79 / 119
エリーゼの感染
しおりを挟む
エリーゼ様が発症‥‥‥?
ゲオルグ様は青ざめて慌てふためいている。
この流行り病は発症すると致死率が高い。
発症したとなると予防対策は意味がない。
刺繍マスクも効果がない。
俺の作った手持ちのポーションも村で全て使い切ってしまった。
「どうしよう‥‥‥?」
「とにかくエリーゼ様の元へ」
ティナに言われて向かう事にした。
普通ならば面会謝絶だろうけど俺だからと通された。エリーゼ様は特別室とかではなく隔離された感染者部屋に横たわっていた。他の感染者と一緒に。
「ゲホッ! ゲホッ!! ‥‥‥エドガー様、このような‥‥‥ゲホッ! 姿をお見せして‥‥‥ゲホッゲホッ!! 申し訳‥‥‥ございませんわ‥‥‥」
普段のエリーゼ様とは見る影もない程弱っていた。状況は一刻を争う。
「くそぅ‥‥‥、ポーションがもっとあれば‥‥‥」
「いえ‥‥‥、ポーションは、ゲホッ! 他の方に‥‥‥使ってくださいな」
確かにこの状況でエリーゼ様だけに使うのは。他にも必要な人がここにいる。
「‥‥‥エドガー様。急ピッチで作成しておりまして一本だけはなんとかなりそうです」
セバスさんが寄ってきて耳打ちをした。
この一本はエリーゼ様に使うか‥‥‥、それとも他の人に使うか‥‥‥。
考えろ、エドガー!
お前の武器は小賢しい頭の中しかないだろう!?
ポーション‥‥‥肺疾患‥‥‥
!!!
「すみません! この感染症は肺に感染するんですよね!?」
近くにいた医官の人に確認する。
「そうです。それでこの一本のポーションは誰に使いますか?」
「いえ‥‥‥ここにいる人全員に使います」
「それだと容量として足りませんよ‥‥‥」
「ポーションの使い方を変更します!!!!」
「ポーションの使い方を?」
医官の人からは当然の疑問だ。普通の使い方じゃないからな。
「ポーションを霧状にして吸入させます!」
ポーション一本を飲ませると病の原因を減らして体力を回復させる。
ポーションを肺にのみ行き渡らせれば体力の回復は出来ないが病の原因は減らす事が出来るはずだ。
「面白いわね‥‥‥それでやってみましょうか。でも霧状にするにはどうやって?」
「‥‥‥ティナ」
ティナが取り出したのはイブが出がけにくれた『噴霧器』だ。
容器に入れた液体に細い管を立て、その上部に高速で空気を吹き付ける。するとベンチュリ効果により負圧が発生し、管から液体が吸い上げられる。吸い上げられた液体はその空気によって霧状に噴射される。
村で使っていた消毒用アルコールを噴霧するのとは少し違うが構造はほぼ一緒だ。
こちらは魔石を使ってごく弱い風魔法で長時間霧が発生する。
日本で言うところのネブライザー吸入のようなものだ。これなら一人当たりのポーションの量は少なくても間に合うはずだ。
「やってみましょう。私は【ポーション治療】のスキルを持ってます。お任せください」
「ではよろしくお願いします」
ちょうどよく都合の良いスキル持ちがいたものだ。良かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
医官の方が魔石ネブライザーを順に使ってポーションミストを吸入させた。そこにいた全員の症状が落ち着いた。
患者は体力を回復させるためかみんな寝てしまった。咳などはもう出ていない。
「‥‥‥咄嗟の判断でこんな方法を思いつくなんて。すごい人ですね」
「それでも先生が居なかったらみんな助からなかったと思います。ありがとうございました」
その後も感染症対策の話をしたら感激していた。話のわかる医官さんだな。
「名乗ってなかったですね。俺はエドガー・テオドールと申します」
「エミリアよ、この街の保健衛生所の所長をしているわ。よろしくね、エドガーくん」
「こちらこそです、ドクターエミリア」
握手は出来ないので肘でタッチをした。
ゲオルグ様は青ざめて慌てふためいている。
この流行り病は発症すると致死率が高い。
発症したとなると予防対策は意味がない。
刺繍マスクも効果がない。
俺の作った手持ちのポーションも村で全て使い切ってしまった。
「どうしよう‥‥‥?」
「とにかくエリーゼ様の元へ」
ティナに言われて向かう事にした。
普通ならば面会謝絶だろうけど俺だからと通された。エリーゼ様は特別室とかではなく隔離された感染者部屋に横たわっていた。他の感染者と一緒に。
「ゲホッ! ゲホッ!! ‥‥‥エドガー様、このような‥‥‥ゲホッ! 姿をお見せして‥‥‥ゲホッゲホッ!! 申し訳‥‥‥ございませんわ‥‥‥」
普段のエリーゼ様とは見る影もない程弱っていた。状況は一刻を争う。
「くそぅ‥‥‥、ポーションがもっとあれば‥‥‥」
「いえ‥‥‥、ポーションは、ゲホッ! 他の方に‥‥‥使ってくださいな」
確かにこの状況でエリーゼ様だけに使うのは。他にも必要な人がここにいる。
「‥‥‥エドガー様。急ピッチで作成しておりまして一本だけはなんとかなりそうです」
セバスさんが寄ってきて耳打ちをした。
この一本はエリーゼ様に使うか‥‥‥、それとも他の人に使うか‥‥‥。
考えろ、エドガー!
お前の武器は小賢しい頭の中しかないだろう!?
ポーション‥‥‥肺疾患‥‥‥
!!!
「すみません! この感染症は肺に感染するんですよね!?」
近くにいた医官の人に確認する。
「そうです。それでこの一本のポーションは誰に使いますか?」
「いえ‥‥‥ここにいる人全員に使います」
「それだと容量として足りませんよ‥‥‥」
「ポーションの使い方を変更します!!!!」
「ポーションの使い方を?」
医官の人からは当然の疑問だ。普通の使い方じゃないからな。
「ポーションを霧状にして吸入させます!」
ポーション一本を飲ませると病の原因を減らして体力を回復させる。
ポーションを肺にのみ行き渡らせれば体力の回復は出来ないが病の原因は減らす事が出来るはずだ。
「面白いわね‥‥‥それでやってみましょうか。でも霧状にするにはどうやって?」
「‥‥‥ティナ」
ティナが取り出したのはイブが出がけにくれた『噴霧器』だ。
容器に入れた液体に細い管を立て、その上部に高速で空気を吹き付ける。するとベンチュリ効果により負圧が発生し、管から液体が吸い上げられる。吸い上げられた液体はその空気によって霧状に噴射される。
村で使っていた消毒用アルコールを噴霧するのとは少し違うが構造はほぼ一緒だ。
こちらは魔石を使ってごく弱い風魔法で長時間霧が発生する。
日本で言うところのネブライザー吸入のようなものだ。これなら一人当たりのポーションの量は少なくても間に合うはずだ。
「やってみましょう。私は【ポーション治療】のスキルを持ってます。お任せください」
「ではよろしくお願いします」
ちょうどよく都合の良いスキル持ちがいたものだ。良かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
医官の方が魔石ネブライザーを順に使ってポーションミストを吸入させた。そこにいた全員の症状が落ち着いた。
患者は体力を回復させるためかみんな寝てしまった。咳などはもう出ていない。
「‥‥‥咄嗟の判断でこんな方法を思いつくなんて。すごい人ですね」
「それでも先生が居なかったらみんな助からなかったと思います。ありがとうございました」
その後も感染症対策の話をしたら感激していた。話のわかる医官さんだな。
「名乗ってなかったですね。俺はエドガー・テオドールと申します」
「エミリアよ、この街の保健衛生所の所長をしているわ。よろしくね、エドガーくん」
「こちらこそです、ドクターエミリア」
握手は出来ないので肘でタッチをした。
53
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む
凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!
【完結】魅了の魔法にかけられて全てを失った俺は、最強の魔法剣士になり時を巻き戻す
金峯蓮華
ファンタジー
戦に負け、国が滅び、俺ひとりだけ生き残った。愛する女を失い、俺は死に場所を求め、傭兵となり各地を漂っていた。そんな時、ある男に声をかけられた。
「よぉ、にいちゃん。お前、魅了魔法がかかってるぜ。それも強烈に強いヤツだ。解いてやろうか?」
魅了魔法? なんだそれは?
その男との出会いが俺の人生を変えた。俺は時間をもどし、未来を変える。
R15は死のシーンがあるための保険です。
独自の異世界の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる