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第二十三話 目覚めの少女と新たな誓い
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ノアの手が、アンナの首筋に触れる。ひやりと冷たい肌の感触が、彼女の命の儚さを物語っていた。ノアは息を止め、慎重にロケットペンダントを彼女の首にかけた。
ペンダントがアンナの肌に触れた、その瞬間。
部屋中の空気がびりびりと震え、ペンダントから眩いほどの光が放たれた。それは、温かく、そして力強い生命の光。光はアンナの全身を包み込み、彼女の体を蝕んでいた黒い呪いの靄を、まるで夜明けの光が霧を晴らすかのように、優しく溶かしていく。
「おお……!」
ゲオルグとアルマンが、息を呑む。ルナとエリオも、目の前の奇跡に言葉を失っていた。
光に溶かされた黒い靄は、消滅するのではない。それはペンダントに吸い込まれ、ペンダントの力となり、そして再び清浄な生命エネルギーとなってアンナの体へと還流していく。ノアが意図した通り、呪いの流れが、完全に逆転したのだ。
光が収まった時、ベッドの上のアンナに、明らかな変化が起きていた。死人のように白かったその頬に、ほんのりと赤みが差している。か細かった呼吸は、深く穏やかなものに変わっていた。
そして。
「……ん……」
長い間閉ざされていた少女の瞼が、かすかに震えた。やがて、その目がゆっくりと開かれる。そこに宿っていたのは、空虚な闇ではない。澄んだ青空のような、美しい蒼色の光だった。
「……お父様……?」
か細いが、はっきりとした声だった。五年ぶりに聞く、愛する娘の声。
「アンナ! 私のアンナ!」
ゲオルグは娘のベッドに駆け寄り、その小さな手を固く握りしめた。彼の目からは、堰を切ったように涙が溢れ出す。
アンナは、まだ状況が飲み込めない様子で、不思議そうに部屋の中を見回した。そして、自分の胸で温かい光を放つペンダントに気づく。
「このペンダント……。お母様の……」
彼女がそれに触れると、ペンダントからさらに優しい光が溢れ、彼女の体を温かく包み込んだ。
「アンナ……。分かるか。この方たちが、お前を救ってくださったのだ」
ゲオルグは、ノアたちの方を振り返った。アンナの視線が、ゆっくりとノアに向けられる。彼女は、自分を救ってくれた恩人の顔を、記憶に刻むようにじっと見つめていた。
「ありがとうございます……」
少女の唇から紡がれた、心からの感謝の言葉。その言葉だけで、ノアの疲労は全て吹き飛んだ気がした。
「……よかった」
ノアは、安堵のため息と共に、心からの笑みを浮かべた。その場にいた誰もが、幸せな空気に包まれていた。
数日後。
ゲオルグの屋敷から、【ノアの箱舟】へと、破格の報酬が届けられた。金貨、宝石、希少な素材。その量は、ノアたちが一生遊んで暮らせるほどだったが、ルナは冷静にそれらを店の運転資金と研究費に振り分けた。
それ以上に大きな収穫は、大商人ゲオルグという、強力な後ろ盾を得たことだった。彼は、自らの持つ商会ルートを使い、【ノアの箱舟】が必要とする素材を優先的に、そして格安で融通してくれることを約束してくれた。
そして、もう一つ。
店の扉が静かに開かれ、一人の少女が立っていた。すっかり元気を取り戻したアンナだった。彼女は、まだ少しおぼつかない足取りで、しかし真っ直ぐにノアの元へと歩み寄る。
「ノア様」
彼女は、クロエと同じように、ノアを様付けで呼んだ。
「この命は、あなた様からいただいたもの。どうか、私にもこの店でお手伝いをさせていただけないでしょうか」
「えっ、でも君は……」
ノアが戸惑っていると、その後ろからゲオルグが顔を出した。
「どうか、この子の願いを聞き届けてやってはいただけんだろうか。この子は、自分の身に起きた呪いの経験を活かし、同じように苦しむ人々の力になりたいと、そう申しておりましてな」
アンナは、こくりと力強く頷いた。
「私には、クロエ様のような剣の腕も、エリオ様のような魔法の力もありません。でも、私には呪いにかかった人の気持ちが分かります。その痛みに、寄り添うことができます」
彼女は、自分の胸で光るペンダントを握りしめた。
「そして、このペンダントは、私に不思議な力をくれました。他人の呪いを、わずかに感じ取る力を。きっと、ノア様のお役に立てるはずです」
彼女の瞳は、真剣そのものだった。ルナは、アンナの申し出に、新たな商機と店の可能性を見出していた。クロエは、自分と同じようにノアを慕う少女の登場に、少しだけライバル心を燃やしているようだった。エリオは、かつての自分と同じように苦しんでいた少女が、前に進もうとする姿を、温かく見守っていた。
ノアは、断る理由など見つけられなかった。
「ようこそ、アンナ。【ノアの箱舟】へ」
こうして、呪いのアイテム専門店【ノアの箱舟】に、三人目の従業員が加わった。彼女の加入は、店に新たな風を吹き込み、ノアの力を、さらに多くの人々へと届けるための、重要な一歩となるのだった。
ペンダントがアンナの肌に触れた、その瞬間。
部屋中の空気がびりびりと震え、ペンダントから眩いほどの光が放たれた。それは、温かく、そして力強い生命の光。光はアンナの全身を包み込み、彼女の体を蝕んでいた黒い呪いの靄を、まるで夜明けの光が霧を晴らすかのように、優しく溶かしていく。
「おお……!」
ゲオルグとアルマンが、息を呑む。ルナとエリオも、目の前の奇跡に言葉を失っていた。
光に溶かされた黒い靄は、消滅するのではない。それはペンダントに吸い込まれ、ペンダントの力となり、そして再び清浄な生命エネルギーとなってアンナの体へと還流していく。ノアが意図した通り、呪いの流れが、完全に逆転したのだ。
光が収まった時、ベッドの上のアンナに、明らかな変化が起きていた。死人のように白かったその頬に、ほんのりと赤みが差している。か細かった呼吸は、深く穏やかなものに変わっていた。
そして。
「……ん……」
長い間閉ざされていた少女の瞼が、かすかに震えた。やがて、その目がゆっくりと開かれる。そこに宿っていたのは、空虚な闇ではない。澄んだ青空のような、美しい蒼色の光だった。
「……お父様……?」
か細いが、はっきりとした声だった。五年ぶりに聞く、愛する娘の声。
「アンナ! 私のアンナ!」
ゲオルグは娘のベッドに駆け寄り、その小さな手を固く握りしめた。彼の目からは、堰を切ったように涙が溢れ出す。
アンナは、まだ状況が飲み込めない様子で、不思議そうに部屋の中を見回した。そして、自分の胸で温かい光を放つペンダントに気づく。
「このペンダント……。お母様の……」
彼女がそれに触れると、ペンダントからさらに優しい光が溢れ、彼女の体を温かく包み込んだ。
「アンナ……。分かるか。この方たちが、お前を救ってくださったのだ」
ゲオルグは、ノアたちの方を振り返った。アンナの視線が、ゆっくりとノアに向けられる。彼女は、自分を救ってくれた恩人の顔を、記憶に刻むようにじっと見つめていた。
「ありがとうございます……」
少女の唇から紡がれた、心からの感謝の言葉。その言葉だけで、ノアの疲労は全て吹き飛んだ気がした。
「……よかった」
ノアは、安堵のため息と共に、心からの笑みを浮かべた。その場にいた誰もが、幸せな空気に包まれていた。
数日後。
ゲオルグの屋敷から、【ノアの箱舟】へと、破格の報酬が届けられた。金貨、宝石、希少な素材。その量は、ノアたちが一生遊んで暮らせるほどだったが、ルナは冷静にそれらを店の運転資金と研究費に振り分けた。
それ以上に大きな収穫は、大商人ゲオルグという、強力な後ろ盾を得たことだった。彼は、自らの持つ商会ルートを使い、【ノアの箱舟】が必要とする素材を優先的に、そして格安で融通してくれることを約束してくれた。
そして、もう一つ。
店の扉が静かに開かれ、一人の少女が立っていた。すっかり元気を取り戻したアンナだった。彼女は、まだ少しおぼつかない足取りで、しかし真っ直ぐにノアの元へと歩み寄る。
「ノア様」
彼女は、クロエと同じように、ノアを様付けで呼んだ。
「この命は、あなた様からいただいたもの。どうか、私にもこの店でお手伝いをさせていただけないでしょうか」
「えっ、でも君は……」
ノアが戸惑っていると、その後ろからゲオルグが顔を出した。
「どうか、この子の願いを聞き届けてやってはいただけんだろうか。この子は、自分の身に起きた呪いの経験を活かし、同じように苦しむ人々の力になりたいと、そう申しておりましてな」
アンナは、こくりと力強く頷いた。
「私には、クロエ様のような剣の腕も、エリオ様のような魔法の力もありません。でも、私には呪いにかかった人の気持ちが分かります。その痛みに、寄り添うことができます」
彼女は、自分の胸で光るペンダントを握りしめた。
「そして、このペンダントは、私に不思議な力をくれました。他人の呪いを、わずかに感じ取る力を。きっと、ノア様のお役に立てるはずです」
彼女の瞳は、真剣そのものだった。ルナは、アンナの申し出に、新たな商機と店の可能性を見出していた。クロエは、自分と同じようにノアを慕う少女の登場に、少しだけライバル心を燃やしているようだった。エリオは、かつての自分と同じように苦しんでいた少女が、前に進もうとする姿を、温かく見守っていた。
ノアは、断る理由など見つけられなかった。
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