地球育ちの俺、銀河帝国では『伝説の古代種族』らしい。~拾われた宇宙船で無自覚に無双してたら、皇女様に求婚されました~

夏見ナイ

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第59話

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大地が、割れた。
帝都アストリアの中心部、数百年前に造られた、歴史的な公園地区。その地面が、まるで巨大な口が開くかのように、左右に裂けていく。
地割れは、瞬く間に巨大な亀裂となり、その暗い底から、何かが、ゆっくりとせり上がってきた。

それは、兵器と呼ぶには、あまりにも巨大で、そして異質だった。
黒曜石を削り出したかのような、滑らかで、継ぎ目のない黒い装甲。生物的な曲線と、幾何学的な直線が、不気味に融合したデザイン。それは、帝国のどの兵器とも、全く異なる設計思想で作られていた。
全長は、数百メートルに達するだろうか。それは、もはや「ロボット」というよりも、一つの「建造物」が、意思を持って動き出したかのような光景だった。

アストレア銀河帝国建国の、さらに遥か昔。
この星に、かつて存在したという、超古代文明の遺産。
自律型殲滅兵器『ラグナロク』。
それが、今、数千年の眠りから覚め、その禍々しい姿を、帝都の空の下に現したのだ。

『目標、ロックオン。エネルギー充填、120パーセント』

ラグナロクの、無機質な合成音声が、周囲の空間に、直接響き渡る。
その、巨大な体の中央部が、音もなくスライドし、内部から、巨大なレンズのような主砲が姿を現した。

主砲の先端に、光が収束していく。
それは、ナイトメアのビームなど、子供の玩具に思えるほどの、圧倒的なエネルギーの奔流。
凝縮された光は、黒い点――特異点のような様相を呈し、周囲の空間を、ぐにゃりと歪ませていた。

そして。
それは、放たれた。

音は、なかった。
ただ、一筋の、黒い線が、空を切り裂いた。
その線が触れた、帝都の一角。高層ビルが立ち並び、数百万人が暮らす居住区。
その全てが、一瞬で、〝消滅〟した。

爆発ではない。燃焼でもない。
ただ、そこに存在していた、あらゆる物質が、分子レベルで分解され、無に帰したのだ。
後に残されたのは、綺麗に、そして滑らかに抉り取られた、巨大な半球状のクレーターだけだった。

その、あまりにも現実離れした、神の御業のような破壊。
それを見ていた、帝都の全ての人々が、言葉を失った。

反乱軍も、皇帝派も、もはや関係ない。
誰もが、己の理解を超えた、絶対的な「死」を前に、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

皇宮の中央塔の屋上で、その光景を見ていた大和も、さすがに、顔をこわばらせていた。
「……なんだよ、あれは」

これまで彼が対峙してきた、どんな兵器とも、次元が違う。
あれは、生物が、扱っていい力の範疇を、完全に超えている。
本能的な、危険信号が、彼の頭の中で、けたたましく鳴り響いていた。

ラグナロクは、一撃で都市の一部を消滅させると、次の目標を探すように、その巨大な頭部を、ゆっくりと動かし始めた。
そして、その赤い単眼センサーが、皇宮――大和がいる、中央塔の方向を、ピタリと捉えた。

『次なる目標、ロックオン。殲滅を開始する』

再び、その主砲に、終焉の光が、収束を始める。
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