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第4章
25 公爵家の双子
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「サーラ、助けて!」
「う、うーん……大魔王から助けてほしいのは私のほう……むにゃ……えっ!? 助けて?」
フランの悲鳴で目が覚め、ベッドから飛び起き、寝室の隣室へ走った。
「フラン!」
大きな窓から明るい日差しが入ってくる。
いつの間にベッドへ移動したのか、私はスヤスヤ眠っていたようだ。
「緊急時だ。窓を壊す」
ソファーで眠っていたらしいリアムが、すでに起きて身支度まで済ませていた。
まだ寝間着姿で、髪がぴょんっと跳ねている私と大違い。
リアムは窓に向かって魔術を使おうとした瞬間――
「サーラおばさま! 早くお土産を見せてよ~!」
「リアムさまといちゃいちゃしてるってほんとう!?」
バンッと扉が開き、アルトとリリヤが現れた。
昨日、どんなに頑張っても開かなかった扉。
それがあっさり開いた。
しかも、子供の力で。
「いちゃいちゃなんてしてませんよ!」
「よだれを垂らして寝ていたぞ」
「あっ! そんなこと言うんですか? 昨晩、あんなに私たちの心の距離が近くなったのに……。素直じゃないですね」
「事実だ」
どうやら、よだれを垂らして寝ていたのは本当のことらしい……
ちょっとショックだった。
「私の寝顔よりも、フランはどこですか?」
「あの子供狼のこと~? おとなしく狼の姿にならないからさぁ。追いかけたんだけど、逃げられちゃった」
「つまんなーい」
アルトとリリヤは、朝からフランを追いかけ回していたらしく、アルトの手にフランの帽子が握られている。
「フランはっ……フランは無事なんですか?」
「しらなーい」
「逃げられたって言ったじゃない。聞いてなかったの?」
ブチッと私の堪忍袋の緒が切れた。
がしっと二人の首根っこを捕まえた。
日々、ハンマーを振るい、私の鍛え抜かれた腕力に、子供たちは逆らえない。
「はっ、はなせよ!」
「おとうさま~! おかあさま~!」
「フランは優しいから手加減してくれてるんです! 本気になったら、あなたたちくらいぼこぼこですよ!」
私の怒りに気づいた二人は、怯えた顔をして半泣きになった。
「フランになにかあったら許しませんよ!」
「サーラ、待て。フランは無事だ」
リアムが私の肩を叩き、バルコニーのほうを指さす。
そこには茶色の犬――ではなく、狼の姿になったフランがいた。
フランの姿は私の怒りを浄化し、アルトとリリヤをぽいっと投げ捨て、もふもふにまっしぐら!
閉まっていたはずの窓は今なら開く!
「フランーっ!」
「サーラぁっ!」
感動の再会に私たちはがしっと抱き合った。
そして、どさくさに紛れて、フランの茶色の毛並みに顔をうずめた。
――もふもふ! 思った通りの楽園です!
「おい、フラン。サーラに気をつけろ」
リアムが私の背後から余計なことを言ったせいで、私からフランが離れた。
「あっ! 私の楽園がっ!」
「なにが楽園だよ! あの子供たちに朝から追いかけ回されて大変だったんだぞ!」
狼の姿で怒るフランは可愛いかった。
手を伸ばそうとすると、フランは怒って威嚇する、
撫でるのを渋々諦めた。
「フランも大変な目にあったかもしれませんが、私も大変だったんですよ」
「そういえば、サーラが寝間着……? ま、まさか! リアム様とサーラって同じ部屋だった?」
「ユディンお兄様の罠にはめられたんです!」
フランが私とリアムの顔を交互に見る。
リアムはいつも通りの無表情だ。
なにを考えているか、さっぱりわからない。
「とりあえず、寝間着を着替えろ。フランも人の姿に戻れ」
「はい……」
「うん……」
私たちが返事をすると、リアムはすぐそばにいたアルトの手から、フランの帽子を奪った。
「あっ! ぼくの……」
「これはお前の帽子か?」
「ひっ! い、いえ……違います……」
リアムは子供だからといって、手加減するような人間ではない。
アルトとリリヤは本当のリアムをわかってない。
リアムは憧れの魔術師――ヴィフレア王家第二王子、天才と呼ばれ、かっこよくて優しい宮廷魔術師長だと思っていただろう。
残念ながら、子供であっても容赦しない性格である。
私とフランが身支度をしている間、アルトとリリヤは大魔王のお説教を受けるはめになってしまった。
着替え終わり、寝室から出てきた頃には二人はすっかりおとなしくなっていた。
そして、部屋には昨日、私を閉じ込めたエリサさんがいた。
「アルトとリリヤが申し訳ありません」
ちょうど、エリサさんがリアムに謝っているところだった。
けれど、私は彼女への好感度が高かっただけに、なんだか裏切られた気分だ。
「まずはこちらを騙し、部屋に閉じ込めたことを謝ったらどうだ」
「まあ、リアム様。閉じ込めてなどおりませんわ。お二人が同室になりたいと望まれたのではありませんか」
けろっとした顔で、エリサさんは言った。
――う、うわぁ、ユディンの奥様だけありますね。
しかも、凶悪なリアムの顔を見ても微笑みをキープできるなんて、相当、心臓が強い。
「愛する婚約者との仲を無理やり引き裂かれ、夫を脅して滞在中……でしたわよね?」
「無理やりなのは、その設定ですよ!」
「そうだったな」
私が抗議したのに、リアムは肯定した。
――リアムだって、無茶な設定だってわかってるはずなのに!
フランを見ると、『あ、やっぱり』という顔をしていた。
騙されない人もいるだろう。
でも、『一晩を共にした』ワードは強い。
なにもなかったとしても、これを聞いたルーカス様が黙っているとは思えない。
「リアム……。本当にいいんですか?」
ルーカス様の怒りの矛先が、リアムにほとんど向かってしまう。
それが心配だった。
「サーラおねえさま。お土産くれるって約束してたよね~?」
「どんなお土産なの?」
リアムのお説教の効果はすさまじく、『サーラおばさま』から『サーラおねえさま』に変わった。
生意気な二人がこんな従順になるなんて、私がいない間に、どんな脅しを使ったのか教えてほしいくらいである。
待ちきれないのか、二人は私の手をぐいぐい引っ張った。
「早く~!」
「楽しみにしてたんだからぁ!」
「わ、わかりました! ちょっと待っててくださいね」
荷物の中から、魔道具を探して取り出した。
「これが二人へのお土産です!」
銃を手にした私の気分は女スパイ!
みんなの前で、かっこいいポーズを決めた。
ただし、手に持っているのは偽物の銃である。
「なにそれ」
「へんな道具……」
どうやら、この世界に銃はないようだ。
ただし、私の銃はおもちゃの銃で、攻撃に使うものではない。
「それがサーラ様の魔道具ですか? 不思議な形をした道具ですね」
エリサさんも私の魔道具がなんなのかわからないようで、怪訝そうな顔をしている。
「あ、あのさ……サーラ……。それって爆発しないよね?」
何度か魔道具を爆発させたのを知っているフランは後ずさった。
「大丈夫ですよ。この魔道具は外で使うものなんです。庭へ行きましょう」
部屋のバルコニーから、広い庭園へぞろぞろと歩いていく。
アールグレーン公爵家の庭園には、きっと名のある彫刻家が造ったであろう人や動物の彫刻が飾られている。
白い石のアーチや橋、澄んだ池が見事だ。
そんな美しい庭を朝早くから探索しているのは、滞在している親戚たちだ。
「あら、サーラ様たちだわ」
「朝からなにをなさるのかしら?」
窓から顔を覗かせる人もいた。
ユディンが昨晩、言っていたように大勢の親戚が滞在している。
屋敷がある町には、新しい公爵のお祝いパーティーに参加するため、宿屋に宿泊している招待客もいることだろう。
空を見上げると、雲一つない青い空が広がっている。
「条件はばっちり揃ってますね!」
私が手にしたのは青い魔石。
この魔石は青色のガラス窓に水滴がついているように見える上級魔石だ。
リボルバー銃っぽい見た目で、シリンダーの部分に魔石を装填することで魔力が尽きるまで何度も使用できる。
この魔石の名は【雨】――銃のトリガーを引く!
銃口から放たれた魔石の【雨】は、銃口から雨を生み、太陽の光に水滴が照らされた。
キラキラ水滴が輝き、そして、庭に大きな虹を作り出す。
「うわぁ! 虹だ……!」
フランが頭上を見上げた。
庭を散策していた人たちも足を止め、虹に目をやる。
「まあ! 綺麗ですわ」
「虹を見ると、いいことが起こりそうな気がしますわね」
虹を見れてラッキーだと思うのは、どこの世界でも変わらないらしい。
七色の虹を眺め、私はアルトとリリヤに言った。
「これは水鉄砲です。お天気のいい日に使うと、虹が見れます!」
「な、なんだよ。そんな魔道具、珍しいけどただのおもちゃだ!」
「そうよ。子供騙しだわ」
――ええっ!? 子供騙しって、子供ですよね!?
気に入ってもらえると思った虹を作る水鉄砲。
子供用のおもちゃとして考えたのに、二人にはいまいちだったようだ。
二人に差し出した水鉄砲は、行き場をなくてしまった。
上級魔石【雨】を使用した贅沢品だったけれど、失敗作に―――
「魔道具の力を引き出すのは、魔術師の役目だ」
リアムが横から手を出し、私から水鉄砲を奪った。
「リアム……!?」
水鉄砲とはいえ、見た目は銃。
銃を構えたリアムは殺し屋っぽい。
「この魔道具が子供騙しかどうか、よく見ておくんだな」
「う、うーん……大魔王から助けてほしいのは私のほう……むにゃ……えっ!? 助けて?」
フランの悲鳴で目が覚め、ベッドから飛び起き、寝室の隣室へ走った。
「フラン!」
大きな窓から明るい日差しが入ってくる。
いつの間にベッドへ移動したのか、私はスヤスヤ眠っていたようだ。
「緊急時だ。窓を壊す」
ソファーで眠っていたらしいリアムが、すでに起きて身支度まで済ませていた。
まだ寝間着姿で、髪がぴょんっと跳ねている私と大違い。
リアムは窓に向かって魔術を使おうとした瞬間――
「サーラおばさま! 早くお土産を見せてよ~!」
「リアムさまといちゃいちゃしてるってほんとう!?」
バンッと扉が開き、アルトとリリヤが現れた。
昨日、どんなに頑張っても開かなかった扉。
それがあっさり開いた。
しかも、子供の力で。
「いちゃいちゃなんてしてませんよ!」
「よだれを垂らして寝ていたぞ」
「あっ! そんなこと言うんですか? 昨晩、あんなに私たちの心の距離が近くなったのに……。素直じゃないですね」
「事実だ」
どうやら、よだれを垂らして寝ていたのは本当のことらしい……
ちょっとショックだった。
「私の寝顔よりも、フランはどこですか?」
「あの子供狼のこと~? おとなしく狼の姿にならないからさぁ。追いかけたんだけど、逃げられちゃった」
「つまんなーい」
アルトとリリヤは、朝からフランを追いかけ回していたらしく、アルトの手にフランの帽子が握られている。
「フランはっ……フランは無事なんですか?」
「しらなーい」
「逃げられたって言ったじゃない。聞いてなかったの?」
ブチッと私の堪忍袋の緒が切れた。
がしっと二人の首根っこを捕まえた。
日々、ハンマーを振るい、私の鍛え抜かれた腕力に、子供たちは逆らえない。
「はっ、はなせよ!」
「おとうさま~! おかあさま~!」
「フランは優しいから手加減してくれてるんです! 本気になったら、あなたたちくらいぼこぼこですよ!」
私の怒りに気づいた二人は、怯えた顔をして半泣きになった。
「フランになにかあったら許しませんよ!」
「サーラ、待て。フランは無事だ」
リアムが私の肩を叩き、バルコニーのほうを指さす。
そこには茶色の犬――ではなく、狼の姿になったフランがいた。
フランの姿は私の怒りを浄化し、アルトとリリヤをぽいっと投げ捨て、もふもふにまっしぐら!
閉まっていたはずの窓は今なら開く!
「フランーっ!」
「サーラぁっ!」
感動の再会に私たちはがしっと抱き合った。
そして、どさくさに紛れて、フランの茶色の毛並みに顔をうずめた。
――もふもふ! 思った通りの楽園です!
「おい、フラン。サーラに気をつけろ」
リアムが私の背後から余計なことを言ったせいで、私からフランが離れた。
「あっ! 私の楽園がっ!」
「なにが楽園だよ! あの子供たちに朝から追いかけ回されて大変だったんだぞ!」
狼の姿で怒るフランは可愛いかった。
手を伸ばそうとすると、フランは怒って威嚇する、
撫でるのを渋々諦めた。
「フランも大変な目にあったかもしれませんが、私も大変だったんですよ」
「そういえば、サーラが寝間着……? ま、まさか! リアム様とサーラって同じ部屋だった?」
「ユディンお兄様の罠にはめられたんです!」
フランが私とリアムの顔を交互に見る。
リアムはいつも通りの無表情だ。
なにを考えているか、さっぱりわからない。
「とりあえず、寝間着を着替えろ。フランも人の姿に戻れ」
「はい……」
「うん……」
私たちが返事をすると、リアムはすぐそばにいたアルトの手から、フランの帽子を奪った。
「あっ! ぼくの……」
「これはお前の帽子か?」
「ひっ! い、いえ……違います……」
リアムは子供だからといって、手加減するような人間ではない。
アルトとリリヤは本当のリアムをわかってない。
リアムは憧れの魔術師――ヴィフレア王家第二王子、天才と呼ばれ、かっこよくて優しい宮廷魔術師長だと思っていただろう。
残念ながら、子供であっても容赦しない性格である。
私とフランが身支度をしている間、アルトとリリヤは大魔王のお説教を受けるはめになってしまった。
着替え終わり、寝室から出てきた頃には二人はすっかりおとなしくなっていた。
そして、部屋には昨日、私を閉じ込めたエリサさんがいた。
「アルトとリリヤが申し訳ありません」
ちょうど、エリサさんがリアムに謝っているところだった。
けれど、私は彼女への好感度が高かっただけに、なんだか裏切られた気分だ。
「まずはこちらを騙し、部屋に閉じ込めたことを謝ったらどうだ」
「まあ、リアム様。閉じ込めてなどおりませんわ。お二人が同室になりたいと望まれたのではありませんか」
けろっとした顔で、エリサさんは言った。
――う、うわぁ、ユディンの奥様だけありますね。
しかも、凶悪なリアムの顔を見ても微笑みをキープできるなんて、相当、心臓が強い。
「愛する婚約者との仲を無理やり引き裂かれ、夫を脅して滞在中……でしたわよね?」
「無理やりなのは、その設定ですよ!」
「そうだったな」
私が抗議したのに、リアムは肯定した。
――リアムだって、無茶な設定だってわかってるはずなのに!
フランを見ると、『あ、やっぱり』という顔をしていた。
騙されない人もいるだろう。
でも、『一晩を共にした』ワードは強い。
なにもなかったとしても、これを聞いたルーカス様が黙っているとは思えない。
「リアム……。本当にいいんですか?」
ルーカス様の怒りの矛先が、リアムにほとんど向かってしまう。
それが心配だった。
「サーラおねえさま。お土産くれるって約束してたよね~?」
「どんなお土産なの?」
リアムのお説教の効果はすさまじく、『サーラおばさま』から『サーラおねえさま』に変わった。
生意気な二人がこんな従順になるなんて、私がいない間に、どんな脅しを使ったのか教えてほしいくらいである。
待ちきれないのか、二人は私の手をぐいぐい引っ張った。
「早く~!」
「楽しみにしてたんだからぁ!」
「わ、わかりました! ちょっと待っててくださいね」
荷物の中から、魔道具を探して取り出した。
「これが二人へのお土産です!」
銃を手にした私の気分は女スパイ!
みんなの前で、かっこいいポーズを決めた。
ただし、手に持っているのは偽物の銃である。
「なにそれ」
「へんな道具……」
どうやら、この世界に銃はないようだ。
ただし、私の銃はおもちゃの銃で、攻撃に使うものではない。
「それがサーラ様の魔道具ですか? 不思議な形をした道具ですね」
エリサさんも私の魔道具がなんなのかわからないようで、怪訝そうな顔をしている。
「あ、あのさ……サーラ……。それって爆発しないよね?」
何度か魔道具を爆発させたのを知っているフランは後ずさった。
「大丈夫ですよ。この魔道具は外で使うものなんです。庭へ行きましょう」
部屋のバルコニーから、広い庭園へぞろぞろと歩いていく。
アールグレーン公爵家の庭園には、きっと名のある彫刻家が造ったであろう人や動物の彫刻が飾られている。
白い石のアーチや橋、澄んだ池が見事だ。
そんな美しい庭を朝早くから探索しているのは、滞在している親戚たちだ。
「あら、サーラ様たちだわ」
「朝からなにをなさるのかしら?」
窓から顔を覗かせる人もいた。
ユディンが昨晩、言っていたように大勢の親戚が滞在している。
屋敷がある町には、新しい公爵のお祝いパーティーに参加するため、宿屋に宿泊している招待客もいることだろう。
空を見上げると、雲一つない青い空が広がっている。
「条件はばっちり揃ってますね!」
私が手にしたのは青い魔石。
この魔石は青色のガラス窓に水滴がついているように見える上級魔石だ。
リボルバー銃っぽい見た目で、シリンダーの部分に魔石を装填することで魔力が尽きるまで何度も使用できる。
この魔石の名は【雨】――銃のトリガーを引く!
銃口から放たれた魔石の【雨】は、銃口から雨を生み、太陽の光に水滴が照らされた。
キラキラ水滴が輝き、そして、庭に大きな虹を作り出す。
「うわぁ! 虹だ……!」
フランが頭上を見上げた。
庭を散策していた人たちも足を止め、虹に目をやる。
「まあ! 綺麗ですわ」
「虹を見ると、いいことが起こりそうな気がしますわね」
虹を見れてラッキーだと思うのは、どこの世界でも変わらないらしい。
七色の虹を眺め、私はアルトとリリヤに言った。
「これは水鉄砲です。お天気のいい日に使うと、虹が見れます!」
「な、なんだよ。そんな魔道具、珍しいけどただのおもちゃだ!」
「そうよ。子供騙しだわ」
――ええっ!? 子供騙しって、子供ですよね!?
気に入ってもらえると思った虹を作る水鉄砲。
子供用のおもちゃとして考えたのに、二人にはいまいちだったようだ。
二人に差し出した水鉄砲は、行き場をなくてしまった。
上級魔石【雨】を使用した贅沢品だったけれど、失敗作に―――
「魔道具の力を引き出すのは、魔術師の役目だ」
リアムが横から手を出し、私から水鉄砲を奪った。
「リアム……!?」
水鉄砲とはいえ、見た目は銃。
銃を構えたリアムは殺し屋っぽい。
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