵が舞う中、彼はただ、彼女を守ることだけを考えていた。
しかし、敵の侵攻はあまりにも早かった。
別の扉を蹴破り、新たな部隊が回り込んでくる。あっという間に、彼らは完全に包囲されてしまった。
特殊部隊の兵士たちが、銃口を大和とエリアーナに向ける。その冷徹な目に、慈悲の色はない。
ゼノが、血を吐きながら叫んだ。
「師匠! エリアーナ様を頼む!」
彼は、最後の力を振り絞り、大和たちへの射線を塞ぐように、敵部隊へと突っ込んでいく。だが、その奮闘も長くは続かなかった。数発の銃弾が彼の体を貫き、ゼノはその場に崩れ落ちた。
「ゼノさん!」
大和の悲痛な叫びも虚しく、反乱軍の兵士たちは、ついに皇帝とエリアーナの前へと到達した。
部隊の指揮官らしき男が、皇帝の前に立つと、冷ややかに言った。
「皇帝陛下。ヴァリウス公爵閣下からのご命令です。これ以上の無益な抵抗はおやめいただき、ご投降いただきたい」
皇帝ガイウスは、倒れた騎士たちを静かに見渡すと、諦めたように、しかし威厳を失わずに息を吐いた。
「……よかろう。だが、条件がある。これ以上、民を傷つけるな。そして、皇女には手を出すな」
「ご安心を。我々が望むのは、帝国の秩序の回復のみ」
指揮官はそう言うと、部下たちに合図を送った。数人の兵士が皇帝を取り囲み、事実上の軟禁状態に置く。
そして、指揮官の冷たい目が、エリアーナに向けられた。
「皇女殿下にも、ご同行願います。あなたは、我々の〝大義〟を民に示すための、大切な象徴となっていただきますので」
その言葉の意味を理解し、エリアーナの顔から血の気が引いた。人質。自分は、父を、帝国を脅すための道具にされるのだ。
「嫌……!」
彼女は、咄嗟に大和の腕にしがみついた。
「ヤマト様……!」
兵士たちが、エリアーナを大和から引き離そうと、彼女の腕を掴む。
「やめろ! この子に触るな!」
大和は、思わず叫び、兵士の手を振り払おうとした。
その瞬間、別の兵士が、大和の後頭部をブラスターの銃床で、全力で殴りつけた。
ガンッ!
鈍い衝撃。
常人ならば、頭蓋骨が砕けて即死していてもおかしくない一撃。
大和の視界が、ぐにゃりと歪んだ。意識が、急速に遠のいていく。
「ヤマト様! ヤマト様!」
薄れゆく意識の中で、エリアーナの悲痛な叫び声だけが、やけにクリアに聞こえていた。
兵士たちに腕を引かれ、為す術なく連れ去られていく彼女の、絶望に染まった顔。
それが、大和が最後に見た光景だった。
彼の体は、糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
反乱軍の兵士は、ピクリとも動かなくなった大和を一瞥すると、蔑んだように吐き捨てた。
「なんだ、英雄と聞いていたが、案外脆いものだな」
彼らは知らない。
その一撃が、眠れる獅子の髭を、最も愚かな形で逆撫でしてしまったということを。
「陛下をお守りしろ!」
ゼノと生き残っていた近衛騎士たちが、皇帝の前に立ちはだかり、剣でレーザーを弾き返す。だが、多勢に無勢。一人、また一人と、騎士たちが灼熱の光弾に焼かれて倒れていった。
「エリアーナ様、こちらへ!」
大和は、エリアーナの手を強く引き、司令室の奥へと駆け込んだ。爆風と粉塵が舞う中、彼はただ、彼女を守ることだけを考えていた。
しかし、敵の侵攻はあまりにも早かった。
別の扉を蹴破り、新たな部隊が回り込んでくる。あっという間に、彼らは完全に包囲されてしまった。
特殊部隊の兵士たちが、銃口を大和とエリアーナに向ける。その冷徹な目に、慈悲の色はない。
ゼノが、血を吐きながら叫んだ。
「師匠! エリアーナ様を頼む!」
彼は、最後の力を振り絞り、大和たちへの射線を塞ぐように、敵部隊へと突っ込んでいく。だが、その奮闘も長くは続かなかった。数発の銃弾が彼の体を貫き、ゼノはその場に崩れ落ちた。
「ゼノさん!」
大和の悲痛な叫びも虚しく、反乱軍の兵士たちは、ついに皇帝とエリアーナの前へと到達した。
部隊の指揮官らしき男が、皇帝の前に立つと、冷ややかに言った。
「皇帝陛下。ヴァリウス公爵閣下からのご命令です。これ以上の無益な抵抗はおやめいただき、ご投降いただきたい」
皇帝ガイウスは、倒れた騎士たちを静かに見渡すと、諦めたように、しかし威厳を失わずに息を吐いた。
「……よかろう。だが、条件がある。これ以上、民を傷つけるな。そして、皇女には手を出すな」
「ご安心を。我々が望むのは、帝国の秩序の回復のみ」
指揮官はそう言うと、部下たちに合図を送った。数人の兵士が皇帝を取り囲み、事実上の軟禁状態に置く。
そして、指揮官の冷たい目が、エリアーナに向けられた。
「皇女殿下にも、ご同行願います。あなたは、我々の〝大義〟を民に示すための、大切な象徴となっていただきますので」
その言葉の意味を理解し、エリアーナの顔から血の気が引いた。人質。自分は、父を、帝国を脅すための道具にされるのだ。
「嫌……!」
彼女は、咄嗟に大和の腕にしがみついた。
「ヤマト様……!」
兵士たちが、エリアーナを大和から引き離そうと、彼女の腕を掴む。
「やめろ! この子に触るな!」
大和は、思わず叫び、兵士の手を振り払おうとした。
その瞬間、別の兵士が、大和の後頭部をブラスターの銃床で、全力で殴りつけた。
ガンッ!
鈍い衝撃。
常人ならば、頭蓋骨が砕けて即死していてもおかしくない一撃。
大和の視界が、ぐにゃりと歪んだ。意識が、急速に遠のいていく。
「ヤマト様! ヤマト様!」
薄れゆく意識の中で、エリアーナの悲痛な叫び声だけが、やけにクリアに聞こえていた。
兵士たちに腕を引かれ、為す術なく連れ去られていく彼女の、絶望に染まった顔。
それが、大和が最後に見た光景だった。
彼の体は、糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
反乱軍の兵士は、ピクリとも動かなくなった大和を一瞥すると、蔑んだように吐き捨てた。
「なんだ、英雄と聞いていたが、案外脆いものだな」
彼らは知らない。
その一撃が、眠れる獅子の髭を、最も愚かな形で逆撫でしてしまったということを。
13
あなたにおすすめの小説
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)
長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。
彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。
他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。
超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。
そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。
◆
「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」
「あらすじってそういうもんだろ?」
「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」
「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」
「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」
「ストレートすぎだろ、それ……」
「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」
◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる