追放された【ガチャ師】の俺、鑑定不能のゴミアイテムばかり出ると思いきや、実は神話級の遺物だった件

夏見ナイ

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第十八話 星への祈り

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エリアナが祈りを捧げ始めた瞬間、廃教会の空気が変わった。彼女の閉じた瞼から、一筋の涙が静かに流れ落ちる。それは呪いを嘆く悲しみの涙ではなかった。初めて自分の力を肯定しようとする、決意の涙だった。

彼女の体から、純粋な聖なる力が光のオーラとなって溢れ出す。その光は、レクスとエリアナが重ねた手に握られたアンデッドの魔石へと注ぎ込まれていった。邪悪な気配を放っていた黒い魔石が、聖なる光に浄化され、次第に透明な輝きを帯びていく。

「これが……私の力……」

エリアナ自身も、その光景に驚いていた。彼女の銀色の髪が淡く輝き、その光は教会全体に広がっていく。蜘蛛の巣が張っていた窓枠が、砕けたステンドグラスの破片が、その光を浴びて宝石のようにきらめいた。荒廃していた聖堂が、一時的にかつての神聖さを取り戻したかのようだった。

(今だ!)

レクスはこの好機を逃さなかった。彼は集中力を高め、スキルを発動する。

【ガチャ師】。

エリアナの祈り。浄化された魔石。そしてレクスが懐から取り出した聖なる泉の水。三つの要素が触媒となり、これまでとは全く質の違うガチャが始まった。
レクスの手の中で、魔石が眩い光の奔流と化す。それは単色ではない。まるで夜空そのものを溶かしたかのような、無数の星屑が乱舞する深淵の光だった。

「グオオオ……」

光の中から、荘厳な音が響き渡る。それは破壊の咆哮ではなく、星々が生まれる創生の詩のようだった。

やがて、凄まじい光が収束していく。レクスの手のひらの上に残されたのは、一つの宝石だった。
それは、夜の雫をそのまま固めたような、美しい涙滴型の宝石だった。深く澄んだ蒼色の中には、まるで本物の星々が瞬いている。見ているだけで、吸い込まれそうなほどの神秘的な輝きを放っていた。

レクスは息を飲み、その宝石を鑑定する。

【星の力を宿す涙石】
・神話級遺物の素材。
・遥か古代の星空の輝きを宿しており、強大な聖なる力を安定させる性質を持つ。

「……やったぞ、エリアナ!」

レクスの歓喜の声に、エリアナはゆっくりと目を開けた。彼女は自分の目の前にある、信じられないほど美しい宝石を見て言葉を失う。自分の呪われた力から、こんなにも綺麗なものが生まれた。その事実が、彼女の心を強く揺さぶった。

レクスは立ち上がると、地下の泉で汲んできた水筒を取り出した。そして、石版の記述通り、その聖なる水を【星の力を宿す涙石】に静かに注いだ。

水滴が宝石に触れた瞬間、再び光が溢れ出した。涙石はひとりでに宙に浮き、その周囲に白銀の鎖が編み上げられていく。聖なる泉の水が、月光の鎖へと姿を変えたのだ。
光が収まった時、そこには一本の美しいペンダントがあった。夜空の涙石を、月光の鎖が優しく包み込んでいる。

【星涙のペンダント】
・神話級装飾品。
・所有者の聖なる力を安定させ、その暴走を防ぐ。
・魔力の消耗を大幅に軽減し、治癒魔法の効果を増幅させる。

ついに、エリアナを解放するための鍵が完成した。
レクスはそのペンダントを手に、エリアナへと向き直る。彼女はまだ、目の前で起きた奇跡が信じられないといった様子で、呆然と立ち尽くしていた。

「エリアナ」

レクスは優しく呼びかけた。
「君はもう、偽りの聖女なんかじゃない」

彼はその手に輝く【星涙のペンダント】を、彼女の前に差し出した。
これが、彼女の本当の力を、そして本当の人生を取り戻すための、最初の一歩となる。
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