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第六十八話 連合、始動
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対パンデモニウム連合『フロンティア』の結成は、アビスの淀んだ空気に一石を投じた。今までパンデモニウムの圧政に声を上げられずにいた者たちが、俺たちの噂を聞きつけ、次々と隠れ家のアジトへと集まってきたのだ。
その中には、情報収集を得意とする斥候職、罠の設置や解除に長けた盗賊、そして味方の士気を高める吟遊詩人まで、多種多様なクラスのプレイヤーがいた。彼らは皆、パンデモニウムに何らかの恨みを持つ者たちだった。
俺たちの連合は、瞬く間に百人を超える大所帯へと膨れ上がった。
そして、決起から三日後。俺たちはついに最初の作戦を開始した。
目標は、第一エリア『賭博街』の解放。
「野郎ども、準備はいいか!」
バルガンの雷鳴のような檄が、アジトに響き渡る。
「「「オオオオオッ!」」」
百を超える雄叫びが、それに呼応した。
俺はバルガンの隣で、最終的な作戦の確認を行う。
「賭博街の入り口は、二つの巨大な門で固められています。正面から突破するのは得策ではありません。斥候部隊からの情報によれば、監視が手薄な古い水道管ルートがあるとのことです」
俺の言葉に、バルガンはにやりと笑った。
「よし、決まりだな。奇襲こそ戦の華だ!」
俺たちの作戦はこうだ。
バルガン率いる主力の強襲部隊が、水道管ルートから賭博街の中心部へと奇襲をかける。その騒ぎに乗じて、俺とカエデ、リオ、ゴブ、そして数名の精鋭部隊が、エリアボスである幹部『幻惑のピエロ』が潜む中央カジノタワーへと潜入する。
ボスを叩き指揮系統を麻痺させれば、残った下級メンバーたちは烏合の衆と化す。それが俺の狙いだった。
「ユーの旦那、頼んだぜ!」
「バルガンさんこそ、ご武運を!」
俺たちは固い握手を交わし、二手に分かれた。
俺たち精鋭部隊は斥候の案内で、アビスのさらに下層にある古い水道管へと向かった。
中はヘドロの匂いが立ち込める劣悪な環境だった。だが、誰も文句一つ言わない。全員の瞳には、これから始まる戦いへの決意の光が宿っていた。
「……始まったようだ」
カエデが天井から微かに響いてくる戦闘の音を捉えた。
バルガンたちが奇襲を開始したのだ。
「行きましょう。俺たちも遅れるわけにはいきません」
俺たちは水道管の出口から、賭博街の裏通りへと音もなく侵入した。
賭博街は、その名の通り欲望と喧騒に満ちた場所だった。
ネオンのように輝く魔晶石の看板。いかさまダイスが転がる賭博場。そして、血と歓声が渦巻く地下のモンスター闘技場。
だが、その活気は今、バルガンたちの奇襲によって混乱の坩堝と化していた。
「敵襲だ! フロンティアの連中だ!」
「どこから来た!?」
「くそっ、囲まれた!」
パンデモニウムのメンバーたちが慌てふためいて右往左往している。その隙を突き、俺たちは街の影から影へと素早く移動していく。
目的地は街で最も高く、そして最も悪趣味な建物。中央カジノタワー『バベル』。
その最上階に、幻惑のピエロはいる。
タワーの入り口は屈強な見張りが固めていた。だが、彼らの意識も外の騒動に完全に引きつけられている。
俺はシャドウスライムを先行させ、内部の構造を探らせた。
「警備システムは魔力感知式。正面から入ればすぐに警報が鳴ります。ですが、三階のテラスに繋がる搬入用のリフトが今は動いていないようです」
「そこから行くぞ」
カエデが即座に決断した。
俺たちは建物の側面にある荷物用のリフトへと回り込む。
「ロックバード!」
俺の呼びかけに、小型化させたロックバードが音もなく現れた。
俺たちはその背に乗り、一気に三階のテラスへと舞い上がる。
タワーの内部へと無傷での潜入に成功した。
「よし……! このまま最上階へ!」
リオが小声でガッツポーズをする。
だが、タワーの内部は静まり返っていた。外の喧騒が嘘のようだ。
それは、あまりにも静かすぎた。
「……罠か?」
カエデが警戒を強める。
俺も同じことを感じていた。
俺たちが最上階へと続く階段へと足を踏み入れた、その瞬間。
タワー全体に甲高い子供の笑い声のようなアナウンスが響き渡った。
『――ピンポンパンポーン♪ ようこそ、お客様!カジノタワー「バベル」へ!』
『ただいまより、素敵な、素敵な、マジックショーの始まりでーす!最初の演目は……そうだなあ。「迷える子羊たちの、絶望鬼ごっこ」なんて、いかがかな?』
その声と共に、俺たちの周囲の景色がぐにゃりと歪み始めた。
壁も床も天井も、全てがチェス盤のような白黒の模様に変わり、無限に続く迷宮のような空間へと変貌を遂げた。
「なっ……!?」
「これは、幻術!?」
俺たちはいつの間にか、幻惑のピエロが作り出した巨大な幻の迷宮に閉じ込められていたのだ。
こちらの潜入は、完全に読まれていた。
『アハハハハ! さあ、ショーの始まりだ! 僕にたどり着くのが先か、それとも僕が仕掛けた素敵なビックリ箱にお前たちが喰われるのが先か! せいぜい楽しませておくれよ!』
ピエロの狂気に満ちた哄笑が、歪んだ空間に響き渡る。
俺たちの最初の幹部との戦いは、最悪の形でその幕を開けた。
連合は始動した。だが、その前途には想像を絶する困難が待ち構えていた。
その中には、情報収集を得意とする斥候職、罠の設置や解除に長けた盗賊、そして味方の士気を高める吟遊詩人まで、多種多様なクラスのプレイヤーがいた。彼らは皆、パンデモニウムに何らかの恨みを持つ者たちだった。
俺たちの連合は、瞬く間に百人を超える大所帯へと膨れ上がった。
そして、決起から三日後。俺たちはついに最初の作戦を開始した。
目標は、第一エリア『賭博街』の解放。
「野郎ども、準備はいいか!」
バルガンの雷鳴のような檄が、アジトに響き渡る。
「「「オオオオオッ!」」」
百を超える雄叫びが、それに呼応した。
俺はバルガンの隣で、最終的な作戦の確認を行う。
「賭博街の入り口は、二つの巨大な門で固められています。正面から突破するのは得策ではありません。斥候部隊からの情報によれば、監視が手薄な古い水道管ルートがあるとのことです」
俺の言葉に、バルガンはにやりと笑った。
「よし、決まりだな。奇襲こそ戦の華だ!」
俺たちの作戦はこうだ。
バルガン率いる主力の強襲部隊が、水道管ルートから賭博街の中心部へと奇襲をかける。その騒ぎに乗じて、俺とカエデ、リオ、ゴブ、そして数名の精鋭部隊が、エリアボスである幹部『幻惑のピエロ』が潜む中央カジノタワーへと潜入する。
ボスを叩き指揮系統を麻痺させれば、残った下級メンバーたちは烏合の衆と化す。それが俺の狙いだった。
「ユーの旦那、頼んだぜ!」
「バルガンさんこそ、ご武運を!」
俺たちは固い握手を交わし、二手に分かれた。
俺たち精鋭部隊は斥候の案内で、アビスのさらに下層にある古い水道管へと向かった。
中はヘドロの匂いが立ち込める劣悪な環境だった。だが、誰も文句一つ言わない。全員の瞳には、これから始まる戦いへの決意の光が宿っていた。
「……始まったようだ」
カエデが天井から微かに響いてくる戦闘の音を捉えた。
バルガンたちが奇襲を開始したのだ。
「行きましょう。俺たちも遅れるわけにはいきません」
俺たちは水道管の出口から、賭博街の裏通りへと音もなく侵入した。
賭博街は、その名の通り欲望と喧騒に満ちた場所だった。
ネオンのように輝く魔晶石の看板。いかさまダイスが転がる賭博場。そして、血と歓声が渦巻く地下のモンスター闘技場。
だが、その活気は今、バルガンたちの奇襲によって混乱の坩堝と化していた。
「敵襲だ! フロンティアの連中だ!」
「どこから来た!?」
「くそっ、囲まれた!」
パンデモニウムのメンバーたちが慌てふためいて右往左往している。その隙を突き、俺たちは街の影から影へと素早く移動していく。
目的地は街で最も高く、そして最も悪趣味な建物。中央カジノタワー『バベル』。
その最上階に、幻惑のピエロはいる。
タワーの入り口は屈強な見張りが固めていた。だが、彼らの意識も外の騒動に完全に引きつけられている。
俺はシャドウスライムを先行させ、内部の構造を探らせた。
「警備システムは魔力感知式。正面から入ればすぐに警報が鳴ります。ですが、三階のテラスに繋がる搬入用のリフトが今は動いていないようです」
「そこから行くぞ」
カエデが即座に決断した。
俺たちは建物の側面にある荷物用のリフトへと回り込む。
「ロックバード!」
俺の呼びかけに、小型化させたロックバードが音もなく現れた。
俺たちはその背に乗り、一気に三階のテラスへと舞い上がる。
タワーの内部へと無傷での潜入に成功した。
「よし……! このまま最上階へ!」
リオが小声でガッツポーズをする。
だが、タワーの内部は静まり返っていた。外の喧騒が嘘のようだ。
それは、あまりにも静かすぎた。
「……罠か?」
カエデが警戒を強める。
俺も同じことを感じていた。
俺たちが最上階へと続く階段へと足を踏み入れた、その瞬間。
タワー全体に甲高い子供の笑い声のようなアナウンスが響き渡った。
『――ピンポンパンポーン♪ ようこそ、お客様!カジノタワー「バベル」へ!』
『ただいまより、素敵な、素敵な、マジックショーの始まりでーす!最初の演目は……そうだなあ。「迷える子羊たちの、絶望鬼ごっこ」なんて、いかがかな?』
その声と共に、俺たちの周囲の景色がぐにゃりと歪み始めた。
壁も床も天井も、全てがチェス盤のような白黒の模様に変わり、無限に続く迷宮のような空間へと変貌を遂げた。
「なっ……!?」
「これは、幻術!?」
俺たちはいつの間にか、幻惑のピエロが作り出した巨大な幻の迷宮に閉じ込められていたのだ。
こちらの潜入は、完全に読まれていた。
『アハハハハ! さあ、ショーの始まりだ! 僕にたどり着くのが先か、それとも僕が仕掛けた素敵なビックリ箱にお前たちが喰われるのが先か! せいぜい楽しませておくれよ!』
ピエロの狂気に満ちた哄笑が、歪んだ空間に響き渡る。
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連合は始動した。だが、その前途には想像を絶する困難が待ち構えていた。
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