地球育ちの俺、銀河帝国では『伝説の古代種族』らしい。~拾われた宇宙船で無自覚に無双してたら、皇女様に求婚されました~

夏見ナイ

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第58話

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『ナイトメア、撃破……。ライルも、沈黙……』
『第一防衛艦隊、皇宮宙域に到達! 我が軍との交戦を開始しました!』
『地上部隊、近衛騎士団の残党と、蜂起した皇帝派の兵士たちに押されています! 各地で防衛ラインが突破され……!』

反乱軍の旗艦『テュポーン』のブリッジに、次々と絶望的な報告が舞い込んでくる。
つい先ほどまでの、圧倒的な優勢が、嘘のようだ。
たった一人の男の出現と、通信機能の回復。
それだけで、完璧だったはずの計画は、砂の城のように、脆くも崩れ去ろうとしていた。

ヴァリウス公爵は、玉座に深く腰掛け、モニターに映る惨状を、無表情で見ていた。
その目は、もはや怒りも、焦りも、浮かべてはいない。
ただ、全てを諦めたような、虚無の色を湛えているだけだった。

「……ここまで、か」

ぽつりと、呟きが漏れる。
長年の野望。周到な準備。その全てが、水泡に帰す。
それも、どこの馬の骨とも知れぬ、たった一人の男によって。

「公爵閣下! もはや、これまでです! ここは、一時撤退を……!」
副官が、必死の形相で進言する。
だが、ヴァリウスは、静かに首を横に振った。

「撤退? どこへ?」
彼は、自嘲するように笑った。
「この帝国に、もはや、我々の居場所などない。ならば」

その虚無を湛えていた目に、再び、狂的な光が宿った。
それは、破滅を覚悟した者だけが持つ、危険な輝きだった。

「ならば、全てを、道連れにするまで」

ヴァリウスは、ゆっくりと玉座から立ち上がると、ブリッジの最奥にある、厳重に封印されたコンソールへと歩み寄った。
そのコンソールには、歴代の皇帝ですら、その存在を恐れ、固く封印してきた、禁断のスイッチがあった。

「閣下! まさか、それをお使いになるおつもりですか!?」
「あれは、制御不能の破壊神ですぞ! 帝都そのものが、消滅しかねません!」

副官たちが、血相を変えて止めようとする。
だが、ヴァリウスは、彼らを冷たく一瞥した。
「退がれ。この期に及んで、まだ命が惜しいか」

その気迫に、誰もが押し黙る。

ヴァリウスは、コンソールに、自らの遺伝子情報と、パスコードを打ち込んでいく。
何重にもかけられた、厳重なロックが、次々と解除されていく。

『最終安全装置、解除。古代兵器起動シーケンス、スタンバイ』

無機質な合成音声が、ブリッジに響き渡った。

ヴァリウスは、全ての元凶である、モニターの中の男――ヤマトの姿を、憎悪に満ちた目で見据えた。
「ヤマト……。貴様が、何者であろうと、もはや関係ない。神であろうと、悪魔であろうと、この絶対的な破壊の前には、等しく無力だということを、その身をもって知るがいい」

そして、彼は、ためらうことなく、起動スイッチを、押し込んだ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

皇宮の、いや、帝都アストリアの、大地そのものが、大きく、そして長く、揺れ始めた。
それは、地震などという、生易しいものではない。
地下深くで、数千年間、眠りについていた、何かが、目を覚ます、産声だった。

帝都の民も、兵士たちも、何が起こったのか分からず、ただ、その異常な振動に、天変地異の始まりを感じていた。

禁断のスイッチは、押された。
帝国の、そして、この星の、本当の終わりが、今、始まろうとしていた。
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