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第六十九話 砂塵の再会
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遺跡の内部は、ひんやりとした空気に満ちていた。壁には、太陽と大地を崇める古代の壁画が描かれ、長い通路が地下深くへと続いている。
「アレスが、なぜここに……」
ノアは、信じられないという思いで呟いた。辺境の砦に送られたはずの彼が、どうやってこの場所を知り、先回りできたのか。
「おそらく、彼を信奉する貴族が、裏で手を引いているのだろう。そして、この遺跡に関する、我々が知らない情報を掴んでいたに違いない」
ルナが、冷静に分析する。
「老婆の言っていた『哀れな影』とは、彼のことに違いないな。自らの魂を大地に売り渡し、力を得ようとしている……。碌なことになっていないはずだ」
一行は、警戒を最大限に高めながら、遺跡の奥へと進んでいく。通路には、無数の魔物の死骸が転がっていた。そのどれもが、一撃で心臓を貫かれている。聖剣の使い手であったアレスの、残忍な剣技の痕を物語っていた。
やがて、一行は巨大な石室へとたどり着いた。その部屋の中央には、祭壇のようなものが設えられ、その上で、一人の青年が苦しそうにうずくまっていた。
青年の体は、大地から伸びる岩の蔓のようなものに縛り付けられ、その生命力が、祭壇を通して遺跡のさらに奥へと吸い上げられているようだった。彼の周囲には、大地が悲鳴を上げるかのように、魔力の渦が荒れ狂っている。
「あれが、『土の呪い』の継承者……!」
エリオが、息を呑む。
「そして、この儀式を行っているのは……」
祭壇の脇に、一人の男が立っていた。ボロボロの旅装束を纏い、その顔は砂と埃で汚れている。だが、その瞳だけが、狂気的な光を爛々と輝かせていた。
「アレス……!」
ノアが、その名を呼んだ。
アレスは、ゆっくりと振り返った。その顔には、かつての勇者の面影はなく、歪んだ笑みが張り付いている。
「ようこそ、ノア。お前が来るのを、待っていたぞ」
「アレス! いったい、何をしているんだ!」
「何って? 見れば分かるだろう。力を得ているのさ!」
アレスは、両腕を広げた。
「俺は、この遺跡に眠る『禁断の力』を手に入れた。この『土の呪い』の継承者の生命力と、この大地そのものの力を、我が身に吸収している最中よ! これさえあれば、俺は神をも超える! お前ごとき、指一本でひねり潰せるわ!」
彼の体からは、大地から吸い上げた強大な魔力と、彼の憎悪が混じり合った、禍々しいオーラが放たれていた。
「そんなことをすれば、あなた自身の魂が、大地の力に飲み込まれてしまう! 人でなくなってしまうぞ!」
ノアが叫ぶ。だが、アレスの耳には届かない。
「うるさい! 俺は、お前に全てを奪われた! プライドも、名誉も、力も! ならば、人であることを捨ててでも、それ以上の力を手に入れて、お前を絶望の淵に叩き落としてやる!」
憎悪が、彼を突き動かす原動力となっていた。
「哀れな男だ」
クロエは、静かに大剣を抜いた。
「ノア様に逆らう愚か者が、どんな末路を辿るか。その身に教えてやる」
「ふはは! やれるものなら、やってみるがいい!」
アレスが手をかざすと、地面から巨大な岩のゴーレムが何体も出現し、ノアたちへと襲いかかった。
「ゴーレムは私が! ミオは、あいつの動きを風で封じて!」
「はい!」
クロエとミオが、ゴーレムの群れへと躍り出る。エリオも、魔法障壁を展開し、アレスの放つ魔力の衝撃波から仲間たちを守った。
「ノア! あの子を助けるぞ!」
ルナの指示で、ノアは祭壇に縛り付けられた青年へと駆け寄った。
「大丈夫か! しっかりしろ!」
ノアが青年に触れると、彼の意識がわずかに戻った。
「……逃げろ……。俺の力が、暴走する……。大地が、全てを飲み込んじまう……」
青年は、最後の力を振り絞って警告した。彼の名は、ジン。『土の呪い』の継承者である彼は、自らの力を制御できず、暴走を鎮めるためにこの遺跡で眠りについていた。だが、アレスがその眠りを破り、彼の力を無理やり奪おうとしていたのだ。
「大丈夫だ。僕が、君の力を受け止める」
ノアは、ジンの額にそっと手を置いた。そして、【呪物錬成】の力を使い、彼の体内で荒れ狂う大地の呪いを、静かに鎮め始めた。
「おのれ、ノア! 邪魔をするな!」
アレスは、ノアの行動に気づき、巨大な岩の槍を生成して投げつけた。
「させるか!」
クロエが、ゴーレムを斬り伏せながら、その岩の槍を弾き飛ばす。だが、その隙に、別のゴーレムがノアの背後へと迫っていた。
絶体絶命のピンチ。
その時だった。
「――僕だって、いつまでも守られてばかりじゃない!」
今まで力を奪われ続けていたジンが、最後の力を振り絞って叫んだ。彼の瞳が、大地の色に輝く。
「『大地の守護壁(ガイア・ウォール)』!」
ノアの目の前に、分厚い岩の壁が出現し、ゴーレムの攻撃を完全に防いだ。
「君は……!」
ノアが驚いてジンを見る。ジンは、ノアに向かって、力なく、しかし確かに微笑んだ。
「……借り、だぜ」
その一瞬の隙が、勝敗を決した。
アレスの注意が逸れたその瞬間を、クロエは見逃さなかった。彼女は、床を蹴って跳躍し、アレスの懐へと一瞬で潜り込む。
「終わりだ、元勇者」
赤い閃光が、砂塵の舞う石室を切り裂いた。
「アレスが、なぜここに……」
ノアは、信じられないという思いで呟いた。辺境の砦に送られたはずの彼が、どうやってこの場所を知り、先回りできたのか。
「おそらく、彼を信奉する貴族が、裏で手を引いているのだろう。そして、この遺跡に関する、我々が知らない情報を掴んでいたに違いない」
ルナが、冷静に分析する。
「老婆の言っていた『哀れな影』とは、彼のことに違いないな。自らの魂を大地に売り渡し、力を得ようとしている……。碌なことになっていないはずだ」
一行は、警戒を最大限に高めながら、遺跡の奥へと進んでいく。通路には、無数の魔物の死骸が転がっていた。そのどれもが、一撃で心臓を貫かれている。聖剣の使い手であったアレスの、残忍な剣技の痕を物語っていた。
やがて、一行は巨大な石室へとたどり着いた。その部屋の中央には、祭壇のようなものが設えられ、その上で、一人の青年が苦しそうにうずくまっていた。
青年の体は、大地から伸びる岩の蔓のようなものに縛り付けられ、その生命力が、祭壇を通して遺跡のさらに奥へと吸い上げられているようだった。彼の周囲には、大地が悲鳴を上げるかのように、魔力の渦が荒れ狂っている。
「あれが、『土の呪い』の継承者……!」
エリオが、息を呑む。
「そして、この儀式を行っているのは……」
祭壇の脇に、一人の男が立っていた。ボロボロの旅装束を纏い、その顔は砂と埃で汚れている。だが、その瞳だけが、狂気的な光を爛々と輝かせていた。
「アレス……!」
ノアが、その名を呼んだ。
アレスは、ゆっくりと振り返った。その顔には、かつての勇者の面影はなく、歪んだ笑みが張り付いている。
「ようこそ、ノア。お前が来るのを、待っていたぞ」
「アレス! いったい、何をしているんだ!」
「何って? 見れば分かるだろう。力を得ているのさ!」
アレスは、両腕を広げた。
「俺は、この遺跡に眠る『禁断の力』を手に入れた。この『土の呪い』の継承者の生命力と、この大地そのものの力を、我が身に吸収している最中よ! これさえあれば、俺は神をも超える! お前ごとき、指一本でひねり潰せるわ!」
彼の体からは、大地から吸い上げた強大な魔力と、彼の憎悪が混じり合った、禍々しいオーラが放たれていた。
「そんなことをすれば、あなた自身の魂が、大地の力に飲み込まれてしまう! 人でなくなってしまうぞ!」
ノアが叫ぶ。だが、アレスの耳には届かない。
「うるさい! 俺は、お前に全てを奪われた! プライドも、名誉も、力も! ならば、人であることを捨ててでも、それ以上の力を手に入れて、お前を絶望の淵に叩き落としてやる!」
憎悪が、彼を突き動かす原動力となっていた。
「哀れな男だ」
クロエは、静かに大剣を抜いた。
「ノア様に逆らう愚か者が、どんな末路を辿るか。その身に教えてやる」
「ふはは! やれるものなら、やってみるがいい!」
アレスが手をかざすと、地面から巨大な岩のゴーレムが何体も出現し、ノアたちへと襲いかかった。
「ゴーレムは私が! ミオは、あいつの動きを風で封じて!」
「はい!」
クロエとミオが、ゴーレムの群れへと躍り出る。エリオも、魔法障壁を展開し、アレスの放つ魔力の衝撃波から仲間たちを守った。
「ノア! あの子を助けるぞ!」
ルナの指示で、ノアは祭壇に縛り付けられた青年へと駆け寄った。
「大丈夫か! しっかりしろ!」
ノアが青年に触れると、彼の意識がわずかに戻った。
「……逃げろ……。俺の力が、暴走する……。大地が、全てを飲み込んじまう……」
青年は、最後の力を振り絞って警告した。彼の名は、ジン。『土の呪い』の継承者である彼は、自らの力を制御できず、暴走を鎮めるためにこの遺跡で眠りについていた。だが、アレスがその眠りを破り、彼の力を無理やり奪おうとしていたのだ。
「大丈夫だ。僕が、君の力を受け止める」
ノアは、ジンの額にそっと手を置いた。そして、【呪物錬成】の力を使い、彼の体内で荒れ狂う大地の呪いを、静かに鎮め始めた。
「おのれ、ノア! 邪魔をするな!」
アレスは、ノアの行動に気づき、巨大な岩の槍を生成して投げつけた。
「させるか!」
クロエが、ゴーレムを斬り伏せながら、その岩の槍を弾き飛ばす。だが、その隙に、別のゴーレムがノアの背後へと迫っていた。
絶体絶命のピンチ。
その時だった。
「――僕だって、いつまでも守られてばかりじゃない!」
今まで力を奪われ続けていたジンが、最後の力を振り絞って叫んだ。彼の瞳が、大地の色に輝く。
「『大地の守護壁(ガイア・ウォール)』!」
ノアの目の前に、分厚い岩の壁が出現し、ゴーレムの攻撃を完全に防いだ。
「君は……!」
ノアが驚いてジンを見る。ジンは、ノアに向かって、力なく、しかし確かに微笑んだ。
「……借り、だぜ」
その一瞬の隙が、勝敗を決した。
アレスの注意が逸れたその瞬間を、クロエは見逃さなかった。彼女は、床を蹴って跳躍し、アレスの懐へと一瞬で潜り込む。
「終わりだ、元勇者」
赤い閃光が、砂塵の舞う石室を切り裂いた。
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