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3章 二人の過去と今と未来へ
25.子供と間違えられていたルカ 〜ルカ視点〜
しおりを挟む~ルカ視点~
倉庫地下で壁をぶち抜いた後、子供達を外へ出せたので良かった。そのあと子供達は無事に親御さん達に引き取られたと聞いてホッとした。
僕は前に目撃した貴族風の男に首を締められて苦しかったが、アラン様に助けてもらえた。
アラン様が来てくれなかったら危なかった。
でも……。◯◯◯◯と出会うなんて。
魔法をかけられて言えなくなった。
言おうとすれば、体中に激痛が走った。
何をしようとしてるの? 僕は怖くなった。
アラン様に連れられてお屋敷にお邪魔した。
そして医師様に診てもらった。邪魔かなと思ったけどフードは取らなかった。
首を指で触れて診て、ローブの前側と上着の前だけ開けて聴診器で診察してもらった。
「栄養不足気味」と言われてしまった。
アラン様がこのお屋敷でしばらく住まないか? とおっしゃってくれた。
普段ならお断りする所だけど、今回は安全面でお願いしてしまった。
医師様が帰ってから、アラン様は心配そうに僕の側に来てくれた。
「心配することはない。この屋敷でゆっくり安静にしてくれ」
「ありがとう、御座います」
優しくて涙がこぼれそうになった。
トントンと部屋のドアが叩かれて「失礼します」とネネさんが入ってきた。
「お風呂の用意ができました。ルカ様、ゆっくりご養生してくださいね」
ネネさんが心配そうに話しかけてくれた。
「ありがとう御座います」
「汚れただろうから、お湯に入りなさい」
アラン様は、僕にお湯に入りなさいと言ったけど。
「洗ってやろう」
洗ってやろう? ん?
「湯は、隣にある。痛いだろうし、子供が遠慮するのではないぞ」
アラン様は僕に『子供が』と言った気がする。
「さあ。お湯に入って着替えてから食事にしよう」
背中を手のひらで優しく押して隣の部屋に促す。
「え。お風呂」
僕は戸惑ってアラン様を見上げた。
「あの……。僕は子供じゃないです」
まさかと思っていたけど、子供と間違われていた?
アラン様はピタリと歩きをとめた。
「子供、じゃない……と?」
「僕はもう18歳で、この国では成人済です」
え? いくつに見られていたのかな。
「せ、成人済……? ルカが?」
「はい」
僕は動きのとまったアラン様を待っていた。
「アラン様?」
しばらくアラン様から返事がないので、お部屋全体を見てみた。
この案内されたお部屋は豪華で、でも派手ではなく薄い緑色の壁紙に、木のおそろいの家具で統一感がある爽やかなインテリアだ。あちこちに植物が置かれており、落ち着くお部屋だなと思った。
「……すまない。大丈夫なら一人で湯に入ったほうがいいな」
やっとアラン様が話しかけてくれた。顔を手のひらで覆っていた。
「具合でも悪く?」
「大丈夫だ。……風呂の使い方が分からなければ、隣にネネが控えているから何でも聞いてくれ」
チラと僕を見て、アラン様は言った。
「はい。では、お風呂を使わせていただきますね」
隣の部屋のドアを開けて中に入り、ドアを閉めた。
「わあ」
白いタイル貼りの壁に、猫脚のバスタブがあった。
僕の家のバスタブは、こんなに大きくはないので嬉しかった。
ドカッ、バタン!
「え?」
アラン様がいる部屋から物音が聞こえた。大丈夫かな。
僕はローブや上着その他を脱いで、服を畳んだ。
……やはり服が汚れている。
猫脚のバスタブに入って泡を立てて体を洗う。
高級品の石けんだ。香りがいい。
さっきは入院、と言われて困った。
入院して医師に全身診てもらったら、この半獣人の僕の耳としっぽがバレてしまうだろう。
気の緩みで出してしまうから、気をつけて過ごさないといけない。
僕は半獣人。獣の姿になれない半端者。隠して生きていかなければ、どちらにもなれない。
全身を洗って流した。体が温まってホッとした。
大きなバスタオルで体を拭いて着替えようとしたら、真新しい着心地が良さそうなシャツとズボン、その他着替えがキチンと畳んで置いてあった。
「これ……僕が着て良いのかな?」
バスタオルを頭から被って、それを手に取った。
広げてみると、アラン様用にしては小さくてきっと着れない大きさだった。
悩んでいたら、トントンとドアがノックされた。
「は、はい!」
まだ服を着ていないので、前側のバスタオルの端を両手で引き寄せた。
「着替えを置いてますので、宜しければそちらに着替えて下さいね」
ネネさんがドア越しに伝えてくれた。
「ありがとう御座います」
僕はお礼を言い、用意してくれた服に着替えた。とても着心地が良い。これは高級品なのでは……?
僕が着て良いのかな……? と思いつつ生地の優しい肌触りに、シャツの袖を持って頬でスリスリしてしまった。
「もう風呂から出たか?」
急に、アラン様にドアの向こうから呼びかけられたので驚いた。
「あ! ハイ。今そちらに行きます」
バスタオルを頭から被って、ドアを開けた。
「気持ち良かったです。ありがとう御座います、アラン様」
僕はアラン様を見上げながらお礼を言い、頭を下げた。
「いや、礼はいい。……ローブは脱いだのだな」
アラン様がちょっと戸惑って話しかけた。そういえば他の人にローブを脱いで、シャツとズボン姿を見せたのは孤児院の皆と親方だけだったな。
「……変でしょうか?」
やっぱり高級品は僕に不相応だろうか?
「そんなことはない! 良く似合っている」
アラン様が何だか、照れながら褒めてくれたので嬉しくなった。
「まだ髪の毛が濡れている。ソファに座りなさい。拭いてやる」
アラン様が手招きして僕を呼んだ。
そういえば、いつも家で髪を洗ったままと同じに出て来てしまった。寝る前に、魔法で乾かしてたんだけれど……。
アラン様はソファに座って、隣の場所をトントンと叩いた。
僕はためらいながら、アラン様の横に座った。
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