デバフ専門の支援術師は勇者パーティを追放されたので、呪いのアイテム専門店を開きます

夏見ナイ

文字の大きさ
57 / 89

第五十六話 封印されし魔の回廊

しおりを挟む
王都の地下、その存在すら一般市民には知られていない場所に、魔の回廊への入り口はあった。厳重に封印された巨大な石の扉の前で、【ノアの箱舟】の面々は、依頼人である少年ピートと向き合っていた。

「ここが、お父さんが入っていった場所なの?」

アンナが、優しくピートに尋ねる。ピートは、こくりと小さく頷いた。その瞳には、恐怖と、それ以上に強い父親への想いが宿っている。

「ピート君。約束する。僕たちは、必ず君のお父さんの手がかりを見つけてくる。だから、ここで待っていてくれるかい?」

ノアの言葉に、ピートは力強く頷いた。

国王から特別に許可を得て、封印の扉が開かれる。ゴゴゴ、と地響きのような音を立てて開いた扉の向こうは、ひんやりとした空気が渦巻く、底知れぬ闇だった。

「行くぞ」

ルナの合図で、一行は迷宮へと足を踏み入れた。ノアが作った『道しるべのランタン』が、周囲をぼんやりと照らし出す。それは、一度通った道筋を光の粒子として残していくという呪いがかけられており、迷宮探索には必須のアイテムだった。

回廊の内部は、古代文明の遺跡だった。壁には、見たこともない文字や文様がびっしりと刻まれている。

「すごい……。これは、現代の魔法体系とは全く違う。神代の時代のものかもしれない」

エリオは、興奮を隠しきれない様子で壁の文字を解読しようと試みる。

「気を抜くな、エリオ。ここは、墓場だぞ」

クロエが、鋭く周囲を警戒する。彼女の言う通り、回廊のあちこちに、風化した白骨や、錆びついた武具が転がっていた。多くの冒険者が、この場所で命を落としたのだろう。

一行がしばらく進むと、最初の試練が訪れた。通路の先に、巨大なゴーレムが一体、道を塞ぐように立ちはだかっていたのだ。その体は未知の金属で作られており、魔力も生命反応もない。ただ、静かな威圧感を放っている。

「こいつは……自律型の番人か。厄介だな」

エリオが分析する。

「私が行く」

クロエが大剣を構え、前に出ようとする。だが、ノアがそれを制した。

「待って、クロエ。こいつは、力で壊すタイプじゃないかもしれない」

ノアは、ゴーレムを注意深く観察した。その胸の中央に、わずかなくぼみがあることに気づく。そして、そのくぼみの形は、壁に刻まれた無数の文様の中の一つと、完全に一致していた。

「なるほど。これは、力試しではなく、知恵試しというわけか」

ノアは、工房から持ってきた粘土を取り出すと、その場で壁の文様を正確に写し取った。そして、その粘土に【呪物錬成】を施し、硬質で、そしてゴーレムと同じ魔力波長を持つ石版へと変えた。

彼がその石版をゴーレムの胸のくぼみにはめ込むと、今まで微動だにしなかったゴーレムが、ギシリと音を立てて動き出し、脇へとずれて道を開けた。

「すごい……。ノア様、どうして分かったんですか?」

クロエが、感心したように尋ねる。

「僕のスキルは、物の記憶や本質を感じ取ることができるんだ。このゴーレムが、『正しい鍵を求めている』って、そう教えてくれた」

一行は、その後も次々と現れる古代の罠や仕掛けを、ノアの力と仲間たちの連携で突破していった。毒ガスが噴き出す通路は、エリオの風魔法で無力化し、底なしの奈落は、クロエが壁を蹴って飛び越え、対岸にロープを渡した。

迷宮の奥深くへと進むにつれ、壁の文様の様子が変わってきたことに、エリオが気づいた。

「これは……何かの歴史を記録しているようだ。一つの文明の、創生から……滅亡までを」

エリオの解読によれば、かつてこの地には、現代とは比べ物にならないほど高度な魔法文明が存在したという。彼らは、世界の理そのものを操る『原初の魔法』を扱っていた。

「……見つけたぞ」

エリオの声が、震えた。彼が指さした壁画には、荘厳なローブを纏い、星々が煌めく杖を持った人物が描かれていた。そして、その人物を説明する文字。

「『星詠みのアルカナ』……。万物の理を解き明かし、呪いと祝福を司りし、最初の魔法使い……。『原初の呪術師』」

その言葉に、ノアは息を呑んだ。自分と魔王軍を繋ぐ、謎のキーワード。その答えが、今、目の前にあった。

壁画は続いていた。原初の呪術師が、自らの力を七つに分け、七人の弟子に与えたこと。だが、その力を巡って弟子たちの間で争いが起き、強大すぎた魔法文明は、自らの力によって滅び去ったこと。

その時だった。

回廊のさらに奥から、微かな物音が聞こえてきた。それは、人の声のようにも、何かが岩を叩く音のようにも聞こえた。

「誰かいるのか……?」

ノアたちが音のする方へ近づいていくと、そこは広大な空洞になっていた。そして、その中央で、一人の男がツルハシを振るっていた。ボロボロの冒険者の服をまとい、髪も髭も伸び放題だったが、その瞳には狂気的な光が宿っている。彼は、巨大な水晶の壁を、一心不乱に掘り続けていた。

「お父さん……?」

ノアは、ピートから預かった父親の写真と、その男の顔を見比べ、呟いた。間違いない。彼が、ピートの父親、探検家のリックだった。

だが、彼の様子は明らかにおかしい。ノアたちの存在にも気づかず、何かに取り憑かれたように、ただ水晶を掘り続けている。そして、その水晶の壁の奥から、禍々しく、そして抗いがたいほどの、強大な魔力が漏れ出しているのを、ノアは感じ取っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...