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第53話
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ついに、中央塔の最上階へと続く、最後の扉の前に立った大和。
その扉は、これまでとは比べ物にならないほど巨大で、荘厳な装飾が施されていた。皇帝が最も重要な儀式を行う、「天空の間」と呼ばれる部屋の扉だ。そして、おそらく、皇帝が軟禁されている場所でもある。
大和が扉に手をかけようとした、その時だった。
『――そこまでだ、ヤマト』
扉そのものから、スピーカーを通して、威厳のある声が響き渡った。
ヴァリウス公爵の声だ。
『貴様の、化け物じみた進撃、実に見事であった。我が用意した数々の罠を、こうも容易く突破するとはな。だが、それもここまでだ』
その言葉と共に、大和の周囲の壁や天井が、音を立てて展開し始めた。
隠されていた無数の砲台が、一斉に姿を現す。
それは、中央塔そのものが、一つの巨大な兵器と化していることを意味していた。
塔の最終防衛システム『神の鉄槌』。皇宮が創られて以来、一度も起動したことのない、伝説の迎撃システムだ。
『その砲台は、塔のジェネレーターから直接エネルギー供給を受けている。威力、連射速度、共に先ほどの玩具とは比較にならん。そして、貴様が立っているその床は、数千度のプラズマで瞬時に焼き尽くすことが可能だ。チェックメイトだ、ヤマト』
ヴァリウスの声には、絶対的な勝利への確信が満ち溢れていた。
四方八方、三百六十度、完全に死角のない砲門の群れ。足元から焼き尽くすプラズマの床。
逃げ場は、どこにもない。
「……」
大和は、黙って周囲を見渡した。
確かに、これはまずいかもしれない。彼は、初めて、ほんの少しだけ焦りを感じていた。
だが、彼の思考は、決して諦めてはいなかった。
ジェネレーターから、直接エネルギー供給。
その言葉が、彼の頭に引っかかった。
(つまり、この塔全体が、一つの巨大な電気製品みたいなものか……)
ならば。
大前提を、崩せばいい。
この巨大な「電気製品」の、電源を。
彼は、床に視線を落とした。
頑丈そうな金属の床。だが、その隅に、メンテナンス用と思われる、小さなハッチがあるのが見えた。
『どうした、ヤマト。己の運命を悟り、言葉も出まいか。潔く、その場でひれ伏すがいい!』
ヴァリウスの、嘲笑が響く。
大和は、その言葉を無視し、メンテナンスハッチの前まで歩いていった。
そして、その分厚い金属の蓋を、指先で、まるで缶詰の蓋でも開けるかのように、ぺりぺりと引き剥がした。
ハッチの下には、赤、青、黄色、様々な色のケーブルが、複雑に絡み合って走っていた。
塔の、大動脈と言うべき、エネルギー供給ラインだ。
大和は、何を思ったか、そのケーブルの束を、両手で、がしりと掴んだ。
『な、何をする気だ……?』
ヴァリウスの声に、初めて困惑の色が浮かぶ。
大和は、答えない。
ただ、渾身の力を込めて、そのケーブルの束を、引きちぎろうとした。
「んんんんんんっ!」
さすがに、簡単にはいかなかった。
極太のケーブルは、彼の怪力に、必死に抵抗する。
彼の腕の筋肉が、みしりと音を立てて隆起した。
ブチッ! ブチブチブチッ!
凄まじい音と共に、ケーブルの束が、根本から、まとめて引きちぎられた。
切断面から、莫大なエネルギーが火花となって噴出し、大和の全身を青白い光で包む。
そして。
ガコンッ、という重い音を最後に、世界は、完全な静寂と、暗闇に包まれた。
壁に展開していた無数の砲台は、沈黙した。
足元の床から聞こえていた、プラズマのチャージ音も、止んだ。
塔の、全ての機能が、停止したのだ。
『ば……ばかな……』
スピーカーから、かろうじて予備電源で繋がっているヴァリウスの、信じられないといった、かすれた声が聞こえてくる。
「神の鉄槌」は、起動することなく、沈黙した。
その理由は、あまりにも原始的で、あまりにも馬鹿げたもの。
――電源ケーブルを、力ずくで、引きっこ抜かれたから。
大和は、まだビリビリと痺れている手を振りながら、静かに呟いた。
「ブレーカーを落とせば、家電は止まる。常識だろ?」
その「常識」は、この宇宙の誰にも、理解できなかった。
その扉は、これまでとは比べ物にならないほど巨大で、荘厳な装飾が施されていた。皇帝が最も重要な儀式を行う、「天空の間」と呼ばれる部屋の扉だ。そして、おそらく、皇帝が軟禁されている場所でもある。
大和が扉に手をかけようとした、その時だった。
『――そこまでだ、ヤマト』
扉そのものから、スピーカーを通して、威厳のある声が響き渡った。
ヴァリウス公爵の声だ。
『貴様の、化け物じみた進撃、実に見事であった。我が用意した数々の罠を、こうも容易く突破するとはな。だが、それもここまでだ』
その言葉と共に、大和の周囲の壁や天井が、音を立てて展開し始めた。
隠されていた無数の砲台が、一斉に姿を現す。
それは、中央塔そのものが、一つの巨大な兵器と化していることを意味していた。
塔の最終防衛システム『神の鉄槌』。皇宮が創られて以来、一度も起動したことのない、伝説の迎撃システムだ。
『その砲台は、塔のジェネレーターから直接エネルギー供給を受けている。威力、連射速度、共に先ほどの玩具とは比較にならん。そして、貴様が立っているその床は、数千度のプラズマで瞬時に焼き尽くすことが可能だ。チェックメイトだ、ヤマト』
ヴァリウスの声には、絶対的な勝利への確信が満ち溢れていた。
四方八方、三百六十度、完全に死角のない砲門の群れ。足元から焼き尽くすプラズマの床。
逃げ場は、どこにもない。
「……」
大和は、黙って周囲を見渡した。
確かに、これはまずいかもしれない。彼は、初めて、ほんの少しだけ焦りを感じていた。
だが、彼の思考は、決して諦めてはいなかった。
ジェネレーターから、直接エネルギー供給。
その言葉が、彼の頭に引っかかった。
(つまり、この塔全体が、一つの巨大な電気製品みたいなものか……)
ならば。
大前提を、崩せばいい。
この巨大な「電気製品」の、電源を。
彼は、床に視線を落とした。
頑丈そうな金属の床。だが、その隅に、メンテナンス用と思われる、小さなハッチがあるのが見えた。
『どうした、ヤマト。己の運命を悟り、言葉も出まいか。潔く、その場でひれ伏すがいい!』
ヴァリウスの、嘲笑が響く。
大和は、その言葉を無視し、メンテナンスハッチの前まで歩いていった。
そして、その分厚い金属の蓋を、指先で、まるで缶詰の蓋でも開けるかのように、ぺりぺりと引き剥がした。
ハッチの下には、赤、青、黄色、様々な色のケーブルが、複雑に絡み合って走っていた。
塔の、大動脈と言うべき、エネルギー供給ラインだ。
大和は、何を思ったか、そのケーブルの束を、両手で、がしりと掴んだ。
『な、何をする気だ……?』
ヴァリウスの声に、初めて困惑の色が浮かぶ。
大和は、答えない。
ただ、渾身の力を込めて、そのケーブルの束を、引きちぎろうとした。
「んんんんんんっ!」
さすがに、簡単にはいかなかった。
極太のケーブルは、彼の怪力に、必死に抵抗する。
彼の腕の筋肉が、みしりと音を立てて隆起した。
ブチッ! ブチブチブチッ!
凄まじい音と共に、ケーブルの束が、根本から、まとめて引きちぎられた。
切断面から、莫大なエネルギーが火花となって噴出し、大和の全身を青白い光で包む。
そして。
ガコンッ、という重い音を最後に、世界は、完全な静寂と、暗闇に包まれた。
壁に展開していた無数の砲台は、沈黙した。
足元の床から聞こえていた、プラズマのチャージ音も、止んだ。
塔の、全ての機能が、停止したのだ。
『ば……ばかな……』
スピーカーから、かろうじて予備電源で繋がっているヴァリウスの、信じられないといった、かすれた声が聞こえてくる。
「神の鉄槌」は、起動することなく、沈黙した。
その理由は、あまりにも原始的で、あまりにも馬鹿げたもの。
――電源ケーブルを、力ずくで、引きっこ抜かれたから。
大和は、まだビリビリと痺れている手を振りながら、静かに呟いた。
「ブレーカーを落とせば、家電は止まる。常識だろ?」
その「常識」は、この宇宙の誰にも、理解できなかった。
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