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第二十二話 母の形見と勇者の不協和音
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「思い出の品、ですか……」
ゲオルグは腕を組み、深く考え込んだ。彼は使用人たちにも尋ねて回ったが、これといったものはすぐに見つからなかった。娘のアンナは物欲に乏しく、高価な宝飾品やドレスにもほとんど興味を示さない、心優しい少女だったからだ。
「アンナお嬢様は、いつも庭の花を愛でておられました」
「本が好きで、図書室によくおられましたな」
使用人たちの話す思い出は、どれも彼女の穏やかな人柄を示すものばかりで、特定の「物」には結びつかない。ゲオルグが諦めかけたその時、彼はふと一つの記憶を思い出した。
「……そうだ。妻の形見があった」
ゲオルグは書斎の奥にある金庫から、小さなビロードの箱を取り出してきた。箱の中には、古びた銀のロケットペンダントが一つ、静かに収められている。
「これは、アンナが生まれてすぐに亡くなった、妻の形見でしてな。アンナは幼い頃から、これを肌身離さず身に着けておりました。病に倒れてからは、私が……」
ゲオルグはペンダントを手に取り、そっと蓋を開ける。中には、色褪せた小さな肖像画がはめ込まれていた。若き日のゲオルグと、優しげに微笑む妻、そしてその腕に抱かれた赤ん坊のアンナ。三人の幸せな時間が、そこに閉じ込められていた。
「これです」
ノアは、そのペンダントから放たれる温かい魔力の波動を感じ取り、確信した。母の愛情、父の想い、そしてアンナ自身の記憶。これ以上に、彼女の魂と強く結びついた品はない。
「これをお借りします。必ず、お嬢さんの力になるものにしてみせます」
ノアがペンダントを受け取ると、ゲオルグは深く頭を下げた。
その頃、ノアたちが知らない場所で、かつての仲間たちは苦境に立たされていた。
「ぐっ……! オリヴィア、回復を!」
暗い迷宮の通路で、騎士ライオネルがオーガの棍棒を受け止め、その巨体を震わせる。彼の鎧はへこみ、盾には深い亀裂が入っていた。
「はい! 『上級治癒』!」
聖女オリヴィアが必死に回復魔法をかけるが、敵の攻撃は苛烈で、彼女の魔力はじりじりと削られていく。
「アイザック! 何をやっている! 早く援護しろ!」
勇者アレスが、焦燥に満ちた声で怒鳴る。
「分かっています! ですが、敵の動きが速すぎて照準が……!」
魔術師アイザックの放つ炎の槍は、ことごとくオーガにかわされ、壁を焦がすだけだった。ノアがいた頃は、彼のデバフで敵の動きは鈍り、魔法を当てるのは容易だった。だが今は、その恩恵がどこにもない。
(ノアがいれば……)
パーティの誰もが、口には出さないものの、同じことを考えていた。彼の地味で不吉な呪いが、どれほど自分たちの生命線だったのか。失って初めて、その価値を痛感していた。
「ええい、役立たずどもめ!」
アレスは悪態をつき、聖剣を構えて一人で突っ込んだ。彼の力は確かに強い。だが、敵の攻撃を一身に受ける盾役も、確実に敵の動きを止める支援役もいない状況では、その力も十全には発揮できない。
戦いは辛くも勝利したものの、パーティの消耗は激しく、雰囲気は最悪だった。誰もが疲弊し、互いを責めるような視線を交わす。彼らの間には、修復不可能な亀裂が、静かに広がり始めていた。
一方、ゲオルグの屋敷の一室は、ノアのための臨時工房と化していた。
エリオが部屋の四隅に魔力安定の結界を張り、クロエは扉の前で警護につき、不測の事態に備える。ルナは、ノアの状態を冷静に観察し、必要な指示を出せるよう控えていた。
「始めます」
ノアは金床の上にロケットペンダントを置き、深く息を吸った。今回は、金属を叩き潰すような荒々しい錬成ではない。魂に語りかけるような、繊細な作業が求められる。
「【呪物錬成】」
ノアの指先から、黒い靄が立ち上り、ペンダントにゆっくりと触れた。その瞬間、ペンダントから淡い光のバリアのようなものが放たれ、ノアの呪力を激しく弾いた。
「くっ……!」
ノアは歯を食いしばる。アンナの魂を守る「守護の呪い」が、ノアの力を敵と見なして抵抗しているのだ。
(違う。俺は、破壊しに来たんじゃない)
ノアは心の中で強く念じる。自分の呪いは、破壊ではなく調和をもたらす力だ。アンナを苦しめるのではなく、その苦しみごと抱きしめ、新たな力に変えるためのものだと。
ノアは、ペンダントに込められた家族の愛情、その温かい記憶に語りかけるように、慎重に、そして優しく呪力を流し込んでいく。抵抗していた守護の呪いが、少しずつノアの意志を受け入れ、その力を和らげていくのが分かった。
黒い靄は、銀のペンダントに染み込むように溶け込んでいく。
長い、長い時間が過ぎた。
ノアが顔を上げた時、彼の額は汗で濡れ、顔色は蒼白だった。しかし、その瞳は達成感に満ちている。
彼の掌には、元の姿とほとんど変わらないロケットペンダントがあった。だが、よく見ると、その表面には星屑のように繊細な黒い紋様が浮かび上がり、まるで呼吸するかのように、温かい光を放っている。
ノアは完成したペンダントを手に、仲間たちと共に眠るアンナの元へと向かった。
「これを、彼女の首にかけます」
ノアはベッドサイドに立ち、静かに告げた。その声は、極度の疲労で少し震えている。
「結果は……やってみるしかありません」
ゲオルグが固唾を飲んで見守る中、ノアは震える手で、その呪いと希望が込められたペンダントを、アンナの細い首へと、そっと近づけていった。
ゲオルグは腕を組み、深く考え込んだ。彼は使用人たちにも尋ねて回ったが、これといったものはすぐに見つからなかった。娘のアンナは物欲に乏しく、高価な宝飾品やドレスにもほとんど興味を示さない、心優しい少女だったからだ。
「アンナお嬢様は、いつも庭の花を愛でておられました」
「本が好きで、図書室によくおられましたな」
使用人たちの話す思い出は、どれも彼女の穏やかな人柄を示すものばかりで、特定の「物」には結びつかない。ゲオルグが諦めかけたその時、彼はふと一つの記憶を思い出した。
「……そうだ。妻の形見があった」
ゲオルグは書斎の奥にある金庫から、小さなビロードの箱を取り出してきた。箱の中には、古びた銀のロケットペンダントが一つ、静かに収められている。
「これは、アンナが生まれてすぐに亡くなった、妻の形見でしてな。アンナは幼い頃から、これを肌身離さず身に着けておりました。病に倒れてからは、私が……」
ゲオルグはペンダントを手に取り、そっと蓋を開ける。中には、色褪せた小さな肖像画がはめ込まれていた。若き日のゲオルグと、優しげに微笑む妻、そしてその腕に抱かれた赤ん坊のアンナ。三人の幸せな時間が、そこに閉じ込められていた。
「これです」
ノアは、そのペンダントから放たれる温かい魔力の波動を感じ取り、確信した。母の愛情、父の想い、そしてアンナ自身の記憶。これ以上に、彼女の魂と強く結びついた品はない。
「これをお借りします。必ず、お嬢さんの力になるものにしてみせます」
ノアがペンダントを受け取ると、ゲオルグは深く頭を下げた。
その頃、ノアたちが知らない場所で、かつての仲間たちは苦境に立たされていた。
「ぐっ……! オリヴィア、回復を!」
暗い迷宮の通路で、騎士ライオネルがオーガの棍棒を受け止め、その巨体を震わせる。彼の鎧はへこみ、盾には深い亀裂が入っていた。
「はい! 『上級治癒』!」
聖女オリヴィアが必死に回復魔法をかけるが、敵の攻撃は苛烈で、彼女の魔力はじりじりと削られていく。
「アイザック! 何をやっている! 早く援護しろ!」
勇者アレスが、焦燥に満ちた声で怒鳴る。
「分かっています! ですが、敵の動きが速すぎて照準が……!」
魔術師アイザックの放つ炎の槍は、ことごとくオーガにかわされ、壁を焦がすだけだった。ノアがいた頃は、彼のデバフで敵の動きは鈍り、魔法を当てるのは容易だった。だが今は、その恩恵がどこにもない。
(ノアがいれば……)
パーティの誰もが、口には出さないものの、同じことを考えていた。彼の地味で不吉な呪いが、どれほど自分たちの生命線だったのか。失って初めて、その価値を痛感していた。
「ええい、役立たずどもめ!」
アレスは悪態をつき、聖剣を構えて一人で突っ込んだ。彼の力は確かに強い。だが、敵の攻撃を一身に受ける盾役も、確実に敵の動きを止める支援役もいない状況では、その力も十全には発揮できない。
戦いは辛くも勝利したものの、パーティの消耗は激しく、雰囲気は最悪だった。誰もが疲弊し、互いを責めるような視線を交わす。彼らの間には、修復不可能な亀裂が、静かに広がり始めていた。
一方、ゲオルグの屋敷の一室は、ノアのための臨時工房と化していた。
エリオが部屋の四隅に魔力安定の結界を張り、クロエは扉の前で警護につき、不測の事態に備える。ルナは、ノアの状態を冷静に観察し、必要な指示を出せるよう控えていた。
「始めます」
ノアは金床の上にロケットペンダントを置き、深く息を吸った。今回は、金属を叩き潰すような荒々しい錬成ではない。魂に語りかけるような、繊細な作業が求められる。
「【呪物錬成】」
ノアの指先から、黒い靄が立ち上り、ペンダントにゆっくりと触れた。その瞬間、ペンダントから淡い光のバリアのようなものが放たれ、ノアの呪力を激しく弾いた。
「くっ……!」
ノアは歯を食いしばる。アンナの魂を守る「守護の呪い」が、ノアの力を敵と見なして抵抗しているのだ。
(違う。俺は、破壊しに来たんじゃない)
ノアは心の中で強く念じる。自分の呪いは、破壊ではなく調和をもたらす力だ。アンナを苦しめるのではなく、その苦しみごと抱きしめ、新たな力に変えるためのものだと。
ノアは、ペンダントに込められた家族の愛情、その温かい記憶に語りかけるように、慎重に、そして優しく呪力を流し込んでいく。抵抗していた守護の呪いが、少しずつノアの意志を受け入れ、その力を和らげていくのが分かった。
黒い靄は、銀のペンダントに染み込むように溶け込んでいく。
長い、長い時間が過ぎた。
ノアが顔を上げた時、彼の額は汗で濡れ、顔色は蒼白だった。しかし、その瞳は達成感に満ちている。
彼の掌には、元の姿とほとんど変わらないロケットペンダントがあった。だが、よく見ると、その表面には星屑のように繊細な黒い紋様が浮かび上がり、まるで呼吸するかのように、温かい光を放っている。
ノアは完成したペンダントを手に、仲間たちと共に眠るアンナの元へと向かった。
「これを、彼女の首にかけます」
ノアはベッドサイドに立ち、静かに告げた。その声は、極度の疲労で少し震えている。
「結果は……やってみるしかありません」
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