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第二十話 隠された道
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ゴブリンの洞窟の内部は、じめじめとした空気が淀んでいた。壁からは絶えず水が滴り落ち、足元はぬかるんでいる。天井は低く、閉塞感が強い。松明の明かりが届く範囲は限られており、闇の奥からは、ゴブリンたちの不気味な息遣いや、金属を引きずるような音が聞こえてくる。
「うわあ、想像以上に気味が悪いね……」
リオが、少しだけ不安そうな声を漏らした。商才はあっても、戦闘やダンジョン探索は専門外なのだろう。
対照的に、カエデは一切の動揺を見せていなかった。レイピアを中段に構え、その青い瞳は暗闇の奥を鋭く見据えている。
「油断するな。いつ敵が出てきてもおかしくない」
俺はソナー・スライムを先行させ、周囲の警戒にあたらせた。音波による探知能力は、視界の悪いこの場所で絶大な効果を発揮する。俺の視界の隅に表示されるミニマップには、周囲の地形と、赤い点で示された敵の位置がリアルタイムで映し出されていた。
「前方、五十メートル先の曲がり角。ゴブリンが三体、待ち伏せています」
俺が報告すると、リオとカエデは感心したように頷いた。
「すごい!千里眼みたいだね、そのスライム!」
「敵の位置が事前に分かるのは、極めて有利だ。奇襲の心配がない」
カエデは俺の情報を元に、慎重に前進する。そして、曲がり角の手前で止まると、壁に背をつけて息を潜めた。俺とリオも、彼女に倣う。
カエデは指で合図を送ってきた。自分が前に出て一体を引きつけ、残りを俺が対処しろ、というサインだ。俺は頷き返し、オブシダン・スライムと擬態スライムを呼び出した。
カエデが、風のように曲がり角から飛び出す。待ち伏せていたゴブリンたちは、奇襲を仕掛ける前にその存在を察知され、完全に虚を突かれた形になった。
「グギャッ!?」
一体のゴブリンが、反応する間もなくカエデのレイピアに喉を貫かれる。残った二体が慌てて棍棒を振り上げるが、その時にはすでに俺のスライムたちが動いていた。
オブシダン・スライムが盾となって一体の攻撃を受け止め、その隙に擬態スライムがもう一体の背後に回り込み、不意打ちを食らわせる。完璧な連携だった。
戦闘は、あっという間に終わった。俺たちはほとんどダメージを受けることなく、最初の敵集団を殲滅した。
「すごい……!ユーさんとカエデさんがいれば、百人力だね!」
リオが、自分のことのように喜んでいる。
「ユーの索敵と、スライムによる攪乱が見事だったからだ」
カエデが、俺の働きを素直に評価してくれた。それが少し照れくさくて、俺は「カエデさんの剣技こそ」と曖昧に返した。
俺たちは順調に洞窟の奥へと進んでいく。ソナー・スライムによる索敵、カエデによる先制攻撃、そして俺のスライム軍団によるサポート。この三つの要素が噛み合った俺たちのパーティは、洞窟内のゴブリンたちを面白いように蹴散らしていった。
しばらく進むと、道が二手に分かれていた。右の道は広く、多くのゴブリンの足跡が残っている。おそらくこちらが正規ルートだろう。左の道は狭く、岩が崩れていて通りにくそうだ。
「どっちに行く?普通に考えれば、右だよね」
リオが首を傾げる。
カエデも、右の道に視線を向けた。
「敵の数も、右の方が多いようだ。激戦になるだろうが、こちらが本道だろう」
だが、俺はソナー・スライムが映し出すマップを見て、あることに気づいていた。
「待ってください。左の道、奥が行き止まりじゃない。細いですが、右の道と繋がっているようです。もしかしたら、近道かもしれません」
俺の言葉に、リオの目の色が変わった。彼女は「ちょっと待ってて」と言うと、左の道の崩れた岩壁の前に立った。
「スキル、『千里眼』!」
彼女の瞳が、再び翠玉色の光を放つ。彼女の千里眼は、アイテムだけでなく、地形に隠されたギミックや、壁の強度まで見抜くことができるらしい。
数秒後、彼女はぱっと顔を輝かせた。
「ビンゴ!ユーさんの言う通りだよ!この壁、見た目ほど厚くない。一部、脆くなっている場所がある。ピッケルで叩けば、簡単に崩せそうだ!」
彼女はリュックサックから愛用のピッケルを取り出すと、壁の一点を指差した。
「ここ!ここを叩けば、隠し通路が開通するはず!」
「隠し通路……!」
カエデが、驚きの声を上げる。
リオは得意げに胸を張った。
「私の千里眼と、ユーさんの索敵能力。この二つを合わせれば、どんなダンジョンの隠し要素も見つけ出せるってわけだね!これぞ、最強の探索コンビの誕生じゃない!?」
俺とリオは顔を見合わせ、にやりと笑った。カエデは、そんな俺たちの様子を、少し呆れたような、それでいてどこか楽しそうな顔で眺めていた。
カエデがレイピアの柄で壁の脆い部分を叩くと、リオの言った通り、岩壁はガラガラと音を立てて崩れ落ちた。その奥には、人が一人やっと通れるほどの、狭い通路が続いていた。
「よし、行こう!こっちなら、ゴブリンに見つからずに進めるかもしれない!」
リオを先頭に、俺たちは隠し通路へと足を踏み入れた。中は狭く、少し進むとすぐに広い空間に出た。そこは、正規ルートである右の道の中腹あたり。俺たちは、洞窟の守備隊の大部分をスキップして、中盤まで一気に進むことに成功したのだ。
「やったね!作戦大成功!」
リオが小声でガッツポーズをする。
力押しだけでは、決して見つけられなかった道。
カエデの剣技、俺の創造術、そしてリオの鑑定眼。三人の力が合わさったからこそ、この道は開かれた。
俺は、パーティで冒険するということの本当の楽しさを、この時、初めて実感したのかもしれない。
俺たちは息を潜め、洞窟のさらに奥深くへと進んでいく。星屑の鉱石が眠る最深部は、もう目前のはずだ。
だが、この先に待ち受ける脅威が、今までのゴブリンたちとは比べ物にならないほど厄介な存在であることを、俺たちはまだ知らなかった。
「うわあ、想像以上に気味が悪いね……」
リオが、少しだけ不安そうな声を漏らした。商才はあっても、戦闘やダンジョン探索は専門外なのだろう。
対照的に、カエデは一切の動揺を見せていなかった。レイピアを中段に構え、その青い瞳は暗闇の奥を鋭く見据えている。
「油断するな。いつ敵が出てきてもおかしくない」
俺はソナー・スライムを先行させ、周囲の警戒にあたらせた。音波による探知能力は、視界の悪いこの場所で絶大な効果を発揮する。俺の視界の隅に表示されるミニマップには、周囲の地形と、赤い点で示された敵の位置がリアルタイムで映し出されていた。
「前方、五十メートル先の曲がり角。ゴブリンが三体、待ち伏せています」
俺が報告すると、リオとカエデは感心したように頷いた。
「すごい!千里眼みたいだね、そのスライム!」
「敵の位置が事前に分かるのは、極めて有利だ。奇襲の心配がない」
カエデは俺の情報を元に、慎重に前進する。そして、曲がり角の手前で止まると、壁に背をつけて息を潜めた。俺とリオも、彼女に倣う。
カエデは指で合図を送ってきた。自分が前に出て一体を引きつけ、残りを俺が対処しろ、というサインだ。俺は頷き返し、オブシダン・スライムと擬態スライムを呼び出した。
カエデが、風のように曲がり角から飛び出す。待ち伏せていたゴブリンたちは、奇襲を仕掛ける前にその存在を察知され、完全に虚を突かれた形になった。
「グギャッ!?」
一体のゴブリンが、反応する間もなくカエデのレイピアに喉を貫かれる。残った二体が慌てて棍棒を振り上げるが、その時にはすでに俺のスライムたちが動いていた。
オブシダン・スライムが盾となって一体の攻撃を受け止め、その隙に擬態スライムがもう一体の背後に回り込み、不意打ちを食らわせる。完璧な連携だった。
戦闘は、あっという間に終わった。俺たちはほとんどダメージを受けることなく、最初の敵集団を殲滅した。
「すごい……!ユーさんとカエデさんがいれば、百人力だね!」
リオが、自分のことのように喜んでいる。
「ユーの索敵と、スライムによる攪乱が見事だったからだ」
カエデが、俺の働きを素直に評価してくれた。それが少し照れくさくて、俺は「カエデさんの剣技こそ」と曖昧に返した。
俺たちは順調に洞窟の奥へと進んでいく。ソナー・スライムによる索敵、カエデによる先制攻撃、そして俺のスライム軍団によるサポート。この三つの要素が噛み合った俺たちのパーティは、洞窟内のゴブリンたちを面白いように蹴散らしていった。
しばらく進むと、道が二手に分かれていた。右の道は広く、多くのゴブリンの足跡が残っている。おそらくこちらが正規ルートだろう。左の道は狭く、岩が崩れていて通りにくそうだ。
「どっちに行く?普通に考えれば、右だよね」
リオが首を傾げる。
カエデも、右の道に視線を向けた。
「敵の数も、右の方が多いようだ。激戦になるだろうが、こちらが本道だろう」
だが、俺はソナー・スライムが映し出すマップを見て、あることに気づいていた。
「待ってください。左の道、奥が行き止まりじゃない。細いですが、右の道と繋がっているようです。もしかしたら、近道かもしれません」
俺の言葉に、リオの目の色が変わった。彼女は「ちょっと待ってて」と言うと、左の道の崩れた岩壁の前に立った。
「スキル、『千里眼』!」
彼女の瞳が、再び翠玉色の光を放つ。彼女の千里眼は、アイテムだけでなく、地形に隠されたギミックや、壁の強度まで見抜くことができるらしい。
数秒後、彼女はぱっと顔を輝かせた。
「ビンゴ!ユーさんの言う通りだよ!この壁、見た目ほど厚くない。一部、脆くなっている場所がある。ピッケルで叩けば、簡単に崩せそうだ!」
彼女はリュックサックから愛用のピッケルを取り出すと、壁の一点を指差した。
「ここ!ここを叩けば、隠し通路が開通するはず!」
「隠し通路……!」
カエデが、驚きの声を上げる。
リオは得意げに胸を張った。
「私の千里眼と、ユーさんの索敵能力。この二つを合わせれば、どんなダンジョンの隠し要素も見つけ出せるってわけだね!これぞ、最強の探索コンビの誕生じゃない!?」
俺とリオは顔を見合わせ、にやりと笑った。カエデは、そんな俺たちの様子を、少し呆れたような、それでいてどこか楽しそうな顔で眺めていた。
カエデがレイピアの柄で壁の脆い部分を叩くと、リオの言った通り、岩壁はガラガラと音を立てて崩れ落ちた。その奥には、人が一人やっと通れるほどの、狭い通路が続いていた。
「よし、行こう!こっちなら、ゴブリンに見つからずに進めるかもしれない!」
リオを先頭に、俺たちは隠し通路へと足を踏み入れた。中は狭く、少し進むとすぐに広い空間に出た。そこは、正規ルートである右の道の中腹あたり。俺たちは、洞窟の守備隊の大部分をスキップして、中盤まで一気に進むことに成功したのだ。
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