22 / 72
3章 二人の過去と今と未来へ
22.救出 〜ルカ視点〜
しおりを挟む~ルカ視点~
「……お兄ちゃん! お兄ちゃん、起きて!」
「怖い人が来る前に起きて!」
「大丈夫かなぁ?」
何人かの子供の声がする。僕は何をしてたっけ?
「あっ!? 目を覚ましたかな?」
「長い髪の毛で目が見えないけど、起きたみたいだよ」
ゆさゆさと小さな手で、僕の肩を揺らしている。
揺らしている?
「え……、どこ?」
子供達が僕を、ぐるりと囲んで見下ろしていた。
「皆、捕まっちゃったの。帰れないの」
「あっ!」
そうだ。僕は大きな倉庫から子供達の声が聞こえたと聞いて、倉庫の中に入ったんだ。
そのあと……?
布で口と鼻を塞がれて
「気を失っていた?」
何があったのか思い出してきた。腕を動かしてみると少し痺れたような感じだったけど、なんともなさそうだ。
手をついて上半身を起こしてみた。
「いた……」
体のあちこちが少し痛い。
「あのね。お兄ちゃんね、運んできたおじさんにポイッて床に投げられたの。痛かったでしょ?」
7才位の女の子が教えてくれて、肩をなでなでしてくれた。
「ありがとう。優しいね」
僕がお礼を言うと真っ赤になって照れていた。
僕は気を取り直し、顔を上げて今いる所を観察した。
配達の人に聞いた、地下だと思う。
広い部屋の奥側に小さめのベッドが10台。壁が三方にあって奥側に扉があるけど、トイレへの扉みたいだ。隣に部屋もありそう。
ここに来るための登り降りする階段があって、僕達と階段の間に、天井から床まで鉄の棒が並んでいた。逃げられないための檻だ。
思ったより清潔で、子供達を見ると具合が悪い子供はいない感じだ。食事も与えられているみたいで安心した。
「怪我している子はいない? ご飯はもらえている?」
僕が子供達に聞くと「怪我をした子は、いないよ。ご飯も3回食べてる」と返事をしてくれた。
壁際に何人か、固まっている子達がいたのでそっちに目を向けた。
膝を抱えて下を向いていた。
「あの子達、獣人の子だよ」
「ミル君!」
教えてくれたのは、商店街の皆が探していたミル君だった。
「ルカ兄ちゃん! ぼく……捕まっちゃったの……」
涙目で僕に言った。
「皆、心配して探していたんだ。他の皆も、騎士団の人達や皆が探して、きっと助けてくれるから大丈夫だ」
わぁ! と子供達は明るい笑顔になった。
「僕達はきっと助けてもらえない……」
小さな声で、獣人の子がつぶやいたのが聞こえた。
「……人間は僕達獣人を怖がって避ける」
クスンと泣き出した獣人の子がいる。
「だめだよ! きっと助けてくれるから、泣いちゃだめだよ」
「そうだよ」
「泣かないで」
皆が獣人の子達をなぐさめる。一人の女の子が、獣人の子達に近寄って頭を撫でた。
「そうだよ。皆、泣いちゃ駄目だ。いざ逃げる時、勇気を出して逃げなきゃ。僕が守るから」
「お兄ちゃん!」
「お兄ちゃん……」
子供達が僕に抱きついてきた。今まで怖かったのだろう。
「皆、今までよく頑張ったね」
よしよしと順番に頭を撫でた。
「僕達、獣人が怖くないの?」
恐る恐る獣人の子が聞いてきた。この子はリスの獣人の子だ。しっぽで分かった。
「怖くないよ。ね、みんなもそうだよね?」
僕は他の子供達に聞いた。
「怖くないよ。いきなり叩かないよね?」
ミル君が獣人の子に話しかけた。人間の子達はジッと獣人の子達の返事を待った。
「ぼくたちはそんなこと、しない。そんなことをするのはわるいひと」
一番小さな獣人の子が言った。
「だよな――」
「そうよね」
人間の子達は笑って話した。獣人の子達も安心したのか笑い合っていた。
「ところで、みんなのお世話は誰がしてたの?」
疑問だったことを聞いた。
「女の人。逃がしたり、逃げたりしたら家族がどうなるか知らないぞって言われてた」
なるほど……脅されていたのか。その人には頼れないな。
……魔法を使うか。でも子供達に見られたくない。様子をみて、子供達が安全に逃げられるようにしなければならない。
アラン様。僕が一人で行動したのが、いけませんでした。迷惑かけてしまったかな……。
「お兄ちゃん?」
いけない。子供達の前で弱気になっちゃ駄目だ。
「きっと探しにきてくれるからね? まだ大人しくしてようね」
「「「うん!」」」
みんな良い子だ。
皆の気をそらす事が出来たら魔法を使おう。騎士団の騎士様達が助けに来てくれる。きっとアラン様も。
「誰だ、貴様は!」
急に怒鳴り声が聞こえてきた。この倉庫の壁や床は薄くて、声が丸聞こえらしい。争う声が聞こえてくる。
だから僕と話した配達の人が、子供達の声が聞こえたと言ってたのか!
「何……?」
「怖いよぉ……」
子供達は争う声に怯えてる。
「もしかしたら助けに来てくれたかもしれない」
「え!」
僕がそう言うと、子供達はみんな階段の方に顔を向けて見ていた。
今だ! 子供達が一斉に階段を見ている。
ドカ――――ン!
「えっ!? なに!」
「きゃあ!」
僕は後ろの壁を、魔法で壊した!
壁が壊れて土ごと吹き飛んだ。
爆風で破片が飛んだが、皆をローブで守った。
薄い壁で良かった。土煙も凄い。
壊れた壁の向こうに、空が見えた。壁ごと地面をえぐって、地上まで貫通させた。
「みんな! 逃げるよ! 走って!」
僕は子供達に声をかけて、逃げるように促した。
「空が見える! いこう」
子供達は皆、えぐれた地面を登って地上に出れた。
「よいしょ! がんばれ――!」
ミル君が小さい子を助けて登っていった。
全員、脱出できるように僕は一番最後に残った。
バンッ! バンッ! バンッ!
ついでに魔法で檻の、鉄の棒も壊しておいた。
子供達は頑張って登って逃げた。僕が最後に地下から逃げ出す時に、大勢の人がこちらに向かって呼びかけるのが聞こえた。
「いたぞ――!」
「騎士団のお兄ちゃん達だーー!」
騎士団の!? ああ、良かった!
僕も地下から逃げようとした。
グイッと体が後ろに引かれた。
「よくも……! 金になる子供達を逃がしやがって!」
「ああっ!? ぐっ……!」
後ろから首を掴まれた。力強く腕で首を締めている。僕は引きずられて部屋に戻されてしまった。
苦しみながら耳を澄ますと、聞こえてきた。子供達は騎士団の人達に助けられているようだった。良かった……。
「ぐっ……!」
後ろ向きにズルズルと体を引きずられて、部屋に戻された。
顔だけを後ろに無理やり動かすと、僕を引きずっていたのは以前騒いだ男達を雇った、貴族風の男だった。
ギリギリと首が締まっていく。苦しい……。
このままでは、……。男は離そうとはしない。
……アラン、さま。
「ルカ!」
アラン様の声が聞こえた、気がした。
508
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
【完結】悪役令息⁈異世界転生?したらいきなり婚約破棄されました。あれこれあったけど、こんな俺が元騎士団団長に執着&溺愛されるお話
さつき
BL
気づいたら誰かが俺に?怒っていた。
よくわからないからボーっとしていたら、何だかさらに怒鳴っていた。
「……。」
わけわからないので、とりあえず頭を下げその場を立ち去ったんだけど……。
前世、うっすら覚えてるけど名前もうろ覚え。
性別は、たぶん男で30代の看護師?だったはず。
こんな自分が、元第三騎士団団長に愛されるお話。
身長差、年齢差CP。
*ネーミングセンスはありません。
ネーミングセンスがないなりに、友人から名前の使用許可を頂いたり、某キングスゴニョゴニョのチャット友達が考案して頂いたかっこいい名前や、作者がお腹空いた時に飲んだり食べた物したものからキャラ名にしてます。
異世界に行ったら何がしたい?との作者の質問に答えて頂いた皆様のアイデアを元に、深夜テンションでかき上げた物語です。
ゆるゆる設定です。生温かい目か、甘々の目?で見ていただけるとうれしいです。
色々見逃して下さいm(_ _)m
(2025/04/18)
短編から長期に切り替えました。
皆様 本当にありがとうございます❤️深謝❤️
2025/5/10 第一弾完結
不定期更新
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる