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王都学院 編
剣姫の悩み
しおりを挟むワタシはシャルロット•ヤーパニー、ヤーパニー王国第八王女です。悩みがあります。聞いてください。
最初は小さな棘のようなものでした。が最近それが大きくなってきたように思います。
彼との出会いは祝福の儀という12歳で才能を授けられるという儀式でした。そこでハッキリと聞こえてきました。
「黒髪黒目の男に話しかけよ」
聞き惚れるような良い声、従わない気持ちは微塵も有りませんでした。しかしこの国の人間は金髪、茶髪、赤毛が多く黒髪はあまりいない。その上黒目となるとより希少な存在となるでしょう。
「シャルロット•ヤーパニー殿下、『剣帝』‼︎」
教皇さまの声に大きな歓声が上がりました。ワタシは護衛のクリフォードに「ここで待ちなさい」と声をかけて黒髪黒目の男とやらを探しました、時間はあまりかからず見つかり彼のところまで歩きました。
彼は貴族相手に頭をずっと下げていました。でもどう話しかけたら良かったのでしょう?ワタシから見知らぬ異性に話しかけた事など皆無です。どうしましょう。
とりあえず頭を上げさせて名前を聞きました。名前はネロね、覚えたわ。珍しい黒髪について話しかけました。彼はワタシが誰かわかってないらしく「そうですかねぇ?」とごく普通の返事が返ってきてドキッとしました。ワタシ久しぶりに聞きましたわ、敬語でもなんでもない言葉。
その後彼は彼の父親で有りましょう男性に頭を下げさせられておりました。クリフォードが近づいてきた時に「殿下」と呼ばれたせいでおそらく素性もバレてしまった事でしょう。
彼の父親が謝罪をしてきましたがそんな事どうでもよくて、ネロの才能について聞いてみました。彼は男爵の子なので順番から言えば最後の方でしょう。こんな端の方で頭を下げ続けている事で気づいてあげられたでしょうに。
ネロの才能が気になり待つ旨を話すと、周りが騒がしくなり貴族達が順番を譲り始めました。
こういう特別扱いがワタシは好きでは有りません。媚びへつらっているような、その内心では何を考えているのかわからない感じが。
ネロが儀式を受けて大騒ぎになってしまいました。かつてない凄い加護が貰えたのでしょうがよくわかりません。本人もなんだかわかってなさそうでした。
クリフォードも何か言ってどこかに行ってしまったわ、護衛のくせに。まぁ他のも護衛はいたしワタシも賊程度にはやられませんけど。
結局ネロとまた話が出来たのは夜のパーティー。その前にお父様に聞いたらネロの才能は特別なものみたい。神級という一番上のクラスらしく王国でも過去に例を見ないものだったらしいわ。ワタシも剣帝ってとても良い加護だったけど霞んじゃった。
「シャルよ、ネロくんは優しそうな良い子じゃったぞ。結婚するか?ハハハ」
お父様の冗談にまたドキッとしてしまったわ。上機嫌だったからそんな事言ったんでしょうけど。
パーティーでやっとネロと話せたわ。彼は何故か最初に謝罪してきた。聞くと自分のせいで騒ぎになったと思っているみたい。いい人なんだ、と思ったわ。話し方も砕けてきてワタシ本当に久しぶりに楽しかった。
パーティーが終わってからも話し足りなくて、はしたないとは思いつつもこちらから誘ってしまったわ。でもネロは応じてくれた。話をしていても気遣ってくれたり同い年とは思えない。そのあと火事騒ぎになってワタシを安全なところに逃してくれたわ、手を繋いで。
次に会えたのが王都学院の入学式。適当に代表挨拶をしてる際ネロがいるのがわかって嬉しくなっちゃったわ。その後会ったら「殿下」なんて呼び方するからちょっとイラッとした。
でもすぐ「シャル」って呼んでくれて嬉しかったわ。
そしてそのあとよ。なんとワタシの口に手を当てたのよ。ワタシはドキドキしちゃって、ララは怒り出しちゃうし。未婚女性の口に手を当てると「黙って俺について来い」って意味なんだけど、アイツわかってるのかな?「」
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