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第2章
29 家族のように(1)
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王都から戻り、商業都市シャルク・ホジャでの生活が本格的に始まった。
王宮の食事と違って、ジグルズ様の屋敷では異国の食べ物も出てくる。
スパイスが利いたスープや平たいパン、野菜に羊の挽き肉を詰めて焼いたものなど、初めて口にするものが多かった。
デザートも変わっていて、バターシロップがかかったパイは、ナッツがたっぷり使用されている。
甘くパリッとしたパイは、とても美味しい。
食事からして、シャルク・ホジャでの生活は、毎日が目新しくて楽しかった。
そんなシャルク・ホジャでは、現在、新しい市庁舎の建設に関わっている人々の間で、ある噂が流れていた。
『大工が言うには、市庁舎の中に議会場らしき部屋が追加されたらしい』
『もしや、公爵はシャルク・ホジャに自治権を与えるのでは?』
ジグルズ様は町の有力者と会って、話をしているようだった。
すぐにやれることではないから、慎重に準備していくのだろう。
そんな中、町の人々の相談役に任命された私は――
「私の仕事は机を守ることじゃありません!」
机を守ることに飽きた私は、与えられた町役場の部屋から飛び出した。
部屋から出た私を待っていたのは、赤髪の男の子――ハリルだった。
「レフィカ様、しかたないですよ。だって、相談者が来ないし……」
私の護衛を任されているハリルは、町役場の中庭で、剣の稽古をしていた。
毎日一緒にいて話しやすく、明るい性格のハリルとは、あっという間に仲良くなった。
侍女のジェレンも一緒に町役場へ通っているけど、今のところ、私よりジェレンのほうが活躍している。
元々、私の教育係として選ばれたジェレンは、賢くて機転が利く。
お茶を用意したり、窓口の受付係をしたりと、町役場の人たちの仕事をあっという間に覚え、軽やかに業務をこなしていた。
ジェレンが淹れた香りのいい花のお茶が、町役場の空気を華やかにし、人々の心を癒す。
「私のなにが悪いんでしょうか……? 親しみやすさがないとか?」
「う、うーん……。それは大丈夫だと思うけど……」
「けど!?」
「レフィカ様は王妃様だから、話しにくいんじゃないかなって思います」
――私が王妃だから?
地位がハンデになるとは……がっくり壁に手をついた。
「レフィカ様がまた、ハリルに相談しているぞ」
「何度目だ。おい、誰かレフィカ様に相談できる案件はないのか?」
「猫でも犬でも鳥でもいい。誰かペットに名前を付けてもらったどうだ?」
「うーん。最近、子猫や子犬が産まれた話は聞きませんねぇ……」
町役場の人が、私とハリルのやり取りを見て、ひそひそと話していた。
――違う、違うんですっ! 私はそんな気遣いと同情で作られた相談じゃなくて、困ってる人の相談を乗るために、ここにいるんですよ!
「ジグルズ様は公爵ですよね。それでも、みんなから親しげに話しかけてもらえていましたよね?」
「う、うーん……レフィカ様とジグルズ様は違います。ジグルズ様は特別だから、しかたないですよ」
私のライバルは強すぎる。
ジグルズ様という存在が、人々の心に大きく占めている。
自治権の話がなかなか進まないのも、ジグルズ様に代わって、町を治めるのを誰もが尻込みしてしまっているからだ。
「地道に相談に来る人を待つしかないですって! じゃ、そういうことで、おれは走り込みを……」
「わかりました。ハリル、町の見回りに行きましょう!」
「えーっ!?」
「待っていても相談はやってきません! 自分から相談を取りに行きますよ」
私が役場の扉を開け、外に出ると、ハリルは慌ててついてきた。
今日の私は、髪を三つ編みにしてエプロンをつけている。
豪華なドレスではなく、町娘が着るような地味なもの。
ドーヴハルク王国の後宮時代から慣れ親しんだ服装だったにも関わず、ジェレンからは『王妃らしくない』と不評だった。
でも、町の見回りをするのに、重くて動きにくいドレスはいらないとジェレンもわかっていて、不承不承ながら認めてくれた。
「レフィカ様は外見は王族なのに、中身はうちの母さんと同じくらい強いと思う……」
ハリルの『母さん』とはゼリヤのことである。
ゼリヤから聞いた話によると、戦争で夫を亡くし、身重のゼリヤを戦場で助けてくれたのが、ジグルズ様だったのだとか――それ以来、ゼリヤはジグルズ様に忠誠を誓い、行動を共にしている。
ベルクヴァイン公爵家の配下は、ゼリヤのようにジグルズ様に命を救われた人がほとんどだ。
「ゼリヤはすごいですよね。剣の腕だけでなく、商人としての立ち回りもうまいですし、王宮に現れた時は、男装の麗人でした。かっこよくて、令嬢たちはうっとりしてましたよ」
劇場の役者よりも人気があると思った。
ジグルズ様の配下でも、一番信頼されているのは、ゼリヤではないだろうか。
「母さんは最初から、なんでもできたわけじゃないんだって、おれに言ってました。だから、ちゃんと体を鍛えて、食べ物の好き嫌いをするなって言われてます」
「それは大事な教えですね」
ハリルは匂いの強い野菜が苦手なようだけど、頑張って食べているのを見たことがある。
「ゼリヤがジグルズ様と出会ったのは、ハリルが生まれる前だったんですね」
「うん。子供はおれ一人だよ。ジグルズ様と会った時、おれはまだ母さんのお腹の中だったから……」
ハリルは運河を眺めた。
運河には船が多く行き来し、その流れは海へ続いている。
「その時の戦争で、おれの父さんは死んだんです」
「そうだったんですか……」
「でも、救われずに死んでいく人もたくさん見てきたから、おれも母さんもジグルズ様に助けられて、幸運だったと思います」
「ハリルは戦場に行ったことがあるんですか?」
ハリルは小さくうなずいた。
「ジグルズ様はイーザック様が王様になるまで、戦場にほとんどいて、おれは後方の拠点で育てられたんです」
「前の王は、ジグルズ様にとったら、実のお父様ですよね?」
「そうです。おれはまだ小さかったから、どうしてなのかわからなかったけど、仲良くなかったみたいです」
――第一王子のジグルズ様を戦場へやっていた? 王位を捨てたこととなにか関係があるの?
国王の命令ならば、逆らえない。
ジグルズ様の境遇は、父に【契約】を刻まれ、命を握られた私たちと似ているような気がした。
「だから、ジグルズ様を守るため、母さんはなんでもできるんです!」
「なんでも……」
そういえば、ゼリヤは商人を装い、他国に出入りしていた。
ゼリヤはジグルズ様が、他国の情報を得るためのスパイでもあったのではないだろうか。
「ゼリヤが商人として、ドーヴハルク王国の後宮に出入りしていたのは、そういうことだったんですね……」
ゼリヤのことも気になったけど、ジグルズ様が父親から嫌われていたことを知り、驚いた。
あれほど優秀で人望の厚い息子を嫌う理由がわからない。
ジグルズ様が王位を捨てた理由に、父親との不仲が関係しているのかもしれない。
優秀な息子を殺したいと思うほどの憎しみを抱かせた理由はいったい――
「お父さーん、お母さーん。どこぉ~!」
考えながら運河沿いを歩いていた私の耳に、子供の泣き声が飛び込んできた。
――これはっ! 困りごとの気配!
「もしかして、仕事じゃないですか!?」
「え? 子供が泣いてるだけじゃ……」
「困っている人です。これは仕事ですね。間違いありません!」
「あっ! レフィカ様、待って! 待ってください~!」
今日一番の張りきりを見せる私に、ハリルは追いつけなかった。
泣いている子供を捜し、見つけるとすばやく駆け寄って、話しかけた。
「どうしました!? なにかお困りごとですか?」
私の勢いに子供は驚き、涙が止まり、目を瞬かせて私を見上げた。
王宮の食事と違って、ジグルズ様の屋敷では異国の食べ物も出てくる。
スパイスが利いたスープや平たいパン、野菜に羊の挽き肉を詰めて焼いたものなど、初めて口にするものが多かった。
デザートも変わっていて、バターシロップがかかったパイは、ナッツがたっぷり使用されている。
甘くパリッとしたパイは、とても美味しい。
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そんなシャルク・ホジャでは、現在、新しい市庁舎の建設に関わっている人々の間で、ある噂が流れていた。
『大工が言うには、市庁舎の中に議会場らしき部屋が追加されたらしい』
『もしや、公爵はシャルク・ホジャに自治権を与えるのでは?』
ジグルズ様は町の有力者と会って、話をしているようだった。
すぐにやれることではないから、慎重に準備していくのだろう。
そんな中、町の人々の相談役に任命された私は――
「私の仕事は机を守ることじゃありません!」
机を守ることに飽きた私は、与えられた町役場の部屋から飛び出した。
部屋から出た私を待っていたのは、赤髪の男の子――ハリルだった。
「レフィカ様、しかたないですよ。だって、相談者が来ないし……」
私の護衛を任されているハリルは、町役場の中庭で、剣の稽古をしていた。
毎日一緒にいて話しやすく、明るい性格のハリルとは、あっという間に仲良くなった。
侍女のジェレンも一緒に町役場へ通っているけど、今のところ、私よりジェレンのほうが活躍している。
元々、私の教育係として選ばれたジェレンは、賢くて機転が利く。
お茶を用意したり、窓口の受付係をしたりと、町役場の人たちの仕事をあっという間に覚え、軽やかに業務をこなしていた。
ジェレンが淹れた香りのいい花のお茶が、町役場の空気を華やかにし、人々の心を癒す。
「私のなにが悪いんでしょうか……? 親しみやすさがないとか?」
「う、うーん……。それは大丈夫だと思うけど……」
「けど!?」
「レフィカ様は王妃様だから、話しにくいんじゃないかなって思います」
――私が王妃だから?
地位がハンデになるとは……がっくり壁に手をついた。
「レフィカ様がまた、ハリルに相談しているぞ」
「何度目だ。おい、誰かレフィカ様に相談できる案件はないのか?」
「猫でも犬でも鳥でもいい。誰かペットに名前を付けてもらったどうだ?」
「うーん。最近、子猫や子犬が産まれた話は聞きませんねぇ……」
町役場の人が、私とハリルのやり取りを見て、ひそひそと話していた。
――違う、違うんですっ! 私はそんな気遣いと同情で作られた相談じゃなくて、困ってる人の相談を乗るために、ここにいるんですよ!
「ジグルズ様は公爵ですよね。それでも、みんなから親しげに話しかけてもらえていましたよね?」
「う、うーん……レフィカ様とジグルズ様は違います。ジグルズ様は特別だから、しかたないですよ」
私のライバルは強すぎる。
ジグルズ様という存在が、人々の心に大きく占めている。
自治権の話がなかなか進まないのも、ジグルズ様に代わって、町を治めるのを誰もが尻込みしてしまっているからだ。
「地道に相談に来る人を待つしかないですって! じゃ、そういうことで、おれは走り込みを……」
「わかりました。ハリル、町の見回りに行きましょう!」
「えーっ!?」
「待っていても相談はやってきません! 自分から相談を取りに行きますよ」
私が役場の扉を開け、外に出ると、ハリルは慌ててついてきた。
今日の私は、髪を三つ編みにしてエプロンをつけている。
豪華なドレスではなく、町娘が着るような地味なもの。
ドーヴハルク王国の後宮時代から慣れ親しんだ服装だったにも関わず、ジェレンからは『王妃らしくない』と不評だった。
でも、町の見回りをするのに、重くて動きにくいドレスはいらないとジェレンもわかっていて、不承不承ながら認めてくれた。
「レフィカ様は外見は王族なのに、中身はうちの母さんと同じくらい強いと思う……」
ハリルの『母さん』とはゼリヤのことである。
ゼリヤから聞いた話によると、戦争で夫を亡くし、身重のゼリヤを戦場で助けてくれたのが、ジグルズ様だったのだとか――それ以来、ゼリヤはジグルズ様に忠誠を誓い、行動を共にしている。
ベルクヴァイン公爵家の配下は、ゼリヤのようにジグルズ様に命を救われた人がほとんどだ。
「ゼリヤはすごいですよね。剣の腕だけでなく、商人としての立ち回りもうまいですし、王宮に現れた時は、男装の麗人でした。かっこよくて、令嬢たちはうっとりしてましたよ」
劇場の役者よりも人気があると思った。
ジグルズ様の配下でも、一番信頼されているのは、ゼリヤではないだろうか。
「母さんは最初から、なんでもできたわけじゃないんだって、おれに言ってました。だから、ちゃんと体を鍛えて、食べ物の好き嫌いをするなって言われてます」
「それは大事な教えですね」
ハリルは匂いの強い野菜が苦手なようだけど、頑張って食べているのを見たことがある。
「ゼリヤがジグルズ様と出会ったのは、ハリルが生まれる前だったんですね」
「うん。子供はおれ一人だよ。ジグルズ様と会った時、おれはまだ母さんのお腹の中だったから……」
ハリルは運河を眺めた。
運河には船が多く行き来し、その流れは海へ続いている。
「その時の戦争で、おれの父さんは死んだんです」
「そうだったんですか……」
「でも、救われずに死んでいく人もたくさん見てきたから、おれも母さんもジグルズ様に助けられて、幸運だったと思います」
「ハリルは戦場に行ったことがあるんですか?」
ハリルは小さくうなずいた。
「ジグルズ様はイーザック様が王様になるまで、戦場にほとんどいて、おれは後方の拠点で育てられたんです」
「前の王は、ジグルズ様にとったら、実のお父様ですよね?」
「そうです。おれはまだ小さかったから、どうしてなのかわからなかったけど、仲良くなかったみたいです」
――第一王子のジグルズ様を戦場へやっていた? 王位を捨てたこととなにか関係があるの?
国王の命令ならば、逆らえない。
ジグルズ様の境遇は、父に【契約】を刻まれ、命を握られた私たちと似ているような気がした。
「だから、ジグルズ様を守るため、母さんはなんでもできるんです!」
「なんでも……」
そういえば、ゼリヤは商人を装い、他国に出入りしていた。
ゼリヤはジグルズ様が、他国の情報を得るためのスパイでもあったのではないだろうか。
「ゼリヤが商人として、ドーヴハルク王国の後宮に出入りしていたのは、そういうことだったんですね……」
ゼリヤのことも気になったけど、ジグルズ様が父親から嫌われていたことを知り、驚いた。
あれほど優秀で人望の厚い息子を嫌う理由がわからない。
ジグルズ様が王位を捨てた理由に、父親との不仲が関係しているのかもしれない。
優秀な息子を殺したいと思うほどの憎しみを抱かせた理由はいったい――
「お父さーん、お母さーん。どこぉ~!」
考えながら運河沿いを歩いていた私の耳に、子供の泣き声が飛び込んできた。
――これはっ! 困りごとの気配!
「もしかして、仕事じゃないですか!?」
「え? 子供が泣いてるだけじゃ……」
「困っている人です。これは仕事ですね。間違いありません!」
「あっ! レフィカ様、待って! 待ってください~!」
今日一番の張りきりを見せる私に、ハリルは追いつけなかった。
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