デバフ専門の支援術師は勇者パーティを追放されたので、呪いのアイテム専門店を開きます

夏見ナイ

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第四十三話 王都アルカディア

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王都への旅路は、数日に及んだ。馬車の中では、ルナが中心となって王都での立ち振る舞いについての打ち合わせが続けられた。

「いいか、ノア。お前は下手に喋るな。基本的には私が対応する。お前はただ、ふんぞり返って神秘的な雰囲気を醸し出していればいい」
「ふんぞり返るって……。僕にできるかな」
「やれ。お前の価値を、安売りしてたまるか」

ルナの徹底したプロデュース論に、ノアは苦笑するしかなかった。エリオは、道中も手に入れたばかりの古文書を読みふけり、『原初の呪術師』に関する手がかりを探している。クロエは、馬車の窓から常に外を警戒し、護衛としての役目を片時も忘れなかった。

やがて、馬車の行く手に、巨大な城壁が見えてきた。境界都市バザールのそれとは比べ物にならないほど高く、白く、そして美しい。あれが、アラマンダ王国の心臓部、王都アルカディアだ。

城門を抜けると、そこは別世界だった。石畳で舗装された広い道、整然と立ち並ぶ美しい街並み、行き交う人々の洗練された服装。辺境の荒々しい活気とは違う、計算され尽くした繁栄がそこにはあった。

「すごい……」

ノアは、思わず感嘆の声を漏らした。だが、ルナは冷静だった。

「見かけに騙されるな。この美しい街の裏側には、貴族たちのどす黒い権力闘争が渦巻いている。一歩間違えれば、我々は飲み込まれるぞ」

馬車は、王都の中央にある王城へとまっすぐに進んでいく。その道中、ノアたちの乗る王家の馬車は、多くの注目を集めていた。

「あれが、噂の辺境の英雄か?」
「なんだ、思ったより貧相な男じゃないか」
「隣の女たちは、やけに美しいな……」

好奇心、嫉妬、侮蔑。様々な感情が込められた視線が、馬車へと突き刺さる。ここが、自分たちのことを誰も知らないアウェイなのだと、ノアは痛感した。

王城に到着した一行は、侍従に案内され、謁見の間へと通された。巨大な扉が開かれると、その先には長い絨毯が敷かれ、奥には壮麗な玉座が鎮座している。玉座には、国王アルトリウスが威厳に満ちた表情で座っていた。その両脇には、宰相をはじめとする重臣たちがずらりと並んでいる。そして、その一角には、アレスの姿もあった。彼は、ノアたちを嘲るような、そして値踏みするような視線で見ていた。

「面を上げよ」

国王の、低く、しかしよく通る声が響き渡る。

「辺境の呪術師、ノア・アークライト。そして、その仲間たち。よくぞ参った」
「はっ。この度はお招きいただき、光栄の至りにございます」

ノアが、ルナに教えられた通りの口上を述べ、深々と頭を下げる。

「うむ。其方たちの活躍は、聞き及んでおる。魔物の大群から街を守り、魔王軍の刺客さえも退けたとか。まこと、見事な働きであった」

国王の言葉は、労いの響きを持っていた。だが、その瞳の奥は、鋭くノアたちの本質を見極めようとしている。

「つきましては、其方たちの功績に報いるため、褒賞を与える。望みのものを申してみよ。金か、土地か、あるいは貴族の位か」

それは、試すような問いだった。ここで欲を出せば、それが弱みとなる。

ノアが答える前に、ルナが一歩前に出た。

「陛下からの温情、痛み入ります。ですが、我々が望むものは、そのようなものではございません」
「ほう。では、何が望みだ」
「我々が望むのは、ただ一つ。この王国に暮らす人々が、日々の悩みから少しでも解放され、平穏に暮らせること。そのために、我々の力が少しでも役立つのであれば、それ以上の喜びはございません」

完璧な答えだった。私欲のない、ただ民を思うという姿勢。これには、アレスも「偽善者が」と内心で毒づくことしかできない。

国王は、満足げに頷いた。

「見事な答えだ。だが、言葉だけでは何も証明されん。其方たちの力が、本当にこの国の益となるのか、この場で示してもらうとしよう」

やはり、そう来たか。ルナは内心で舌打ちし、ノアはゴクリと喉を鳴らした。

「勇者アレス」

国王が、アレスの名を呼んだ。

「お前の報告によれば、その者たちの力は危険極まりないものだとか。ならば、お前がその力を確かめてみるがよい。聖剣を持つお前ならば、万が一のことがあっても、対処できよう」

その言葉は、アレスに名誉挽回の機会を与えると同時に、もし負ければ勇者としての面目を完全に失うという、諸刃の剣だった。

アレスは、待ってましたとばかりに立ち上がり、不敵な笑みを浮かべた。

「はっ。陛下の御前で、奴らの化けの皮を剥いでごらんにいれます」

彼は、謁見の間の中央へと進み出ると、聖剣を抜き放った。

「ノア! 俺と勝負しろ! もし俺が勝てば、お前たちを俺の支配下に置かせてもらう!」

私怨丸出しの宣言に、重臣たちも呆れた顔をしている。

ノアが戸惑っていると、彼の前にクロエが静かに立った。

「ノア様は、店の主。軽々しく戦いの場に出るようなお方ではありません」

彼女は、ノアたちの方を一度も振り返らず、アレスを見据えた。

「あなたの相手は、この私で十分です。用心棒として」

赤髪の剣姫が、再び勇者の前に立ちはだかる。国王も、貴族たちも、そしてアレス自身も、この辺境の少女がどれほどの力を持つのか、まだ誰も知らなかった。謁見の間は、一触即発の緊張感に包まれた。
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