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第44話
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意識が、ゆっくりと暗闇の底から浮上してくる。
ズキリ、と後頭部に鈍い痛みが走った。
「……う……」
大和は、ゆっくりと目を開けた。
視界に映ったのは、崩れ落ちた司令室の天井と、赤い非常灯の明かり。焦げ臭い匂いと、微かな血の匂いが鼻をつく。
自分が、気を失っていたことを理解するのに、数秒かかった。
(エリアーナ様は……!?)
記憶が、フラッシュバックする。
兵士たちに腕を引かれ、絶望的な表情で連れ去られていった、彼女の姿。
「っ!」
大和は、勢いよく体を起こした。
全身をスキャンする。痛みは、後頭部の打撲だけ。それも、地球で机の角に頭をぶつけた時よりも、ずっと軽い痛みだ。
自分の体の異常なまでの頑丈さに、今、彼は心から感謝していた。
「誰か……誰か、いませんか!」
大和が叫ぶと、瓦礫の影から、うめき声が聞こえた。
見ると、一人の若い近衛騎士が、足を負傷して倒れていた。彼は、司令室での戦闘で死んだふりをして、何とか生き延びていたのだ。
「ヤマト様……! ご無事でしたか……!」
「君こそ、大丈夫か! 今、何がどうなってる!?」
大和は、騎士に駆け寄り、その肩を支えた。
騎士は、苦痛に顔を歪めながらも、途切れ途切れに状況を説明した。
皇帝陛下は捕らえられ、皇宮の中央塔に軟禁されていること。
そして、エリアーナ様は、おそらく人質として、反乱軍の旗艦へと移送されるだろう、ということ。
ゼノ団長たちが、今もどこかで必死に抵抗を続けているが、それも時間の問題だということ。
絶望的な報告。
その中で、一つの言葉が、大和の心に鋭く突き刺さった。
「エリアーナ様は……ヴァリウス公爵の手に落ちれば、ただでは済みますまい。公爵は、自身の正当性を示すため、エリアーナ様を無理やりにでも自分の傀儡とし、民衆の前に立たせるはず。もし、彼女がそれを拒めば……その命すら……」
その先の言葉は、聞きたくなかった。
大和の脳裏に、エリアーナの笑顔が浮かんだ。
いつも、少し恥ずかしそうに、しかし真っ直ぐに自分を見つめてくれた、あの瞳。
自分のために、一生懸命になってくれた、あの健気な姿。
「ずっと、そばにいてほしい」と、震える声で告げてくれた、あの日のこと。
彼女を、そんな目に遭わせてたまるか。
その瞬間、大和の中で、何かが、ぷつりと切れた。
今まで彼を縛っていた、無力感や、戸惑い、流されるだけの受け身の姿勢。その全てが、吹き飛んだ。
腹の底から、熱い何かが込み上げてくる。
それは、純粋な、そして猛烈な怒りだった。
「……ふざけるなよ」
低い、地を這うような声が、大和の口から漏れた。
その声の響きに、負傷した騎士がびくりと体を震わせる。
今まで見てきた、温厚で、どこか頼りない英雄ヤマトの姿は、そこにはなかった。
そこにいたのは、静かな、しかし触れれば斬られそうなほどに鋭い闘気を放つ、一人の戦士だった。
「なあ」
大和は、騎士に静かに尋ねた。
「俺がいた屋敷は、どっちだ?」
「え……? あ、あちらの方角ですが……」
大和は、こくりと頷くと、ゆっくりと立ち上がった。
その目に、もはや迷いはなかった。
「あの子を、助けなきゃ」
その、ごく個人的で、シンプルな想い。
それが、彼を動かす、たった一つの理由だった。
勘違いの英雄は、今、初めて自らの意思で、戦いに身を投じようとしていた。
ズキリ、と後頭部に鈍い痛みが走った。
「……う……」
大和は、ゆっくりと目を開けた。
視界に映ったのは、崩れ落ちた司令室の天井と、赤い非常灯の明かり。焦げ臭い匂いと、微かな血の匂いが鼻をつく。
自分が、気を失っていたことを理解するのに、数秒かかった。
(エリアーナ様は……!?)
記憶が、フラッシュバックする。
兵士たちに腕を引かれ、絶望的な表情で連れ去られていった、彼女の姿。
「っ!」
大和は、勢いよく体を起こした。
全身をスキャンする。痛みは、後頭部の打撲だけ。それも、地球で机の角に頭をぶつけた時よりも、ずっと軽い痛みだ。
自分の体の異常なまでの頑丈さに、今、彼は心から感謝していた。
「誰か……誰か、いませんか!」
大和が叫ぶと、瓦礫の影から、うめき声が聞こえた。
見ると、一人の若い近衛騎士が、足を負傷して倒れていた。彼は、司令室での戦闘で死んだふりをして、何とか生き延びていたのだ。
「ヤマト様……! ご無事でしたか……!」
「君こそ、大丈夫か! 今、何がどうなってる!?」
大和は、騎士に駆け寄り、その肩を支えた。
騎士は、苦痛に顔を歪めながらも、途切れ途切れに状況を説明した。
皇帝陛下は捕らえられ、皇宮の中央塔に軟禁されていること。
そして、エリアーナ様は、おそらく人質として、反乱軍の旗艦へと移送されるだろう、ということ。
ゼノ団長たちが、今もどこかで必死に抵抗を続けているが、それも時間の問題だということ。
絶望的な報告。
その中で、一つの言葉が、大和の心に鋭く突き刺さった。
「エリアーナ様は……ヴァリウス公爵の手に落ちれば、ただでは済みますまい。公爵は、自身の正当性を示すため、エリアーナ様を無理やりにでも自分の傀儡とし、民衆の前に立たせるはず。もし、彼女がそれを拒めば……その命すら……」
その先の言葉は、聞きたくなかった。
大和の脳裏に、エリアーナの笑顔が浮かんだ。
いつも、少し恥ずかしそうに、しかし真っ直ぐに自分を見つめてくれた、あの瞳。
自分のために、一生懸命になってくれた、あの健気な姿。
「ずっと、そばにいてほしい」と、震える声で告げてくれた、あの日のこと。
彼女を、そんな目に遭わせてたまるか。
その瞬間、大和の中で、何かが、ぷつりと切れた。
今まで彼を縛っていた、無力感や、戸惑い、流されるだけの受け身の姿勢。その全てが、吹き飛んだ。
腹の底から、熱い何かが込み上げてくる。
それは、純粋な、そして猛烈な怒りだった。
「……ふざけるなよ」
低い、地を這うような声が、大和の口から漏れた。
その声の響きに、負傷した騎士がびくりと体を震わせる。
今まで見てきた、温厚で、どこか頼りない英雄ヤマトの姿は、そこにはなかった。
そこにいたのは、静かな、しかし触れれば斬られそうなほどに鋭い闘気を放つ、一人の戦士だった。
「なあ」
大和は、騎士に静かに尋ねた。
「俺がいた屋敷は、どっちだ?」
「え……? あ、あちらの方角ですが……」
大和は、こくりと頷くと、ゆっくりと立ち上がった。
その目に、もはや迷いはなかった。
「あの子を、助けなきゃ」
その、ごく個人的で、シンプルな想い。
それが、彼を動かす、たった一つの理由だった。
勘違いの英雄は、今、初めて自らの意思で、戦いに身を投じようとしていた。
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